Ep.22ーリューー
お読みいただきありがとうございます。
数百年生きてきて、自分が何者か考えなかったわけがない。でもその度に時代の流れに邪魔されてきた。書物を調べようとすれば戦火で既に焼けていたり、言い伝えのある国は既に滅亡していたり。時代の流れに逆らえるものはない。
同じような存在の片割れがいると知ったのは二百年前。それから探し続けた。自分の対となる存在を。
まさかこんな形で出会うことはなるとは思わなかったけど。
でもハクと出会ったことで、数百年止まっていた歯車がここで動き出した。だから、
「私、そろそろ調べてみてもいいと思ってるの。私たちのこと」
その瞬間、長い沈黙が訪れた。私が長いと感じただけで、一秒もなかったのかもしれない。テントの外の喧騒が遠くなり、ここだけ氷漬けにされたかのように静かになる。
ハクは特に表情を変えずにじっとこっちを見ている。そして、ドカッと座り込んで目線を揃えてきた。
やっぱりこんないきなりだと厳しいかしら・・・。
「・・・いいよ。どうせ時間はいくらでもある」
「!いいの?終わりの見えない旅よ?百年二百年、平気で続く可能性だってあるわ」
意外にもあっさりと了承したものだから、こっちが驚いた。
「ここまで生きてきたんだ。百年も二百年も、そんな変わらない」
そう言ってハクは肩を竦める。
「でもその間にしたいこととか、あるんじゃないの?」
「さあ、行き当たりばったりで生きてきたから」
「本当にいいのね」
そうしてあっさりと決まってしまった。もっと深刻な雰囲気になると思ったのに、意外ね。
「そろそろ動こうと思ってたから、ちょうどいいし」
理由になってそうでなってなさそうな、言い訳っぽいものを聞きながら、そういえばと魔塔時代に聞いた噂を思い出した。
『そういえば、ヴィノにも正一級の魔法使いがいるらしいわよ』
『ああ、知ってるわよ』
『ヴィノから移動してきた子に聞いたのだけど、めんどくさがりのくせになにかと付き合ってくれる人らしいわ』
『ふーん、そうなの。いい人ね』
それ以来その話をすることはなかったが、もしかしたらハクのことだったのかもしれない。
「じゃあ決まりね」
「で、どこ行くの?」
そうね。調べるとは言ったものの、目的地が何も決まっていないんじゃどうにもならないわね。
「とりあえずこの資料をまとめてからでもいいかしら?」
「じゃあ明日だ」
「ええ」
その後も資料をまとめながらハクと話した。
「テントは一人一つなのね」
「今回は手厚いよ」
「普段は違うの?」
「普段はパーティーに一つ。支給されないことだってある」
「そうなの。久々に野営もしてみたいわね」
「冒険者の野営は雑だよ。適当にその辺で火を焚くだけの時もあるし、装備は全部着けたまま」
「装備をつけたままでよく寝れるの?」
「哨戒がいないから仕方ない」
「確かにそうね」
「ハクは騎士になったことはないの?あなたの実力ならスカウトもあったと思うのだけど」
「騎士団はないけど、諜報部なら」
「あら、どこの諜報部かしら?」
「一緒。時期は違うけど、たぶん後輩が・・・━━」
そんな話をした。気づけばすでに夜が更けていて、ハクは自分のテントに戻っていった。
昔話が通じる人は久々だったから・・・、つい話が長引いてしまったわ。




