初めての味方
委員会を終え、私は資料を抱えて廊下を歩いていた。
「ヴィーダーベレ議員」
後ろから声を掛けられる。
振り返ると、先日委員会で顔を合わせた与党のベテラン議員だった。
「少し、お時間よろしいかな」
「はい」
近くの応接室へ入り、向かい合って座る。
議員は穏やかに笑った。
「君の質問は面白い」
私は少し照れながら答える。
「ありがとうございます」
議員は続ける。
「実際の数字を見て、現場を歩き、自分の目で確かめる。議員として、きちんと仕事をしている」
私は首を傾げた。
「……他の方も、そうではないのですか?」
議員は思わず苦笑した。
「ふっ。若いな」
私はきょとんとする。
「先輩風を吹かせるつもりはない。だが、一つだけ忠告しておこう」
議員は真剣な表情になった。
「君は、いい意味でも現場と数字を見過ぎている」
私は黙って耳を傾ける。
「もちろん、それは議員として大切なことだ。だが、それだけでは政治はできない」
議員は廊下の方へ視線を向けた。
「周りもよく見た方がいい」
「周り……ですか?」
「ああ。この議事堂には、肩書きだけが欲しい者もいる。裏で金を受け取る者もいる。そして、そういう連中へ群がる蠅のような者達もいる」
私は静かに息を飲んだ。
議員は苦笑する。
「夢を壊したかな」
私はゆっくり首を横へ振る。
「いいえ。知らなければならないことだと思います」
議員は満足そうに頷いた。
「その返事なら安心だ。現場を見る目は、そのままでいい。だが、人を見る目も養いなさい。政治は数字だけでも、理想だけでも動かない。人で動く」
部屋に静かな時間が流れる。
やがて議員は立ち上がった。
「私の言いたいことは、それだけだ」
扉へ向かいながら振り返る。
「私でも何かできることがあれば、相談に乗るよ」
私は深く頭を下げた。
「ありがとうございます」
議員は軽く手を振り、そのまま部屋を出て行った。
一人になった私は、窓の外を見つめる。
数字。現場。
そして、人。どれが欠けても政治はできない。
そこへ、ルマルが部屋へ入ってきた。
「何かありましたか?」
私は少し笑った。
「また一つ、勉強になりました」
ルマルも微笑む。
「政治は奥が深いでしょう?」
私は静かに頷く。
「ええ。共和国を知るだけでは足りない。議会も、人も、もっと知らなくちゃいけませんね」
議事堂の廊下では、多くの議員たちが行き交っている。
味方か。敵か。
それとも、まだ分からない相手か。
ベレは、政治家として新たな一歩を踏み出そうとしていた。




