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望むはただ平穏なる日々  作者: 素人Lv1
学院 編
27/90

27 IN迷いの森

 『迷いの森』もしくは『帰らずの森』

 そう呼ばれている森の奥に俺達は来ている。


 メンバーは、俺、アリシア、メリオラ、ナタリア、マシウスのいつもの5人に

 ギルドからマリアベルと、何故かヴァルヘイムとその友人カトライアがいる。


 ギルドから出たところでヴァルヘイムに出会い、いつもはギルドから出ないマリアベルが同行している事に興味を覚えたらしく「俺達も行く」っと言い出した。


 自分の個人的な依頼なのでBランクを(彼等はBランクらしい)雇えるほどの報酬は出せないっと断ったマリアベルだったが、「報酬は無くても良い」「断るなら勝手に付いて行く」と是が非でも同行する気のヴァルヘイムにマリアベルが折れ同行が認められた。




 「だから、今日はギルドに行くべきだって言っただろ?カーラ」

 上機嫌で話すヴァルヘイムに

 「そうね。ヴァルの勘は馬鹿に出来ないわね。あてにも出来ないけど」

 何か思う節が色々と有るのだろう、複雑な顔でカトライアが答える。


 「迷いの森の深部だぜ、こんな機会が無きゃ一生来れないぜ?」


 『迷いの森』はエルフの集落を守るように形成されている。

 外敵からエルフ達を守る為に張られた結界のようなものだ。

 生きた森の迷路から無事に脱出する為にはエルフか、彼らに認められた者の先導が必要となる。


 「ボク、エルフに会うの初めてなんだよね」

 ヴァルヘイムに劣らず、ワクワクしているメリオラが目を輝かせる。


 「俺もエルフには会った事は無いな」

 

 排他的というよりも自分達の領域から外に出たがらない、所謂『引篭もり』なのだ。

 たまに外の世界に興味を持ち旅をするエルフもいるが、基本は一生を森の集落で過ごす連中だ。


 皆がエルフについて、その集落についての期待を口にする。


 が、マリアベルの一言が皆の期待を打ち砕く。

 「先に言っておきますが、集落には寄りません(・・・・・)よ」


 「「「え?」」」


 「だ、だって『迷いの森の奥に行く』って?」

 実は期待をしていたらしくカトライアが狼狽えた声を出す。


 「エルフの集落の更に奥です。集落は迂回します」

 「何で?集落に寄ってからじゃダメなんですか?」

 「今回の一件は大きな問題になりかねません。集落に寄っている暇はありません」


 「何があるんだ?」

 事前に説明を受けていないヴァルヘイムが疑問を口にする。


 「迷いの森の最深部には、かつてエルフと人間それと精霊の手によって魔獣を封じた祠があります。

  そこが、連中の狙いかもしれません」



 事態の始まりは、学院にギルドからの召集状が送られてきた事からだった。


 内容を要約すると

 『件の3人組について不穏な情報を入手しました

  その調査を行いますので、護衛をお願いします』

 というものだった。


 いつものパ-ティメンバーでギルドのマリアベルを訪ね話を聞いた。


 「あの3人組についての情報を集めた結果

  エルフの集落や迷いの森の『封印の祠』の情報を集めている連中がいることが分かりました。

  もし、封じられている魔獣の開放が目的なら、国家どころか大陸規模の厄災となりかねません。

  調査に向かいますが、事態が事態ですので内密に進めなければなりません。

  申し訳ありませんが、既に多少関わっている貴方達を巻き込ませてもらいます」


 関わっているのは、俺とメリオラとナタリだけだが、アリシアもマシウスも嫌とは言わなかった。


 そんな訳で、『迷いの森』もしくは『帰らずの森』。

 そう呼ばれている森の奥に俺達は来ている。


 

 「周囲に誰かいますか?」

 周囲に気を配り小声でマリアベルが俺に尋ねる。


 「いえ、俺の【索敵サーチ】には何の反応もありません」


 「お前、索敵スキル持ってんのか?」

 ヴァルヘイム、お前はもう少し空気を読め。


 「そうだよ。凄いだろ?ボクらのリー「黙れ」ダーは・・・」

 エッヘンっと胸を張る、KYなメリオラをアリシアが黙らせる。


 緊張感の無い連中にマリアベルも苦笑いをしている。


 ヴァルヘイムに緊張感が足りないのは、今は危険が無いっと察しているからだろう。


 メリオラに緊張感がないのは馬鹿メリオラだからだろう。


 いつかはメリオラがヴァルヘイム位に成長してくれる事を祈るばかりだ。




 「状況はあまり良くない様ですね」

 封印の祠は祠とは名ばかりで地下に埋もれた遺跡だった。


 普段は『祠を認識させない』為の結界と『祠に近づかせない』為の結界の二重結界が張られているらしいが、そのどちらも機能していなかった。


 「何者かが解除したって感じね」

 「そうですね、力任せに破壊したって感じじゃないですね」

 祠の脇に描かれていた結界の魔方陣の様子を見ていたカトライアとマシウスが異口同音に述べる。


 「つまり連中は、時間を掛けてでも水面下で静かに事を進めたいって事か?」

 (だとしたら俺達が気付いたって事は伏せたままの方が良いか?) 


 「マリアベルさん、このまま俺達の存在を隠したままにするって案と、存在がばれても良いので強力な結界を張るっていう案が有りますけど、どうしますか?」


 「俺は、このまま隠したままが良いと思うな」

 「そうね、相手の戦力が不明なんだから強行される可能性は排除するべきね」

 ヴァルヘイムとカトライアは存在秘匿案を推す。


 「ただその場合、直ぐにでも封印が解かれてしまう可能性が残りますね」

 マシウスが問題点を指摘する。


 「絶対に解除できない、突破できないと自信の持てる結界を作れますか?」

 マリアベルが尋ねる。


 「絶対っと約束できるものは無理ですね。索敵用の結界を張っておきましょうか?

  阻止は出来ませんが、誰かがここに来れば分かりますし、存在に気付かれ難い術ですし」


 「そんな物が在るのか?」とは誰も聞かない。

 聞かれても「グリフ家の秘伝の術」とでも言えば追求はされないだろう。

 

 「では、それで行きましょう」

 マリアベルの判断で俺達の存在を秘匿し索敵結界のみ残す事になった。


 「じゃあ、頼むよ」

 誰にも聞こえない音量で呟く。

 「任せろ」と言わんばかりに強くうなずいている大地の精霊に見張りを頼み祠から立ち去る。




 「マリアベルさん、やっぱりエルフの集落に寄った方が良くないですか?」

 帰りの道すがら提案する。


 「何故ですか?」

 たぶん分かっているのだろうが、俺の真意を尋ねてくる。


 「あの祠はエルフが守護しているものでしょ?

  たぶんあの祠を守る為に、この場所に集落を作り見張ってきた筈です

  ただ時間が経ちすぎたんで、そういった使命感が薄れたんでしょうけど」

 

 「たぶんその通りだと思います。

  なら、エルフに助力を頼むべきっという事ですね?

  ・・・ふむ、分かりました。集落に向かいましょう」


 謎に包まれたエルフの集落を訪れる機会を得たことに皆の顔が綻ぶ。


 

 「貴方達あまり私から離れないようにして下さい。迷いの森に捕まりますからね」

 後方ではカトライアがメリオラ達にエルフやその集落について何か教えているようだ。


 「そういえば、マリーさんは何で迷いの森で平気なんだ?」

 ヴァルヘイムがいまさらな質問をする。


 「私はハーフエルフですからね。集落への出入りの許可も貰っているんです」


 「「え?ハーフエルフ?」」

 事前の打ち合わせで俺たちは聞いていたが、ヴァルヘイムとカトライアは初耳だったようだ。


 「ええ、私は人の血が濃いのか外見はエルフっぽくないですけど、もうすぐ70歳になりますよ」


 「「「70歳!?」」」

 その情報には俺達もビックリだ。 


 エルフは長寿な種族だ。寿命は300年を超える。

 魔族や竜族のように1000年を越える種族は別として、最も長生きをする。

 ハーフエルフも200年位は生きるそうだ。

 寿命200年で70歳なら、寿命80年の人間で換算すると30歳ぐらいか?

 そう思えば外見的に不思議ではない。

 エルフは30歳ぐらいまでは普通に年を取り、その後250年ほど姿が変わらないらしいが、ハーフエルフもそうなのだろうか?


 あれこれと、考えていると。


 「女性の年や外観をあれこれ詮索するのは感心しませんね」

 ズバッと釘を刺された。


 「ハーフエルフって、たしかエルフよりも珍しいんだっけ?」

 ヴァルヘイムがどこかで聞きかじった知識を引っ張り出す。


 「そうですね。他種族と結婚するエルフがまず少ないですからね」


 「そっか、珍しいエルフに会えるからって楽しみだったけど、近くにもっと珍しいのが居たなんてな」

 そんな人を珍獣みたいに。


 「マリーさんは見た目エルフっぽくないって言ったけどエルフって、そんなに人間と違うの?」

 「そうですね、人間より線が細い感じですね。ただ、みんな美男美女ですよ?」

 悪戯っぽく笑うマリアベル。

 

 「そいつは楽しみだ」

 ワッハッハハと笑うヴァルヘイム。

 「エルフに会うの初めてなんだよなー」


 知ってるよ何度も聞いた。

 俺も初めてだよエルフに会うのは、エルフには(・・・・・)な。


 


 「もう直ぐ集落に着きますよ」

 森の中を歩き続けようやく集落が見えるかっという頃。

 俺は1つ大事な事を思い出した。


 『森の民』と呼ばれるエルフは仲間が死ぬと、その遺体を森に埋めその上に1本の木を植える。

 その木を『同胞の木』や『祖先の木』と呼び大事に育てる。

 死んだエルフがその木に生まれ変わると信じている。

 『同胞の木』を傷つけることはエルフにとっては許せない事らしい。


 「お前等、エルフの集落の近くで木を傷つけるなよ?」

 そう言って振り向いた俺の目に写ったのは、

 『枝ごと果実をもぎ取るメリオラ』だった。


 お前は、何やってんだ?

 何でこのタイミングで果実なんか取りに行くんだ?

 わざとか?わざとだよな?


 「ん?どうしたの?」そんな感じで降りてきたメリオラの足元に。


 シュン! 

 トッ!


 1本の矢が刺さった。


 矢の飛来した方角を見ると。


 怒りのオーラを背負ったエルフがいた。


 

 どうなるんだよ?これから。

次話に続きます



感想、ご指摘等ありましたら

宜しくお願いします


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