第4章 バル・グレンシア
壁がノックされる。空いているドアから見えるのは、あまりにも屈強な背のでかい男。
胴回りだけで酒樽より大きい。
白い髪の毛。ほぼ半裸の姿で腰巻と、首と右肩、右肘、両膝のところに白くて太い四角いオブジェをはめている男が、部屋の中にずかずかと入ってくる。
筋骨隆々な彼のウェイトは軽く200キロを超えそうだ。
後ろに続いてトーやがウェディング姿のマリを連れて入ってくる。
白けていたリスグランツはにんまりと笑い、
「やっときたかあぁ、我が花嫁ぇ」
マリは口にタオルを噛まれ首を振っている。
リスグランツはにやけ顏で、
「何か言いたげだなぁあ。聞く耳は持たんが言えるもんなら言ってみろぉ」
「離せぇ!」
マリは大きく叫ぶと、見た目にそぐわないほど機敏な蹴りをリスグランツに叩き込んだ。
「ぐは! 不意に鳩尾……しかも乱暴なぁ。聞いてた話ではおしとやかだったはずだがあ……」
トーやが苦笑いする。その時、彼の頬についていた石膏が微妙にひび割れた。
「道中で、『おしとやかは世を偲ぶ仮の姿じゃー!』とか運命めいて豹変しました」
「なんじゃそれはぁ……それより、情報は漏れていないなあ?」
「運命的に漏れてませんよ。なにせ僕の周りは盗聴や探知ができないようになってますから」
それを聞きながらも、腹を蹴られたリスグランツは飲んでいた酒が口に戻ってきそうになっていた。だが、そんな彼の態度が気にくわないものがいたようで、
「ハハハハハ! おいおい、そんな事より俺様に挨拶をしろよ」
隣の巨大な男がそう言って見せた。
「グレンシア帝国第一部隊提督、『バル・グレンシア』が来たのだから当たり前の事よ」
リスグランツは慌てて礼を取り戻す。
「すまん。バル・グレンシア殿ぉお。今回の計画、貴方なしには成り立たなかったでしょう。『障壁』を破壊できる技術をお持ちの貴方さまに話を持ちかけたのは正解だったぁ」
バルはものすごく誇らしそうな顔をして、
「ハハハハハ! またいつでも力になってやる」
その時声が聞こえた。
「お前なんで標準語なん? 何も隠す事あらへんがなぁ〜。関西人を誇らなあかんてぇ〜」
すると、奇妙な踊りをしながら細身で白髪の男が入ってきた。
古代ギリシャ風の姿の彼は、何かの音楽を口ずさんでいる。
「はは……はははは! 隠してなどいない! ……ジル、もう酒飲んでるんか?」
「いいや、まだシラフでっせ〜」
リスグランツは慌ててその踊りを止めようとする。
「ジル殿ぉお! ここは城の参謀エリアぁ。敵の侵入に備え、不審な動きの人間を撃退する忍者の罠が張り巡らされているぅ!」
ジルはそれでも踊りながら、
「何言うてますのん! シャンパンはお水と同じでっせ〜」
その時、ジルの足元の床がパカリと開いた
「あああああ!」
「ハハハハ! やっぱり飲んでた」
数秒後、穴からズシィンと音がして青く光る。
その数秒後ジルはぶっとい針が刺さった状態で、先ほどのドアからまた入
ってきた。
「あー、罠の針刺さってちょっと酔いさめたわ。反省反省、って、ぶがぁあ!」
瞬間、天井から巨大なハンマーが振り子の要領でジルを吹き飛ばした。
壁をぶち抜き飛んでいく。
リスグランツはもう知らんと「一度標的にされたら解除されるまでまたねばらならん」
バルは気を取り直して、
「ハハハハハ! ところで、お前の言っていることは本当だろうな。この世界を我らグレンシアに帰属するということは?」
凄まじい圧力を感じた。いかついリスグランツも息を飲む。
「——ああ、安心してくれぇ。この花嫁がいれば、あいつら全員の裏をかけるさぁあ」
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