86 決意と覚悟
この男、ラグヴェルは決して諦めないだろう。
自分の理想の為に殉じた者、犠牲となった者。その想いと重さを背負っている。
それらを無意味にしない為、無駄にしない為、ラグヴェルが立ち止まるのは『成し遂げた時』か『潰えた時』のどちらかだろう。
「では、そろそろ返答を聞かせて貰おうか」
ラグヴェルの声が俺を現実に引き戻した。
「ヒロよ、我が下に来い。そして我が覇道を支える柱と成れ」
ラグヴェルの言葉と視線には微塵の揺らぎも無い。
それも良いかもしれない。
この男なら、本当に千年の楽園を作り上げるかもしれない。
どんな困難にも諦める事はないだろう。
邪魔な物を排除し、遮る物を破壊し、どんな難敵も打ち倒すだろう。
破壊と混乱により出来た荒廃した大地の上に見事な楽園を築くだろう。
俺は1つの決意を胸に、ただ一言返答する。
「断る」
「何?」
「断ると言った」
ラグヴェルの表情に失望が浮かぶ。
「お前の理想が間違っているとは思わない。貴族の専横。世襲による政治の腐敗。身分差による不平等な門戸。それを無くすというのだろ?素晴らしい事だよ」
「単なる夢物語だと?」
「いや、お前は成し遂げる。少なくとも諦める事だけはない」
そう、この男は成し遂げる。
破壊と混乱の上に。
「お前にはどんな犠牲を払らってでも困難も乗り越えるという決意と覚悟があるんだろう。
なら、何故安易な道を選んだ?困難でも、最良だと思える道を選ばなかった?」
武力による大陸の統一。それは今の世界を破壊するという事でもある。
破壊し更地にした上で新しい物を作る。
それは確実で手っ取り早い方法なのかもしれない。だが、多くの犠牲が出る。
悪くない部分、壊す必要の無い所まで破壊してしまう。
そして、壊されたくないと願う人の思いも。
目的地は1つでも、そこに至る為の方法は幾つも有る。
全てを破壊するのではなく、悪い部分、腐った部分だけを取り除き作り変えていく。そんな方法だって有る。
既得権益を守る為に根強い抵抗をする者達も居るだろう。
時間を掛け、根気強く変えていかなければならない。
その代り、犠牲は必要最小限に抑えられる。
それが最良と言って良いのかは分からない。
だが、多大な犠牲が出る方法が最良だとは思わない。
「それにどれだけの時間を掛ける?同じ理想を掲げた者が過去に幾人も居ただろう。膨大な時間を費やし理想の実現の為に日々戦った事だろう。だが理想は実現できたか?理想の世界は作れたか?
答えは、否だ。理由は、人の生が短いからだ。人に与えられた時間は有限だ。この俺でさえ時間は限られている」
「それで、ヴァンパイアか?」
「ほう?気付いていたか」
周囲を探る為に【索敵】を発動した際にラグヴェルがヴァンパイアだという事に気が付いた。
「王族なのだから生まれつきではないんだろ?」
「古い書物の中に秘術として記載されていた。更なる力を求めこの身をヴァンパイアと化した。だが、それでも時間が有限である事に変わりはない」
不死身と思われていたヴァンパイアも実際には寿命というものが有ったようだ。
「有限の時の中で理想を実現しようと思うのなら、悠長に構えてはいられん。そして、俺は最早立ち止まる事も出来ん」
ラグヴェルが立ち止まれないのは生来の頑固さか、それとも既に強いた犠牲の為にか。
「俺には、お前のように全てを背負う覚悟はない。理想の実現の為にどんな困難にも立ち向かう決意もない。もっと言ってしまえば見知らぬ者や、100年後の人間の為に苦労を背負い込む気も無い」
自分で言葉を発して改めてラグヴェルの覚悟の大きさを感じる。
俺には見知らぬものの為に身を粉にする事は出来ない。
「『全ての』なんてのは、俺には大き過ぎる。
俺は、俺が守りたい人達と守りたい場所を守れればそれで十分だ。
お前の覇道は、俺の守りたい人を殺すだろう。俺の守りたい場所を壊すだろう」
右手に持っていた刀の切っ先をラグヴェルに向ける。
「俺にも、それは譲れない!」
その一線だけは、例え命を賭してでも退く事の出来ない物だ。
「…残念だ。貴様は俺を正しく理解したようだったのだがな」
「ああ。お前は必ずやるよ。だからこそ、認める訳にはいかないんだ」
ラグヴェルは静かに目を閉じ呟く。
そして、俺も残念に思う。この男が覇道でなく王道を行けばと。
「相容れぬと言うのであれば、是非もなし。
我が覇道の妨げとなるのであれば、何者であろうとも斬り捨てる!」
再び目を見開くと、その身から更なる覇気が溢れ出す。
俺はその覇気に呼応するように前に進み出る。
体内の魔力を練りこみ、身体強化を行う。
同時に右手の刀にも魔力を練りこむ。薄暗い部屋の中で白刃が僅かに光を帯びる。
「フン!」
ラグヴェルが何処からとも無く抜き放った大剣が頭上から裂帛の気合と共に振り下ろされる。
上体をひねり紙一重で避ける。
そのまま懐まで踏み込み刀を振るう。
「む!?」
ラグヴェルはその一刀を右腕で受ける。
「硬いな」
刀は腕を浅く切り裂いたのみで、強い再生力を持つバンパイアには大きなダメージにはならないだろう。
「惜しいな」
ラグヴェルは距離を取る俺を追う事無く、静かに一言呟く。
「手に入らない物をいつまでも欲しがるなよ。とっとと殺そうぜ」
背後に回りこんだライエルが諌めるように声を掛ける。
「そう言えば、お前も居たんだっけな」
完全に忘れてたよ。
「邪魔立てするな。貴様が何かの役に立つ相手ではない」
ラグヴェルがライエルを睨みつけ言う。
「それと、そういう意味の『惜しい』ではない。この者を配下とする事は既に諦めた。
俺が言ったのは『十全であれば今の一刀で終わったものを』という意味だ」
右腕の傷を見ながらラグヴェルが言う。
「正直に言おう。貴様は強い。今の動きだけでそれは十分に分かった。技量でいえば俺は遠く敵わぬ。我が軍にそれほどの腕前の者が幾人居る事か。だが、俺が貴様に負ける事は無い」
「今のが俺の全てだとでも?」
「いいや、全力には程遠かろう。いや、全力など出せまい」
そう言うとラグヴェルは大剣を振り上げる。
その剣に膨大な魔力が集まっている。
「ムン!」
一歩で間合いを詰め、気合と共に剣が振り下ろされる。
俺その斬撃を半身を引き避ける。
「避けたか。何故受けなかった?」
「そりゃあ、そんなもん誰も受けないだろ」
振り下ろされた剣は床を砕き、余波で部屋を半壊させている。
「違うな。受けなかったのではない。受けられなかったのであろう?」
床を砕いた剣を持ち上げると、再び俺を正面に見据える。
「技量は貴様の方が遥かに高く、その身に宿す魔力も俺に劣るものではない。ならば何故今の一撃が受けられぬ?答えは明確。身の丈に合った得物を持たぬからだ」
ラグヴェルは俺の右手の刀を指差し断言する。
「俺の体に傷をつけるのだ、駄剣ではあるまい。だが、貴様の全力を引き出せる物でもあるまい。全力を出せば一太刀と持たぬのではないか?持ち主の枷と為るのであればナマクラと変わらぬ。
この魔剣のように、自身の力を十分に引き出せる得物を持って初めて十全と言える。」
自身の持つ大剣を見せ付ける様に掲げる。
ラグヴェルの言葉は確信を突いていた。
祖父から「免許皆伝の代わり」と渡されたこの刀は、名工と言われる鍛冶師の手による業物だ。
だが、それでも俺が全力で魔力を込めれば鋼の刀身は砕けるだろう。
それでも今の今までこの刀を使ってきたのは単に記念の刀だからという訳ではない。
全力を尽くして戦う事を想定していなかったからだ。
他の刀でも同じ事。ならば鋼の刀としては最上といえるコレで十分。そう高を括っていたツケだ。
つまりは、
「考えが甘い。という事だ。その甘さが、死を招く」
ラグヴェルが言葉と大剣を俺に突きつける。
「存外、配下に加えても役に立たなかったかも知れぬか。
興味も失せた。俺が手を下すまでも無かろう」
ラグヴェルが踵を返す。
「後は任せる」
その言葉と同時に暗闇の中から幾つかの影が現れる。
「あら?処分しちゃうの?勿体無いわね、こんなに良い男なのに」
「遊ぶなメアシェス」
「は~い。残念ね、本当に」
ラグヴェルの言葉に首をすくめて返事をするのは
「言ったでしょ?きっとまたどこかで会うって」
武芸会の祝勝会の晩に会った酔っ払いの美女だった。
「アンタ魔族だったのか」
「そうよ。今度会ったらイロイロとイイコトする予定だったのにね。残念ね」
現れたのは彼女だけではない。
他にも2人が影のように付き従う。
魔族が3人、それとラグヴェル。ついでにもう1人。
先程のラグヴェルの攻撃で兵も集まってくるだろう。
状況は絶望的だ。
だが……。
「何か言いたい事はあるか?せめてもの情けに聞いてやろう」
ラグヴェルが言う。
ならばお言葉に甘えて言わせて貰おう。
「俺は確かに甘いのだろうな。よく詰めが甘くてしっぺ返しをくらう。読みが甘くて馬鹿の暴走に巻き込まれる。知り合いに甘くてよく騙される」
よくよく思い返してみると学習しないのはメリオラだけでなく俺も同じだな。
「ラグヴェル、お前にはそんな甘さは無いんだろうな。それは、そうでなければ生き残れなかったからだろ?」
思えば俺は甘やかされてきたのだろう。
大貴族の家に生まれながら権力争いとは無縁だった。
周りは皆優秀で気付かぬ内に外敵は排除されていたのだろう。
「ありがたい事に、俺は周囲の者に恵まれている。辛いときには助けてくれる仲間が居る。苦しいときには共に苦しんでくれる仲間が居る。そして、俺が道を踏み外したときにはブン殴りに来る仲間が居る」
それも、グーではなく鞘でだ。気分によっては抜き身かも知れない。
「お前にそんな仲間がいるか?いないからこう為ったんだろうな。
お前が道を踏み外した時、それを正そうとする者がいなかった事。
それがお前の悲劇だ!」
俺はラグヴェルの目を真っ直ぐに見据える。
「それで終わりか?それが今際の言葉で良いのだな?」
やはり、ラグヴェルには今更どのような言葉も響かないようだ。
「いや、俺は遺言を言ったつもりは無いぜ」
「ほう?では今のは何だ?」
「今のか?『言いたい事はあるか?』と聞かれたので、言いたい事を言っただけさ」
魔族3人が俺を取り囲む様に移動する。
外にも多くの気配が集まってきているのを感じる。
状況は更に悪くなっている。
それでも俺に焦りはない。
アイテムボックスから一枚の紙を取り出す。
それを床に置き魔力を流す。
床に魔法陣が描かれる。
何の根拠も無い。
だが、まるで不安はない。
□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □
同時刻。
遥か遠くの、とある丘。
「繋がったわ!」
「遅い!あの馬鹿め」
「待ちくたびれちゃったよ」
「せやな、ウチも寝るとこやったわ」
「早く早く、オイラもう待ちきれないよ」
「行くわよ!『転移』」
□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □
魔力を通した瞬間に2つの魔法陣が繋がった事を感じる。
発光する魔方陣から飛び退る。
魔方陣の光が薄暗い部屋を満たす。
光が薄れるとそこには5つの人影が在った。
「言ったろ?俺は仲間に恵まれているって……」
「………」
「………」
光の中から現れた人影は、妙なポーズを決めていた。
無表情ながらノリノリで剣を派手なポーズで構えるアリシア。
たぶん相談して決めたのであろう、ルーリドゥールを中心にシンメトリーなポーズをしているメリオラとセルジュ。
恥ずかしそうに顔を伏せるアーシェス。
「随分と頼もしいお仲間ね?」
「お前等なぁ」
空気を読め、空気を。緊張感が台無しだよ。
「ほら、見てみぃ。アーシェがポーズせんからオカシな空気になったやん」
「嫌よ。あんなポーズ。恥ずかしい」
どうやらここでは常識人がマイノリティのようだ。
「まったく、お前等は…。
フフ、まぁこの方がらしいかな」
先程までの重苦しい雰囲気は既に無い。
「コレが俺の人に紹介するのはチョット恥ずかしい、自慢の仲間だ」
胸を張って言える。
「皆殺し。という事で良いかしら?」
「ああ、構わん」
メアシェスの言葉にラグヴェルが頷く。
その言葉に魔族の一人が進み出る。
迎え撃つようにセルジュが動く。
相変わらず、いつの間にか相手の懐に音も無く滑り込むように踏み込んでいる。
「龍剄浸掌!」
違うのは、なにやら技名らしきものを口にした事か。
床を踏み抜かんばかりの震脚から繰り出された掌打は魔族の左胸を消し飛ばす。
そのまま反転しながら突き出された右足が腹部に突き刺さる。
その右足を軸に跳ね上がった左足が、文字通りに首を刈り取る。
振りぬいた左足の勢いで右足を腹部から抜くと僅かに離れた場所に着地する。
そして、
「メテオドライバー!」
爆炎を纏ったメリオラがトドメの一撃を叩き込む。
必要だったかそれ?
ハイタッチを交わすセルジュとメリオラ。
今日が初対面の筈だが、どうやら気が合うようだ。
似たものどうしだからか?
「我が黒炎で燃え尽きるが良い!」
もう1人の魔族が赤黒い火球を生み出している。
「『深闇の炎』」
放たれた火球は、最も近くにいたルーリドゥールへ向かう。
「こんなんで、燃え尽きるか!」
豪腕一閃。弾き飛ばされた火球が壁を突き破り遠くで爆発する。
一般人が巻き込まれていない事を祈るばかりだ。
「ああー!!」
ルーリドゥールが声を上げる。
「ウチの一張羅が!?」
どうやら超高温の炎で袖が焦げたらしい。
「何してくれとんねん!このボケが!どうしてくれんねん!」
一張羅(白衣)を着て戦闘を行うお前がどうなの?とは誰も言わない。
本能的に命の危険を察したのだろう、魔族は影に溶け込むように沈んで逃げる。
だが、
「どこに行こうっちゅうねん?逃がすわけないやろが!」
ルーリドゥールの腕が既に閉じた筈の影から魔族を引きずり出す。
彼女には物理法則など関係無いようだ。
名も知らぬ魔族よ、安らかに眠れ。
「『天与の光槍』」
3本の光の槍がメアシェスを襲う。
しかし、光の槍は不可視の障壁に阻まれる。
「それならば」と前に出たアリシアがエクスグリアのシールドブレイカーで障壁を破壊する。
「ちょっ!?ウソ!?」
障壁を易々と抜けてきた剣にメアシェスは慌てて飛び下がる。
「あー、ちょっとまずいわね。2人とも瞬殺されてるし」
既に2人の魔族が倒されている事に軽く驚く。
戦況を即座に把握すると、背後のラグヴェルに視線を送る。
「ラグヴェル、逃げた方が良いと思うんだけど? 坊やだけならともかく、流石にこれはちょっと手に負えないわよ?」
「その様だな」
頷くラグヴェル。
逃がすと思っているのかよ?
「ラグヴェル!」
溜めは十分。刀身が魔力に耐えられないのなら、魔力を流すのは斬る瞬間のみ。
全力で突進する。
渾身の力と共に振り下ろす。それと同時に腕に留めていた魔力を刀に流す。
砕けるよりも早く斬る。
「むぅ!?」
呻き声と共にラグヴェルが左肩を押さえ片膝を着く。
「これがお前がナマクラと称した刀だよ」
振り下ろされた一刀はラグヴェルの左肩を半ばまで断ち切り砕けた。
受けようとした魔剣を断ち切った後に。
「お前の御自慢の魔剣は、お前がナマクラと断じた刀に負けた。
お前が不要と切り捨てた物の中にも、お前の想像を超える物が有ったんじゃないか?」
「かも知れぬ。だが、今更言っても詮無き事よ」
血の溢れる左肩を押さえたままラグヴェルは立ち上がる。
「貴様の剣も目的を達する前に砕けた。ならば、やはりナマクラに変わりない!
目的を達せられぬのならば意味は無い!」
その目には未だに強い光が宿っている。
だが大量の血を失ったからかフラフラとよろめき再び膝を着く。
そんなラグヴェルにメアシェスが身を寄せる。
2人が影に溶け込むように床に沈む。
「待っ!」
「決着は預ける。だが、いずれ…」
ラグヴェルは最後まで俺の目から視線を逸らす事無く影の中に消えた。
「ルーリドゥール!」
あの2人も引っ張り出してもらおうと声を掛ける。
「なんや!今忙しい!!」
だが、返ってきたのは不機嫌そうな怒鳴り声だった。
「…もう勘弁してやれ」
視線を送ると、名も知らぬ魔族が形容しがたい形状になっていた。
「さて、帰るか?」
結局ラグヴェルには逃げられた。あの技(【影渡り】と言うらしい)は移動距離自体は大したものではないが、長時間影の中に隠れている事も出来るらしく見つけるのは至難の技なのだそうだ。
【索敵】にも反応が無い以上は現状では探しようがない。
ちなみに、ライエルもいつの間にか居なくなっていた。
「嫌や!まだ気がおさまらん」
前衛アートの作成だけでは気がすまなかったらしいルーリドゥールが渋る。
「ハァ~。しょうがないわね、お城を吹き飛ばして良いから、それで我慢しなさい」
「ん~?ホンマ?」
サラリとアーシェスが落とした爆弾発言にルーリドゥールが目を輝かせる。
「いやいや、ダメだろ。城にどんだけ一般人が居ると思ってんだ?」
1000人は居るだろう。八つ当たりで出す被害者数じゃない。
「大丈夫よ。大昔にグレイトアークで使ったていう、非殺傷ブレスがあるから」
「オォ!アレな。何故か生物には効果の無い、対物破壊専用のウチの必殺技の72番や」
「…必殺技の非殺傷ブレスって矛盾してないか?」
他にもツッコミ所満載だが、そろそろ外に集まった兵士達が突入してきそうなのでスルーしておく。
「本当に人は死なないのか?」
「人どころか、全生命体が無傷やな」
「グレイトアークで使った時は植物も無事だったそうよ」
「どういう原理だよ?」
「知らんがな。『死人が出たら嫌やなー』と思って撃ったらイケる感じ?」
「………」
「………」
胸を張って知らないと言い切るルーリドゥール。
なんだろう、この理不尽な生き物は?
△ △ △ △ △ △ △ △ △ △ △ △ △ △ △
この日、グリトラ帝国の帝都の中心にそびえる帝城が跡形なく消えた。
それは正しく『砂となって消えた』としか表現できないものだった。
しかし、不思議な事に軽傷者が若干名いただけで死者は1人も出なかった。
それでも城に集約されていた国の中枢機関の全てが消えた事で、グリトラ帝国は国家としての運営に致命的な被害を受けた。
帝城消滅を皮切りに地方の反乱、属国の独立宣言とグリトラ帝国は以降10年間に渡り内憂に悩まされる。
この日、グリトラ帝国の帝都では上空を舞う巨大な黄金の竜が多数の者に目撃された。
その黄金の竜と帝城の消滅とを関連付け「暴虐を尽くすグリトラ帝国に天罰を下しに黄金の竜が現れた」と噂する者も現れるが、それはまた別の話。
そして、グリトラ帝国の帝城が消滅したのと同じ日。
ジグタル連合王国のガラティオン要塞にも黄金の竜が現れた。多くの兵が驚きと不安で見守る中、黄金の竜は舞い降りたという。
グリトラ帝国の帝都の噂が広がるにつれ、この黄金の竜をジグタル連合王国の守護竜と呼ぶ者が現れる。
以降、グリトラ帝国との戦争の最前線、ガラティオン要塞に守護竜旗と呼ばれる黄金の竜の描かれた旗が掲げられるようになったが、それもまた別の話。




