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新科学怪機≪ギルソード≫ 〜兵器宿りし少年少女〜  作者: Tassy
4.盲目少女と忠犬の絆 編
98/111

・襲撃、吸血の魔女(2)

語録紹介(追加分)


・《吸血する(ヴァンパイア=)脳操紅鎖(ブレインチェーン)》……武装組織の幹部、ゼフィーネ=クライシスが所有する《ブレイン=ギルソード》。

リリーナのそれと同じく、脳から発する専用の信号で自在に操り、かつ生体の血液体液を全て吸い尽くす能力を持つ。



(うっ……くっ……! ダメ……こんな……とこで……!)



 《鎖(チェーン)》から血を奪われ、感覚と生命機能が失われ、意識を失いつつあるリリーナは、崩れ落ちるように両膝をつく__



 自身の命が薄れゆくのを、直に覚えさせられる__




 どうにかして、左腕に刺さる《鎖(チェーン)》を抜こうと画策するも__


 自身の能力《ブレイン=ギルソード》をまともに遠隔操作する精神力さえも、彼女は奪われていた。



 

(あっ……どうしよ……死にそう……)



 意識がついに途切れようとした刹那__


 彼女の脳裏、精神の奥底で、それに抗おうとする本能が、必死に呼び起こすように繋ぎ止めていた。


 リリーナの本心は諦めていない。


 精神の最深部で、彼女の脳は動き続けている。



(いや……ダメだよ……そんなの……! ここで倒れたら……病院の人達はどうなるの……?


 シェリーは……? この街の人達の安全は……?


 先生は……? ユウキは……どうなるの……?)




 __切られようとした感覚が呼び起こされ、リリーナは自我をしがみつくように意地でも保ち続ける。



「《創造する(ズィミウルギア=)脳操槍剣(ブレインセイバー):変形機構(トランスモード)》……!


 《細剣(サーベル):サンセベリア》……!」



 力を振り絞ってリリーナは意識を集中し、血の気が引いた白い右手の《通常槍(ランス):アゼリア》を握りしめた。


 すると、彼女の意識と連動して、《槍》は紅色の《ナノマシン》が光を帯びて輝き、姿を変えて__


 長く大きな槍から少し短い《細剣》へと変形する。




「あァ? 何? まだそんな気力が!?」

 


 ゼフィーネがきょとんと見つめる中__


 

 リリーナは震えながらも、迷うことなく、左手に深々と刺さった《鎖(チェーン)》に、右腕を伸ばし、その刃を左腕に当てた__



 次の瞬間、彼女はその《鎖(チェーン)》を、その腕の皮膚や血肉ごと引き剝がす__!




「ぐぅうぅう!! う"ぁあァアアア!!」



 肉体が避ける鈍い音がして、リリーナの左腕から水道破裂のように血が吹き出す。



 刺された《鎖(チェーン)》は、解かれて姿が消えていったが、彼女の腕と、廊下の壁と天井は、その赤い鮮血が塗りだくられる。




「くっ……! はぁ……はぁ…… はぁ……ぅあ………」



 意地と不屈の精神で、強引に相手の技は解いたものの、ここからの算段を立てられる程、彼女に余裕などなかった。



 全身の肌は白く艶を奪われ、目の下は青く、唇はひび割れて、生気と生命力が失われたその身体で__


 その細い肉体を震わせながら、リリーナはぜぇぜぇと息を荒げて、ただ《細剣(サーベル):サンセベリア》の刃を、敵の少女ゼフィーネに向ける他なかった。



「__へぇ? まさか力技で強引に剥がすとは思わなかった〜! びっくりしたけど? やり方は馬鹿なの?


 自分で無理して勝手に苦しんで、なんの意味も効率性も感じないんですけどォ?」




 一連のそれを目の当たりにしたゼフィーネの反応は、無惨にも冷酷で冷淡だった。


 まるで興が冷めたように、目の前の玩具を壊そうとするように、倒れる寸前のリリーナへと、大量の《鎖(チェーン)》を差し向ける。

 



「もういいわよ! リリーナ=フェルメールって、強そうで殺しがいがあるって想像してたけど!


 まさか、あんな犬1匹が死んだ程度で、ここまで動揺して隙だらけになる腑抜けとは思わなかったわ!


 挙げ句、こんなボロボロの無様な姿?


 世の中、優しい奴から死んでいくって、ディズレーリから聞いたけど、本当だったのね!!


 もうアンタの程度は分かったし飽きたわ!

 抹殺対象だって聞いてたから、殺してあげるね♪」




「っあ……っく……」




 残り少ない血を大量に流し続け、息も絶え絶えなリリーナに、力は残されていない__


 まるで獲物を捕食するかのように、ゼフィーネが《鎖(チェーン)》の束を一斉放射しようとした。


 しかし__


 この時、油断したゼフィーネは、奇襲の隙で溢れていた。


 背後から接近する何者かにも気づきもせず__


 ゼフィーネは目の前の獲物に気を取られていた。



 __その刹那、



「うぁ"ア………!!?」



 突如、右脚を潰されているような痛みと圧迫感を、ゼフィーネは覚えた。



「いっつ! なんなのよクソッ__!」っと、苛立ちながら暗黒少女が振り返った先には__




【グァルルル!! ………ゥウァウルルル!!】



 真っ白な毛並みの大型犬、ホワイトシェパードの介助犬『セイバー』が、牙を立ててゼフィーネの右脚を容赦なく噛み潰していた。


 力加減など一切も見せず、ゼフィーネの黒いブーツと、小さく華奢な脚から、血の糸が流れ出る。




「ぐぅあアアァァ!! なっ!? 何よこのクソ犬!!

いつの間に……!? 何で私の後ろにいるのよ!?」



【……ウ"ゥウ!! グァルル!!】



「セイバー……えっ……? そこに……いるの?」



 ゼフィーネが足を噛まれ動揺する中、リリーナは霞む視界を必死に凝らして、セイバーの姿を見つめる。



 それは、盲目の少女シェリーの傍に仕える忠犬の姿とは打って変わって__


 今は敵を前に躊躇なく牙を向ける姿は、まるで野生獣の本能を連想・錯覚させる。



 __しかし、自らが被る危険など顧みず、真っ先に立ち向かい奮闘する姿は、野性のそれなどではない。


 

 まさしく真の忠犬、清純なる使者のそれ__



「セイバー……ダメだよ……! 危ないから……逃げて」



 勇敢な忠犬が命を張って戦っているのに、自分が立ち向かわずにどうするのか__?


 己の身体に鞭を打って、リリーナは鉛のような身体を起こし、必死に立ち上がろうとする。




「ぐわぁァ……! ぐっ! こんのクソ犬風情がァ!!


 四足歩行の分際で……! 何を人間様に楯突いた真似してんのよ!? 舐めてんのォ!?


 そんなに死に急いでんなら! 望み通りにアンタからミイラにしてやるってのよォ!!」




 激怒した黒服の少女ゼフィーネは、その矛先を純白の忠犬セイバーへ向ける。



 怒りのままに使役武器《吸血する(ヴァンパイア=)脳操紅鎖(ブレインチェーン)》の束を分岐させて、その1部を刃に、セイバーを突き刺そうとした。



 その、寸前の刹那__


 唯一無二の相棒にして、親友の声__


 

 暗黒少女の左隣から、リリーナにとって最も親しみの深い、同い年の少年のそれを耳にする。




「すげぇなァ! そのでけぇ白ワンコはよォ!!まるで古来の騎士だ!! 最高に格好良いぜっ!!」




「はっ? 誰っ__!?」




 その男の声は、真上から聞こえた。


 視線を真上へと向き直すや否や、その間近に映ったのは、まるで巨大鈎爪の如き、4つの《剣の刃》__



 斬られる!!


 瞬時に身の危機を肌で感じたゼフィーネは、咄嗟の盾として、約5本の《鎖(チェーン)》を繰り出し、目の前に覆い被せた、だが__



「『夢魔の裂く鈎爪(ナイトメア=ファング)』___!!」




 鉤爪の刃が齎した斬撃と衝撃は、その威力のあまり廊下のタイルを破壊する。



 轟音と共に飛び散ったのは、その破片だけでない。


 微かな血の滴が、粉塵に戻って宙を飛ぶ__

 



「痛ぁアァ!! くっ……!! 何なのよアンタ! よくも私の皮膚を躊躇なく斬ってくれたわねぇ!!


 てか、お前どっから現れたの!? 私の《覚醒瞳(アイズ)》が、《ギルソード使い》を見落とすなんて……!」




 破砕されたタイルと石膏の粉塵に覆われて、ゼフィーネは、怒りの形相で怒鳴り散らす。


 痛みを堪えて左腕の袖から滴る血の滴を、必死に手で押さえながら__





「ハァ!? 俺はとっくにこの建物にいたぞ! お前がリリーナに集中し過ぎて、気づかなかっただろ!?


 で!? 女だから情けを掛けられると思ったのか!?


 大切な親友をここまで傷つけやがって!!

 今の俺は、お前に対して殺意全開だクソ野郎!!」


 


 少年が放つ怒りの絶叫と、巨大な爪の跡__


 冷たく光る眼差しと、《剣》の刃を振るって、その少年、闇の騎士は現れた。




 艶やかで妖しい赤紫の髪色と瞳。


 靡(なび)く黄色のブレザーに赤黒いネクタイ、漆黒のスラックスと革の靴。


 その両手一杯に握るは、まるで闇に蠢く魔物の爪、長く研ぎ澄ませた光沢が輝く、8本の《剣》の刃__



 リリーナを守り、盾となって被さるように、


 その少年、ユウキ=アラストルは、己が激昂を顕にした、鬼怪物の形相でこちらを睨み続けていた。




「__ごめんな白いワンワン! 機敏に避けてくれて助かったぜ! ちょっと威力の制御が難しかった……!」




 ふと、ユウキが一瞬だけ視線を右下にやると__


 ゼフィーネの脚に噛みついていた忠犬セイバーが、いつの間にかユウキの傍に立ち回って、共にリリーナの盾となって立っていた。


 まるで彼の攻撃を予測しての行動だったのか、その判断の速さに、ユウキは内心驚いて関心を覚える。




「ぁえ……? ユウ……キ? 何で……ここ……に……?」




 絶え絶えな息遣いで、倒れそうな身体で、焦点の合わない虚ろな目で__


 崩れそうなリリーナは、必死に上体を両腕で身体を支えたまま、微かに映るユウキの姿を見上げていた。




「何でって? いつもの見舞いの時間だろ!? つーか、さっき病院の入口、すげぇ騒ぎだったからな!


 無理矢理にロビーに入ってすぐに、上階に上がる機動隊と鉢合わせしたんだよ。


 それで話を聞いてみれば__!


 リリーナが単独で、テロリストの元へ向かったんじゃないかって、やり取りを聞いちまったからなァ!


 ったく! 無茶にも限度があるだろっ!

 まだ包帯も取れてねぇ身体だってのに__!


 まァいいさ、今は黙って俺に任せときなっ!

 あのガキ程度、速攻で3枚に下ろしてやる!!」


 


「ごめん……あり……がと……ユウ……キ……」




 意識が薄れゆく最中(さなか)、リリーナは無愛想ながらも、覇気と果敢さに溢れたユウキの背中を目に__


 誇らしく、つい今の今まで抱えていた重圧が放たれるような、安堵感を不思議と感じていた。 




(本当に私は、駄目だなぁ……! 勝手に自分で頑張ろうとして、結局はユウキに甘えちゃうんだ……)




 そんな心境を奥底に留めながら、リリーナは彼の背後で静かに、眠るように倒れ込んだ__




「はァ!? 今、ガキ程度って言った!? 随分と私を舐め腐りやがって! この半キザ野郎!!


 アンタみたいな、普通(フッツ〜)の《ギルソード使い》風情なんざ!! 私の《鎖(チェーン)》で秒で刻んでやるってのよォ__!!」





 自分を舐められたと思い、ゼフィーネが怒る。




 __その憤怒を表す《鎖(チェーン)》の束が、ユウキを覆うようにして襲いかかる。



 この時、ほんの刹那だが__


 ユウキの目には一瞬、今まで意識が向かなかった、敵の黒服少女の瞳がはっきりと映る。



(っ!? あのガキの目……!?)




 __普通の人体の眼球をしていない。



 本来は黒であるはずの瞳孔は、真っ白で楕円形の如く上下が尖っていて、


 目の中の虹彩は、何故だか艶やかな紅色の光を帯びて、目を凝らせば電子回路のような筋が見える。


 純粋は人間の、生まれ持ったそれではなく、


 まるで機械人形に取付された人口眼球のような、そんな違和感のある形状。




「《粒子器発動の覚醒瞳(ブレイン=アイズ)》!? まさかリリーナと同じっ__!?」




 重大な確信が、ユウキの直感を疾走った__


 だが、考えを頭で整理していた隙に、ゼフィーネの《鎖(チェーン)》の攻撃は、一瞬にして彼の顔面に到達する。




「チッ___!?」



 刹那、【ギャイィン!!】と、硬質な物体が玉砕し合う異音が、廊下に轟く__!



 ユウキの顔面にぶつかる寸前__


 《鎖(チェーン)》は動きを読まれたように、彼の片手に握る4本の剣、《夢魔の裂く鈎爪(ナイトメア=ファング)》により弾かれ、玉砕された。



 敵の攻撃を見事に交わしたユウキだが、彼の脳裏には、ある確信を決定づけた。


 それは思わず言葉となって、口から溢れる。




「……コイツはやべぇ、相手が悪いってヤツだな! 俺にとって、あのガキは強敵だ。なんの対策も無しでは勝てねぇ!


 お前……!《ブレイン=ギルソード使い》だろ!」





「ククッ! アンタって頭がキレるの?よく分かってるじゃない♪

 でもバーカ!もう遅いけどね♪よく見ろっての!」



「あァ!?」



 少女の煽りに苛立つユウキが、ふと自身の右腕に目を留めた瞬間__



 (何だ……!? 鎖っ!? 俺の皮膚の中に……!? )



 その煽りの理由を、ユウキは理解させられた。

 


 まだ彼は詳細を知らなかったが、それはリリーナの血液を急激に奪った吸血の《鎖》__

 

 それが今度は、ユウキの右腕の皮膚に食い込んで、その血を奪おうと捉えている。




「アーッハッハハ!! 馬鹿ったらバーカ!♪


 私の身体の一部同然の《吸血する(ヴァンパイア=)脳操紅鎖(ブレインチェーン)》から逃げられるとでも思ってんのォ〜!?


 そこで眠ってる女に! アンタのミイラ死体をプレゼントしてやるわよ!!」




「何をっ!? クソッ__! ならこの鎖が悪さをする前に、俺の腕を捌いて削ぎ落とすしか__!!」




 恐ろしい言葉をゼフィーネから聞いたユウキは、


 リリーナが同じ行動を思いついたように、自らの右腕に刃を入れようとした。



 刹那__



 【ザシュ__!】



 と、何かが溶けて、かつ千切られる音がした。


 焼け焦げたような匂いに釣られ、ユウキが確認すると、繋がれた《鎖(チェーン)》が、腕から数cm先で、高熱源体に切断されている。



 (っ!? 助かっ……た!?)


 

 何が起きたか、ユウキが周囲を流すように見渡すと、それは即座に判明した。


 

 __それは、ずっと背後で見守っていた忠犬のセイバー、それに装着された『誘導器具(ハーネス)』から、射出されたものだった。



 よく見れば、その持ち手の金具から、細く、小さい筒の突起物が見られ、黒い発煙が見られる。


 その正体は、隠し装備の《粒子ビーム砲》__


 この忠犬と主人である盲目少女シェリーが、共同で所有する能力武装(ギルソード)、《深層読解の(サイコメトリア・)共鳴体器具(ライフハーネス)》に装備された、護身用の緊急装備である。



「助けてくれたのか!? 白ワンコ__!? お前って一体何者なんだよ__!?」



 呆気に取られた目で、ユウキはセイバーを眺める。


 彼から見たその忠犬は、動じず、恐れもせず、己の騎士道があるかのように、真っ直ぐな眼差しだった。



「何よっ!? ほらよそ見してるとミイラに……!!」




 ゼフィーネが間髪入れず、《鎖(チェーン)》による追加攻撃を加えようとするや否や__


 突如、彼女は動きを止めた。


 その上唐突に、見えない何かと話すような独り言をブツブツと呟き出す。




 (何の用よカルヴァン!? 今ゼフィーネ様は忙しいんだから、勝手に私の脳に話しかけてこないで!?)


 


『やっと気づいたかい? ろくに通話にも出ないから、仕方ないだろう?

 

 君のような、暴走我が儘お嬢様を繋ぐために__


 この通信手段、《ブレイン=ナノマシン》による脳の信号装置への強制伝達があると思ってるよ__!』

 

 


 これは、通常の人間には得られない通信手段。

 

 彼女によって、自在な機能や形態に変形できる、《ブレイン=ナノマシン》__


 その用途を《能力》によって、《通信機》として変更・使役し、自らの脳に信号として送受信して、全ての会話を彼女の脳内だけで処理している。

 

 その手段は、いつかの中東地方の戦場で、リリーナがキルトに行った手段と、方法は同じである。




『ゼフィーネ君? 脳に声が響くかい? 僕が君に依頼したのは、あくまで潜入偵察だったはずだよ!?


 いつまで騒ぎ大きくしているつもりだい?

 同盟協力先のスパイ女性は死んだと聞いたよ。

 なら作戦は中断だ。


 一旦、退いて戻ってきたまえ。巻き添えによる戦闘はごめんだからねぇ。


 今の我々には、この国家と渡り合える戦力は欠片も残っていないんだ!同盟先の補充戦力は除いてね!


 命令だよ、速やかに帰還しろ! ゼフィーネ!』




 (__チッ! 分かったわよ! この腐れヤサ男!)




 脳内での通信を終えて、ゼフィーネは煮えきらない苛立ちの顔で、再びユウキの方を見やる。



「あァ! まだやる気か!? どっから来る!?」



 ユウキは、両手8本の剣、《夢魔の裂く鈎爪(ナイトメア=ファング)》を構えて、応戦体勢に入っていたが__


 そんな彼相手に、ゼフィーネは途端に冷めた口調で、こんな捨て台詞を吐いた。





「__もういいし! リリーナ=フェルメールは、できれば今日中に殺したかったけど、


 普通の《ギルソード使い》であるアンタなんか、いつでも殺せるから!


 今日はこの辺で退いてあげる! 次は殺すから!!」




 そう言って、敵の黒服少女ゼフィーネ=クライシスは、地上50階以上の窓辺から飛び降りて__


 その姿を、忽然と消した。




「チッ! 逃げやがったが、九死に一生を得たぜ!」

 だが今は、まずはリリーナの怪我の手当てを……!」




 手の剣全てを放ったユウキは、リリーナに声をかけるべく、振り返って彼女の状態を確認するが__




「リリーナ!? もう大丈夫だ! 聞こえるか!?

もうこの階は医療施設として機能しねぇから、まずは下の階に下りて……!」




「……………………」




「リ………リリー……ナ………?」




「……………………」





 そこに倒れたリリーナを覗き込むや否や、ユウキの背筋に寒気が迸った。



 リリーナが目を覚まさない。


 極度に顔色は蒼白として、息がほぼ聞こえない程にか細く、死んだかのように意識を失っている。


 倒れた彼女の周囲は、赤黒い血痕で覆われていた。




「オイ……! リリーナ……! しっかりしろ……頼むゥ!

 待ってろよ……すぐに救援隊をここへ呼ぶ……!!


 来てくれるのか!? 急いでくれ……!!」




 途端に顔色から血の気が引いたユウキは、急いでポケットから薄型スマートフォンを取り出した。



(クソッ……! 下の状況はどうなってる!? 救助に人は割けるのか!? どの時間待てばいい!?


 いや待てない!! 一刻も早く来て欲しい!!


 クソッ……! 頼む!! リリーナを……!!)




 最早冷静さなど奪われて、救援隊を無理矢理にでも呼びつけようと、切羽詰まって画策していた__




【……………ㇷッ………フッ……!】




 倒れて動かないリリーナの周囲を、大型の真っ白な『総合介助犬』のセイバーが、彼女に気を揉むように右往左往とし始める。



 訓練されたのか、それとも培われた感性なのか__



 その忠犬は、リリーナの身体の状態を自ら調べるが如く、彼女の顔の肌、また肉が抉られた傷口にコツンと鼻を当てて回っていた。





 __セイバーは、主人である少女シェリーと共同所有する、《深層読解の(サイコメトリア・)共鳴体器具(ライフハーネス)》の能力よって、感覚を触れて読解、及びその共鳴させる術を秘めている。




 故に、リリーナの身体の状態・病状、それを触れて知ったセイバーの情報は感覚と化して__



 今はこの場にいない、シェルターへ避難した少女シェリーへと、直(じか)に肌で伝えられてるのだった。





◇◇◇◇◇◇◇




 __同時刻の同建物、〈マリューレイズ軍立総合病院〉地下緊急避難シェルター内にて。




「ひっ!! いやぁあああアアアアアアアア!!」




 軍の誘導で避難していた盲目の少女シェリーが、唐突に錯乱して悲鳴を響かせた。



 共に集団で避難していた病院の関係者、また入院患者達が、その奇声に何事かとざわめきを立てる。




「シェ……シェリー!? どうしたの? お……落ち着いて! どこか痛いの……!?」


 

 共に避難していた隻腕の少女ラフィアスが、急いで少女の元へ駆け寄ると、左の片腕でさすって、どうにか宥めようとする。



 

「だ……大丈夫? 一体何が……?」



「いやぁ……リリーナさんが……! リリーナさんの身体が……!?」



「………えっ? リリーナ先輩? 何か……あったの……?」



 

 腕を抱えて震えるシェリーの発言に、ラフィアスの表情は凍りついた。



 彼女は、シェリーの有する特殊能力を知っている。



 ここは安全なはずなのに、この少女が何の原因もなくここまで取り乱しているのは__


 確実に、シェルターの外で切迫した事態が起きていると、確実にラフィアスは理解ができた。




「ねぇシェリー、何を感じてるの!? それは離れ離れになったセイバーが、教えてくれてるんだよね?


 リリーナ先輩に、何があったの……!?」





 自身の焦りと動揺を極力抑えつつ、ラフィアスはシェリーに問いかけた。



 だが、次に少女が発した言葉は、ラフィアスの冷静をも奪われる__




「セイバーは無事だけど……感覚が伝わって教えてくれるんです……! どうしたら……!


 リリーナ先輩の……血が……失われて……!

 呼吸が……速くて……おかしくて……弱くなってる……


 体温も奪われていって……どう……しよう……!

 だって……! 前にあれだけ大怪我してて……怪我も治ってないのに……私達を守ってくれて……!


 嫌だ!!助けて! リリーナさんを助けてぇ!!」




 シェリーの悲痛を込めた叫びは__


 ラフィアス、他の避難民達、防衛する機動隊の者達、その場にいる民衆に衝撃を与え、騒然とさせた。

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