プロローグ・正しき指導の名の下に ~報告求めて告げられた~
【注意喚起:精神的抑圧の描写】
本話より、大人から幼い子供に対する、逃げ場のない精神的な抑圧や支配を思わせる描写が始まります。
息苦しい展開が続きますが、後に必ず特大の「救済(と神の裁き)」が用意されておりますので、苦手な方は自衛しつつお待ちください。
序 章
プロローグ・正しき指導の名の下に ~報告求めて告げられた~
皇宮医務殿から、行きと同じくこっそり主神殿の医務殿に戻り、そこから呪師寮に帰った。
帰ったところで神官呪師学校の校長、ヴィロバ=エルマーニから呼び出される。
「……失礼します……」
帰り道、シリウムから色々と注意事項を告げられていたアインは、緊張気味に校長室を訪れた。
「いらっしゃい。アイン……今日の授業に関して、聞かせて下さい?」
片眼鏡の下から覗く淡い緑色の瞳でアインを射すくめて、応接セットに座るよう促したヴィロバは、いつも通りに進捗を問いかける。
「……今日は……医務殿で、実技をさせて頂きました……」
慎重に、アインは口を開く。
嘘ではない。けれど、正確でもない答えになっているのは、そう指示をされているから。
報告に、頷くヴィロバは、無言で先を促す。
「……ちょっと、大変でした……」
俯いてそう続けたアインが口籠る。
「アイン」
「……っ。はい……」
途端に、スッと目を細めたヴィロバが冷えた声音で呼び掛けた。
びくっと微かに肩を跳ね上げて、返事をしたアインが恐る恐る、顔を上げる。
「……っ!?」
その、緩やかな動きを厭うように、ヴィロバの指がアインの顎にかかり、強引に顔を上げさせた。
「……人と話をする時は、ちゃんと相手の顔を見なさい……」
驚いて微かに目を見開いたアインに対し、穏やかに囁くように……けれどもどこか、絡みつくような冷たさを持った声が指導する。
「っ。……は、い……。ごめ、なさ……」
「分かればよろしい」
喉の奥に声を引っかけながら頷いたアインの謝罪を受け入れ、けれどヴィロバは手を離さない。
「…………っ」
そのまま、少しの間、無言で目を覗き込んでくるヴィロバを見つめ返す。
「…………それで? 何を隠しているのですか?」
「っ!?」
ややあって、確信を持って問いかけられた言葉に、びくりと体が震えた。
すうっと、細められた眼差しがアインを射抜く。
逃がさないとばかりに、顎を掴む手とは逆の手が、アインの右腕を掴んだ。
応接セットのソファの背に、アインの体を押し付けるようにして上から覗き込む。
「っ。……ま、まだ……誰にも、言ったら、ダメだと……」
掴む指に僅かずつではあっても確実に力が籠って、微かに顔を顰めたアインは、けれど顔を背けることも、俯くことも許されないまま、事前に言われていた通りに答える。
「……なるほど……?」
その答えにヴィロバは満足そうな笑みを浮かべた。
ひとしきり納得したように頷いて……けれどもアインを掴む手は離さないままで……口の中で、何かを囁く。
「……ぇ……?」
その、あまりにも小さな声を聞きとれなくて、戸惑うように吐息を零したアインを見下ろす。
「……アイン……」
「っ。はい……」
それから、改めてその名を呼んだヴィロバに、刹那、息を飲んで返事をする。
遅れると、怒られることはもう知っていたから。けれど……
「今後は神殿の敷地内でのみの活動となります」
「……ぇ……?」
決定事項として告げられた言葉に、思考が止まった。
番外編第7弾、開幕です!
皇宮から戻ったアインが、神官呪師学校の校長であるヴィロバから呼び出しを受ける緊迫したシーンからの幕開けとなりました。
シリウムからの指示通りに慎重に報告を済ませようとするアインでしたが、ヴィロバの口から告げられたのは、「今後の活動は神殿の敷地内のみに制限する」という思いがけない決定事項でした。
「正しき指導」の名の下に下されたヴィロバの采配と、突然の宣告に思考が止まってしまうアイン。
この一方的な決定が、アインの心や今後の日々にどのような波紋を広げていくのか?
次回もお楽しみに!
【今後の連載スケジュールについて】
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ノリト&ミコト
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