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望むはただ平穏なる日々  作者: 素人Lv1
学院 編
32/90

32 VS魔獣

 『我とじゃれ合いたいのか?』

 地の底から響くような声が、頭の中に直接響く。

  

 その姿は例えるのならば『闇を纏った犬』か。

 ただの犬と違うのは、首から先が2つ、前足が4本有ることだ。

 その背から黒い炎が噴き出している。


 『さて、寝起きの運動代わりに遊んでやろう』

 魔獣から放たれる威圧感に物理的な効果が有る様にさえ感じる。


 「上等!遊んでくれよ!!」

 ヴァルヘイムが雄叫びを上げながら切り込む。


 ザシュッ!

 ヴァルヘイムを打ち払おうとした前足を彼が斬り払った。

 前足を半ばから斬り飛ばした大剣は返す刀で魔獣の首を狙う。


 ズシュッ!

 首を狙った斬撃は別の足で防がれる。

 今度は足の半ばまで切り込んだところで止められる。


 ヴァルヘイムが飛び退くのとほぼ同時に彼のいた場所が薙ぎ払われる。


 「ッチ、硬いな。コイツで切れないなんてな」

 ヴァルヘイムが愛剣を構え直し呟く。


 『いや、我が体に傷をつけるなど大した剣だ』

 切り落とされた前足を見ながら、怒りは無く、むしろ褒めるかのようだ。


 「そいつはどうも、我が家の家宝でね」


 「ついでに、我が家の家伝の秘術も持っていきなさい」

 「絶対零度の刃(アブソリュート・ゼロ)

 カトライアの秘術か、地面から絶対零度の刃が生え、魔獣の体を貫く。


 「槍の四重奏(カルテッド・スピア)

 土・炎・氷・雷の4本の槍が魔獣を貫く。

 魔法を発動直前で待機させ、別の魔法を詠唱し同時発動させるマシウスの得意技「連装魔法」だ。


 「これで、どうだ」

 「星光の十字架(シャイニング・クロス)

 天空から光の柱が魔獣を貫く、ナタリアが腕を薙ぐと光の十字架が完成し爆散する。


 3人の魔法士による最大魔法の連携。

 だが、魔獣には殆どダメージは無い。


 その事は3人にも自覚出来たのだろう。

 その表情には悔しさが滲んでいた。


 『気は済んだか?』

 そこには、つまらなそうに欠伸をする魔獣の姿があった。


 避ける必要も、防ぐ必要も無い。

 絶望的なまでの力の差。

 其処にはそれだけの差が在る。


 「下がっていて、守ってあげる余裕は無さそうだから」

 アーシェの言葉に、3人は悔しそうに距離を取る。


 動きはさほど速くない、ならば速さで撹乱し急所を狙う。

 アイコンタクトで頷き合った、俺とアリシアが縦に並び突っ込む。

 

 迎撃に振るわれる腕を、俺は前に、アリシアは上に避ける。

 懐に飛び込んだ俺は、後ろ足に狙いを絞り斬りかかる。


 「っな?」

 予想に反し、呆気無いほど軽い手応えで右後ろ足を斬り飛ぶ。


 ドスドスドス!

 直後真上から無数の何かが降りかかって来る。


 地面を転がりながら距離を取り確認すると、無数に枝分かれした尻尾だった。

 

 「厄介な奴だ」


 顔面を狙ったアリシアも失敗に終わったらしく、既に距離を取っていた。

 

 だが、足は斬り飛ばした。


 筈だったが、奴の足は既に6本に戻っていた。


 「再生能力も高いようだな」


 「っというより、手足はただの飾りね。

  奴の本体は体の中にある『核』それ以外はただの飾りよ」

 「じゃあ、いくら足を斬っても、首を斬り落としても無駄なのか?」

  「無駄ではないわ、再生に力を使うのは事実。続ければいつかは力尽きるわ

  ただ、それまで待ったら魔力が回復してしまうでしょうね」


 「魔力?」

 「今はまだ封印から目覚めたばかりで、体内に魔力の蓄積がほとんど無いから肉弾戦しか出来ないけど、時間の経過と共に魔力が蓄積される。そうなったらもう手には負えないわ」


 「今が最後のチャンスって事だな」

 「そう、不完全な内に『核』を破壊するか、再度封印する。

  これ以外の方法は思いつかないわ」

 時間はかけられない、短期決戦だ。


 俺、アリシアが速度で撹乱する。

 ヴァルヘイムが自慢の大剣で所構わず斬りつける。

 

 ヒット&アウェイで飛び回る俺達に魔獣が苛立っていく。


 『煩わしい、小虫共が!』

 魔獣がその身に蓄えた僅かな(総量に対して)魔力を解き放ち纏った黒炎を爆発させる。


 黒炎にその身を焼かれながらも、ヴァルヘイムはアーシェの盾となる。

 「これを待ってたんだぜ」


 僅かとはいえ、魔力を操る為に活性化する『核』、それを見つける為の策だった。


 当初は魔法による遠距離攻撃で防ぐ際の魔力の動きで見切るつもりだった。

 しかし、魔法による攻撃では奴は何の危機も感じないようだ。


 守りに魔力を使わないなら、攻めで使わせるしかない。

  

 ダメージを与える事は出来なくとも、魔獣の神経を逆なでする事は出来る。

 

 苛立った奴が俺達を一掃しようと魔力を使う瞬間を狙っていた。



 「そこ!打ち抜いて」


 ドス!


 魔獣の胸に光の楔が打ち込まれる。


 「ここで決めるぞ」

 「当然だ」


 千載一遇の好機に突っ込むアリシアとそれを追うように踏み込む俺。

 俺の手には、今この場で最大の攻撃力を誇るヴァルヘイムの大剣が在る。


 迎撃に振るわれる前足をアリシアが受け止める。

 「行け」

 弾き飛ばされながら貴重な一瞬を生み出す。


 「応」

 身体強化の最大加速でアリシアの脇を抜ける。

 

 ズシュッ!


 光の楔に寸分違わず大剣を突き立てる。

 勢い任せに刀身を埋め込んでいく。


 刀身の半ばまでを埋め込んだところで勢いが衰える。

 「まだだ、まだ届いてない」


 もう一押ししようとした瞬間。

 

 ドギャッ!


 真上から衝撃が来る。

 叩き落された!?


 『小賢しい!無駄な事だ!』


 胸に刺さる剣を抜こうとしたとき。


 「「「拘束バインド」」」


 後方から3人が同時に拘束魔法を放つ。

 

 魔獣の体を光の輪が拘束する。


 僅か数秒しか持たないだろう。


 だが、それで十分だった。


 「最後に決める、ソレが主役だ!」

 

 開戦直後に弾き飛ばされたメリオラが後方で力を溜めて出番待ちをしていたのを俺は知っていた。

 「主役で良いからキッチリ決めろ!」


 得意の爆炎を推進力に、ロケットの様に突貫し、魔獣に跳び蹴りを打ち込む。

 「貫け、メテオドライバー!!」


 魔獣の胸に生えた剣の柄頭を蹴り抜いた。


 ブッシュ!


 刀身が完全に埋まっている。


 剣先が背中から抜けている。


 その剣先に拳大の何かが刺さっている。

 

 「封印するわよ。サポートして」


 素早く魔獣の背後に回りこんだアーシェが『核』を魔力で包み離れる。


 「しばらく掛るわ、それまでソイツを抑えて」


 『核』を取り戻そうと魔獣が暴れる。


 

 

 「オラー!」

 ヴァルヘイムの斬撃が魔獣の首を斬り落とす。


 4本の足と1つの首を失った魔獣が地に伏せる。


 『核』が無い所為か体の再生は遅い。


 『下等生物が!下等生物が!!』


 怨嗟の呻きを残し魔獣の体が光の粒子となり消える。


 「終わったわ。皆ご苦労様」


 幾重のもの光に包まれた『核』を眼前に浮かべ、アーシェが封印完了を告げた。


 「「「終わった~」」」


 地面の上で大の字になって見上げた空に歓喜の声が吸い込まれていった。

無理やりですが魔獣戦完了です


とりあえず投稿

おかしな所は後ほど修正します


感想、ご指摘等ありましたら

宜しくお願いします

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