野党を一つに
代表質問を終えた翌日。
シュタール労働者党本部。
ベレは机いっぱいに積まれた法案へ目を通していた。
「次は恐慌対策法案を……」
「その次は技術者保護法を……」
ぶつぶつと呟きながら資料へ赤字を書き込む。
その様子を見ていたヘルムが、ふと口を開いた。
「ベレ。お前、一つ抜けてる所がないか?」
突然の一言に、ベレは顔を上げた。
「え?抜けている所?」
ヘルムは椅子へ深く腰掛ける。
「お前さんの党は、何になった?」
「野党第一党です」
「そうだ。じゃあ、第二党と第三党とは話したのか?」
ベレは固まった。
「……あ」
ヘルムは苦笑する。
「やっぱりか。法案ばかり見て、一番大事なことを忘れてやがる」
ルマルも資料を見ながら頷く。
「確かに……私達だけでは百一議席です。でも第二、第三野党と協力できれば……」
ベレは急いで議席表を広げた。
シュタール労働者党。百一議席。
第二野党。三十八議席。
第三野党。二十九議席。
さらに小政党を合わせると――。
「過半数……」
思わず声が漏れる。
「野党だけで過半数を超える……」
ヘルムはニヤリと笑った。
「やっと気付いたか?お前さんは政策を作るのは天才だ。だが、政治は一人じゃできねぇ」
「仲間を増やせ」
ベレは頭を抱えた。
「うぅ……完全に見落としてた……」
ヘルムは笑いながら言う。
「肝心な所が抜けてるな?また『ちびっ子』って呼ぶぞ?」
ベレは頬を膨らませた。
「もう!それはやめてください!」
部屋中に笑いが広がる。
しかし次の瞬間、ベレは立ち上がった。
「確かに、その通りです。法案を通したいなら、仲間が必要」
「直ちに第二、第三野党へ話し合いに行ってきます!」
ラインが驚く。
「今からですか?」
「もちろん!」
ベレはコートを羽織る。
「国を立て直すのに、待っている時間はありません」
ヘルムは帽子を深くかぶり直し、小さく笑った。
「その行動力だけは相変わらずだな」
ルマルも微笑む。
「今度は野党をまとめる仕事ですね」
ベレは力強く頷いた。
「与党か野党かじゃない。共和国を立て直したい人なら、一緒に進みたい」
そう言って党本部を飛び出していく。
その背中を見送りながら、ヘルムは静かに呟いた。
「さて。ここからが、本当の政治ってやつだ」
シュタール労働者党は、百一議席を得て終わりではなかった。
共和国を変えるための、新たな仲間づくりが始まろうとしていた。




