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侯爵令嬢は幸せになります

本日3話目。こちらで完結です。




「カロリーヌ、おめでとう。とっても幸せそうだね」


「…え!?あ、ありがとう。そ、そうね……えっと…」



彼女は学院時代の大切な友人。

色々あって卒業してから今日まで会うことはなかったけれど、こうして私たちの結婚パーティーに来てくれたことが何より嬉しい。


けれど魔術学院を卒業して以来、久しぶりに会う友人からの言葉に素直に喜べない私。

なぜなら先ほどから学院時代の友人に会うたびに、当時はあれだけ喧嘩していたのにどうして、などと聞かれるのだが、決まってクロヴィスは必要以上に仲睦まじい様子を見せつけようとするのだ。



「幸せ、だろ?奥さん」


「…………!!!」



彼が急に私の腰を抱き寄せたかと思ったら、こめかみに口づけてきた。

友人の前でなんてことをしてくれるの。恥ずかしさで顔が真っ赤になっているであろう私をよそに、クロヴィスは楽しそうにクツクツと笑う。

目の前の友人である、リディも呆気にとられているじゃない。



「ちょ、ちょっと…!!」



必死で彼の胸を押して離れようとするが、こうなったときのクロヴィスはどうあっても動かないことを学んだので無駄な抵抗だとわかってはいるけれど。



「クロヴィスの魔力も幸せ~って感じでカロリーヌと同じだね」



リディがにこにこと笑いながらそう言うと、私を抱き寄せているクロヴィスの動きが止まった。



「あはは!リディの魔力感知能力を忘れてたね」



もう一人の幼馴染みであるアルフレッドが楽しそうにやって来た。

そうなのだ。友人のリディは魔力を感知する力がとても強く、その人の感情を魔力で読み取ってしまう。

その割に、自分に向けられる感情には鈍くてぽんこつなのだけれど。



顔を上げて彼を見ると、クロヴィスは頬を赤くしながらアルフレッドを睨みつけている。

いくらみんなの前でクールにきめててもリディに言われたら隠しようがないわね、と思わず笑みが浮かんでしまう。



ふと見ると、目の前のアルフレッドとリディがいちゃいちゃし出したので、同じく傍にいた学院時代の友人アネットとジャンと共に四人はその場を離れることにした。




「キャロお姉さま!」



花束を持って向かってくる彼は、少し前まで私を「カロお姉ちゃん」と呼んでいたのに今では幼いながらも立派に貴族の振る舞いを身につけている。



「セド!!」



彼は立派な貴族子息だから口に出しては言えないけれど、成長してもクロヴィスの小さい頃にそっくりでとにかく可愛くて仕方がないのだ。



彼は私の前に立つと、スッと姿勢を正して花束を差し出した。


「キャロお姉さま、本日はおめでとうございます。そして、レスタンクール家の一員として迎えられることを嬉しく思います」



可愛い!可愛すぎる!!



「ありがとう!」



ダメだ、我慢できなかった。

花束を受け取り彼をギュッと抱きしめる。そうそう、この襟足の匂いがまた良いのよね。

そしてまた背が伸びたのかしら。あぁ、子どもの成長は早いわ。



「……おい」



不機嫌な声が落ちてきた。いけない、またセドリックを堪能しすぎてしまった。

結婚が具体的に決まってからというもの、レスタンクール家へ訪問することが多くなった。相変わらず忙しいクロヴィスなので、彼は家に居ることが少ない。


そのため、ついついクロヴィスにそっくりなセドリックを愛でてしまうのは仕方のないこと。

だけれどそれが気にくわないらしく、セドをあまり構いすぎるとクロヴィスの機嫌が急降下するので気を付けていたのに。



「こいつはオレのものだからな、セド。お前は自分の大切な人を見つけたら、その人を大事にするんだ」


「はい、お兄様!」



とは言え、兄を尊敬しているセドリックはキラキラと目を輝かせて素直に返事をする。

可愛いが過ぎるではないか。



その後も所長やレイラさん、エマにイヴァンさん、クロヴィスに紹介してもらった魔術医さんたちにお祝いの言葉をもらい、レスタンクール家の庭で開かれた結婚パーティーを無事終えることができた。



「とりあえずこれで無事終わったな」


「えぇ、本当にありがとう。クロヴィス」



今日の結婚パーティーは、結婚式に呼べなかった人たちを集めたものだった。

学院時代の友人のリディやアネットにジャンもそうだし、同僚のエマも貴族ではないため結婚式には呼べない。


ちょっと寂しいな、と私がこぼしてしまったのを聞いたクロヴィスが、彼女たちを呼ぶために開いてくれたのが今日の結婚パーティーだ。


忙しい仕事の合間を縫って、パーティーの内容を一緒に決めてくれた彼には感謝しかない。



「…でもやっぱり上司の方は来られなかったわね」


「あぁ…まぁ最後の最後まで厄介だったみたいだな」



そう言って遠くを見つめるクロヴィス。

確かに彼女は引っ掻き回すだけ引っ掻き回して、国に強制送還されたらしい。





―――――― 遠征から帰った翌日のこと。

事のあらましをクロヴィスから聞いたのは、幼い頃の仕返しだと頬にキスをされてしばし撃沈していた私がやっとのことで持ち直し、モンタニエ家のゲストルームに行った時だった。




何でも隣国がこの国に新しい軍事力を高める魔術の情報を提供する代わりに、王女様を魔術医として研修させるため…というのは建前で、婚活をさせるために送り込んできたことから始まったらしい。



騎士団には魔力が強い者が少ないので、軍事力が強化される魔術があれば魔術師の負担も減り良いのではないかと騎士団の上層部は考えたらしい。


魔術医側もまぁ研修ならいいかとふたつ返事で受け入れたが、実際来てみた王女様がアレだったものだから今度は魔術医のお偉いさん方が頭を抱えてしまった。



「仕事はできない癖に身分を笠に着て我儘放題、やりたい放題で、あの頃の魔術医棟の空気は最悪だったな、マジで」



と吐き捨てるように語るクロヴィス。

そんな彼がとばっちりを受けたのは、ミラベル王女の「彼にするわ!」のひとことだったらしい。



その後、上層部はクロヴィス・レスタンクールをミラベル王女の婚約者にしろと言ってきた。クロヴィスの上司は、婚約者がいないだろう彼に話を持ってきたところ、実は婚約者がいると判明。


クロヴィスは絶対に嫌だと散々突っぱねたものの、隣国から提供される予定の魔術が実はちょっと怪しいという噂があるから、とりあえずちょっとの間だけ婚約者になるかも的な噂を流したままにして欲しいと頼み込まれてしまった。



「ふざけんなと思ったけど、キャロもオレが婚約者だってこと言いたくなさそうだったし、すごいお世話になってる人だったから断れなくてな…」



婚約者だと言いたくなかったわけではないということは、もう誤解されたくないのできちんと否定しておいた。



その後もまとわりついてくる王女様を振り払うことは難しく、さらには当直の勤務まで合わせてくる始末。


何かあっては本当に終わると思ったクロヴィスは極秘でミレイユ様に睡眠薬を調合してもらい、当直勤務の日は王女様のお茶に混ぜ込んでいたとか。

……バレたら戦争起きてたわね。



そんなこんなで調査を進めていくうちに、やっぱり軍事力強化の魔術なんてものはなく、ただ王女様の嫁ぎ先を見つけたいだけの話だったらしい。

そもそも最初から隣国には魔力を持っている人間が少ないので怪しかったのだ。うまいこと嫁がせてうちの国の魔術を利用させてもらえるようにしたかったようだとの調査報告を聞いた陛下の顔を見た宰相は、思わず震えあがったらしい。


温厚だと言われている陛下が一体どんな顔をしていたのか気になるところだ。




「誤解を解く機会はたくさんあったのに、何も言わなくて悪かった。言わなかったせいでキャロをたくさん傷つけてしまったこと、今になってやっとわかった」


「私も、勝手にあなたの気持ちを決めつけていたわ。戦っているつもりでも自分の本当の気持ちからは逃げてばかりいたの」



お互いの気持ちが通じ合ってから、クロヴィスはこうして言葉にしてくれることが増えた。

だから最初は恥ずかしかったけれど、私も素直な気持ちを伝えるようにしている。







そして今日、婚約パーティーを終えた私は正式にレスタンクール家に迎え入れられた。

ウェディングドレスを脱ぎ、簡単なワンピースに着替えて身体が軽くなった私はふと思いついた。




「ねぇ!久しぶりにあれやってみない?」


「…なんだ?」



そう言って私は両手を上げて彼に向ける。

それを見た彼は理解したようにあぁ、微笑んで私の両手に自分の両手を重ね合わせた。



手のひらから流れてくる彼の魔力。

魔術学院に通っている時、実技で色んな生徒たちと魔力を流し合った。

でも、幼い頃に一度だけ感じた彼の魔力が今までで一番心地よかった。あの時の感覚がずっと忘れられなかったのだ。

そしてやっぱりそれは変わっていなかったと嬉しさであふれる。




向き合う彼も私を見て嬉しそうに笑う。

そう、大好きな彼と一緒に、侯爵令嬢の私はこれからもっと幸せになる。





END







クロヴィス×カロリーヌ完結しました。途中、ちょっと更新止まってしまい申し訳ありませんでした。元ネタの「ポンコツ魔力~」もよろしかったらご覧ください(初めての作品なのでちょっと恥ずかしいですが…)

またこちらも番外編ちょこちょこ書きたいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] はじめまして 「恋愛モノ」として本作品を拝読させて頂きました 定番の「すれ違い」もあり、昼ドラのようなドロドロ系ではなく、お互いが純愛であるのに好感を感じました 魔術薬師、という少なくとも…
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