第十四話 価値観
「お互いに相手を引き立てているというのは、珍しい組み合わせだな。狙ってる連中も、多そうだ」
俺が梨奈に目を奪われていると、達樹が話し掛けてきた。
達樹の言葉に改めて梨奈と一緒にいた真衣さんと梨奈を見比べてみると、真衣さんは咲き誇る大輪の花を思わせ、梨奈はしんしんと降り積もる雪の中、凛として花を咲かせる寒椿のような美しさがあった。
「競争率は、高そうだぞ」
「協力してくれ」
達樹が、クリスマスパーティに参加している男性陣に視線を走らせ状況を伝えてきた。
その時には、もはや俺の心の大半は梨奈で占められ、梨奈が俺の隣にいない未来など想像したくもなく、俺は自分の思いを成就させるため達樹に協力を頼んだ。
「協力料は、安くないぞ」
「彼女は、お前の好みのタイプだろ」
ニヤリと笑って俺をからかってきた達樹に、軽く顎をしゃくり真衣さんを指して応えると、達樹はまんざらでもないように笑みを深めた。
前もって達樹と二人で打ち合わせをし、早々に梨奈と同じテーブルに着くことができた俺は、梨奈と一緒に過ごす時間を重ねるほどに梨奈への思いが深まっていった。
梨奈は、その外見とは異なり柔らかな笑みを浮かべて俺の話を聞き、穏やかな口調で返してきた。その時その場に相応しいと思える、的確な受け答えをする梨奈との会話は俺の心を弾ませた。
だが、肝心な俺と梨奈の心の距離はなかなか縮まらず、俺は表面上、平静さを装いながらも内心では焦っていた。
突き刺すような男たちの視線を気付かない振りで無視をし、纏わり付くような女性たちの視線にイラつきながらも忍耐強く接し、梨奈が連絡先を書いた紙ナプキンを差し出してきた時には心底ホッとした。
紙ナプキンを持つ梨奈の両手が愛おしく思え、包み込むようにしてそれを受け取った。
美咲は梨奈のことを『何の価値もない女』と平然と言い放つ。そんな美咲自身には、どれだけの価値があると思っているのだろう。
今日から当分の間、梨奈が待つマンションに帰れなくなることは、予め決められていたことだった。
頭の中に、今朝、出掛ける俺を見送ってくれた梨奈の姿が浮かんだ。
不安げな様子で瞳を揺らしていた梨奈を思い出し、今すぐ抱き締めたくなった。
しかし、どうしようもできない現実に、俺は俺の頬を撫でていた美咲の手を掴み力を込めて引き剥がした。




