第十五話 無断外泊
この回より、梨奈の視点になります。
「一、二、三、四、五、六……」
リビングに置いてあるソファに座り、正面の壁に備え付けられている飾り棚に置かれた卓上カレンダーの数字を目で辿って、声に出して日にちを数えてみる。
今日は十二月十五日。
出勤する尚哉を見送った八日の朝から一週間が過ぎた。尚哉は出掛けたきり、一度も帰って来ていなかった。
八日の夜、私たちが一緒に暮らすようになってから、尚哉は初めて無断外泊をした。
次の日の朝になって尚哉が帰っていないことに気が付いた私は、仕事で何か突発的な問題でも起こり、連絡もできないくらいにてんてこ舞いしているのかもしれないと思った。
“尚哉なら、きっと、落ち着いたらすぐに連絡を入れてくれるはず……”
と信じて疑わず、その日の夜まで待った。
でも、尚哉からの連絡はなかった。
不安がすぐそこまで忍び寄っていた。
それでも、悪い方へは考えたくなくて自分を励ますように
“明日の朝、尚哉に会ったら、一言、文句を言わなくちゃ……”
と心に決めて、ベッドに入った。
けれど、翌日の朝になっても尚哉には会えなかった。
何故、帰って来られないのか事情だけでも知りたくて、尚哉に電話しようとベッドの脇のサイドテーブルに置いてあった携帯電話に手を伸ばした時、マンションの外を走る救急車のサイレンの音が聞こえてきた。
ふと、尚哉はどこかで倒れて意識がないまま、病院のベッドの上で眠っているのかもしれないと思い付いた。
もしも、本当にそんな状態になっているのなら意識を取り戻した尚哉か、あるいは、達樹さんからでも連絡がない限り、どこの病院にいるのかも分からない私には連絡の取りようがないことに気が付いた。
携帯電話に伸ばした手を横にずらし、そこに飾ってあったフォトフレームを取り上げた。
「……尚哉……。無事でいて……」
フォトフレームの中には、尚哉と出会ったクリスマスパーティの次の日に、二人で出掛けたテーマパークで尚哉と一緒に撮った写真を入れてあった。
クリスマスパーティがお開きとなった後、明日も仕事があるから帰ると言った真衣に合わせて私も二次会へは行かず家に帰った。
大学に入った時から一人で住んでいたアパートに帰り着き、一息入れたところに少し前に分かれたばかりの尚哉から電話が入った。
「明日、クリスマスのイベントをしているテーマパークへ一緒に行かないか」
思いも寄らなかった尚哉の積極的な行動に私の思考は深く考えることを拒否し、『クリスマスのイベントが行われているテーマパーク』の言葉に惹かれて、『行きます』と応えていた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
次回の投稿日は、27日(月)になります。
また、少し間が開きますが、待っていてもらえればと思います。
よろしくお願いします。




