メイワク
次の日、花凛は少し悩んだ結果、神社へ行くことにした。
「え、花凛、今日も用事ー?」
「ごめん、風歌。たぶん明日は一緒に帰れるから!」
少し不満そうな風歌に手を合わせて花凛は教室を出た。
もう流音は来ているかな。そんな事を思った時、一人の女の子に呼び止められた。
「ねえ、花凛ちゃん、だよね?」
振り向くと、ふんわりとしたボブカットの女の子がこちらを睨むように見ていた。
「そうだけど…。あなたは?」
「里華よ」
「…!」
里華、というのは彼の今の彼女さんの名前だ。身体が固くなる。
「あなた、フラれたのにまだ彼につきまとってるんだって?迷惑だからやめてくれない?花凛ちゃんはもう彼の彼女じゃない、私が彼の彼女なの。そこ、わかってる?」
「…わかっ、てる」
絞り出すように答えると、里華さんは勝ち誇ったように笑った。
「わかってるならいいの。もう彼には近づかないでね」
それだけ言うと彼女は立ち去った。彼女の言葉が、心にトゲとして刺さった。そしてそれは抜けないでズキズキとした痛みを心にもたらした。
神社へ行くと、境内に流音が座っていた。彼は花凛に気づくと片手を上げた。
「よ、花凛…どうした?何かあったのか?」
まだ何も言っていないのに、流音は目敏く花凛の異変に気づいた。
「…やっぱり迷惑なんだよね」
それだけ言うと、もう限界だった。瞳から涙がぽろぽろと零れていく。
「…」
流音は声もなく涙を流す花凛を静かに見つめていた。