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第八十八話 あり得ない異動

今週もよろしくお願いします。

 外に出た俺は急いで携帯電話を取り出し、達樹に電話を入れて『問題が起きた。緊急事態だ』と告げた。


達樹から『事務所で待っている』と返事を貰った俺は、その場に立ち止まって通り掛るタクシーを待っていられないほどに気がはやり、達雄先生が所長を務めている森山法律事務所へ向かって駆け出しながら通り掛るタクシーを捜した。




見つけたタクシーに手を振り、タクシーがスピードを落として車道の端に寄って来るのを見ながら

“そういえば、以前にも似たようなことがあったな”

と頭の隅をぎった出来事を思い返していた。




 毎月二十日は、プロジェクトチームの定例会議の日と定められていた。


十一月二十日もいつも通りにプロジェクトチームのメンバーが招集され、会議室を使い定例会議が開かれた。


会議はとどこおりなく進み、最後に今後の課題となるものについて次回の定例会議までに、プロジェクトチームのメンバー一人ひとりがそれぞれの立場で対応策を考えてくるということで締めくくられた。




その直後、樫山専務が発言をした。


「今までも感じていたことだが、今日の会議でより顕著になった。どうやら、営業部の新井君は経験が乏しいようだ。その穴を埋めるために、新井君には準備が整い次第、庶務課へ異動してもらうこととする」




一瞬、俺は『庶務課』という言葉の意味するところが分からなくなった。


その後、すぐにその意味は思い出したものの、今度はなぜ異動先が庶務課なのか理解できずに頭の中が混乱した。




 俺は入社後、本社の営業部に配属されて以来、ずっとそこに籍を置き他の部署に異動したことは一度もなかった。


しかし、美咲とのことで樫山専務と反目し続けている以上、どこかの支社に飛ばされるかも知れないと覚悟はしていた。だが、その場合でも営業職として行くものと思っていた。


それが、本社内とはいえ営業の仕事とは畑違いの庶務課と言われ、そこで何をすればいいのかまるで見当もつかなかった。




「それは、難しいのではないでしょうか。新井は先ごろ、社長賞も取っていますし、営業部の方で離さないのではないでしょうか」


渉外部からプロジェクトチームのメンバーとして選ばれ、今ではアドバイザーの一人となっている浜中さんが俺をかばうような発言をした。




 四葉環境株式会社では、営業部が契約を取ってきた後を渉外部が引き継ぎ、契約に関する細部について相手方と交渉し契約違反があった場合の取り決めなどを詰め、本契約に至るという仕組みを採用していたため営業部と渉外部は密接な関係にあった。




「私も、そう思います。社長賞は意味のあるものですし、それを取った者を他部署に異動させるのは、無理があるのではないでしょうか」


浜中さんに追随ついずいするように、アドバイザーの立場にある市場調査部の木下きのしたさんが続けて発言した。




 市場調査部はその名の通り市場の調査をする部署で、営業の仕事をするにあたり市場調査部から上がって来た情報は必要不可欠なもので、逆に、営業先の情報は市場調査部でも重要視していることから、営業部と市場調査部は持ちつ持たれつの関係にあった。




 また、社長賞は全社員を対象に会社に大きく貢献した者に与えられる賞で、俺は佐伯課長と組んで当たった九州地方の取引先との契約が当初の予定よりも規模の大きなものになったことが認められ、佐伯課長と一緒に表彰されていた。


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