この女、彼女にして最も強敵
次の瞬間には、大きな丸い机のある会議室に現れ
「もしも〜し、起きてくださ〜い」
「あ、ああ? 一体誰……」
● はぁ? そんなセリフはないはずさね。
● しかも、会議室からの声じゃない……ありえないイレギュラーさね?
● 一体どこから?
「起きなさいよ、もしも〜し。太一く〜ん?」
「え? あ、あなた誰ですか?」
「初めまして、私はマナって言います」
● あの女め、太一のところさねか。今すぐ行ってやるからな、待ってろさね。
● シーン移動さね。
『オペレーション不可能。この操作はできません』
● わっつ?
今の声は僕が仕事で雇っているAIの声だ。名前の割には融通が来ないし、たまにこうやって僕の邪魔立てをしてくる。
● ソーセキ! 何言っているさね!? 一体なんで? 太一の部屋に行くだけさね!
『この操作はできません、不可能です!』
● そんなわけあるか!
「太一くん? 君はなんでこんなところで寝ているのかな?」
「それが、急に部屋が揺れて、頭の上から荷物が降ってきて、ぶつかったんです頭に」
「痛かってでしょ〜、うふふ。でも安心して、私が来たからには痛いの痛いの飛んでいけ〜」
● あのアホ、何たぶらかしとるんさね。
● 仕方ない、手動でシーン移動さね。
『その操作は不可能です』
● こらああああ! バンバンバン!
『叩かないでください』
「へ〜、キシヨくんて友達がいるんだ〜」
「ああ、もう死んじゃったんですけどね」
「え? 多分生きてるわよその子?」
「どういうことですか?」
● いい加減にしろよ、太一は詠嘆のエクレツェアを継ぐ男だ!
● そんないらん情報を流すんじゃない!
「太一くんさ〜、語り部に騙されてるんじゃない?」
「語り部?」
「あれ、知らないの? たまに耳に聞こえているあの声の主のことよ」
● さっさと移動しろさね、このバカ!
『操作は不可能です!』
● 描写くらいさせろさね!
「キシヨくんは生きてるんだよ」
「それは本当ですか!?」
「だってここはなんでもありのエクレツェアだよ? もし疑うなら君を騙している張本人に来てみればいいじゃない」
「張本人って一体誰のことを……?」
「決まってるでしょ、詠嘆のエクレツェアよ。君をキシヨくんと入れ替えていたのも、そうれをそのまま思い込ませていたのも、全部詠嘆のエクレツェアのやったことでしょう? それはつまり、黒幕ってことよ」
チーン。はい、言っちまったさね〜。キシヨくんは俺ですからねさね、そりゃ生きてるさねよ、当たり前さねさねさね。
だからってバラす必要ないさねよ!!
そんなこと言ったらどうなるか。
「おれ、ちょっとよしきに聞いてきます!」
「いってらっしゃ〜い」
ほらそうなった。もうし〜らない。




