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新科学怪機≪ギルソード≫   作者: Tassy
4.盲目少女と忠犬の絆 編
94/105

・隻腕少女と吸血の《鎖》(3)



「さぁ皆殺しよ♪ 野望と信念を旗に上げた活動は全てが正義!! 無差別攻撃さえ神聖なる儀式!!


 抗いなさい! その怪我も治りきっていない身体でねぇ!


 リリーナ=フェルメールゥゥ!?」





 __狂気に満ちた女看護師から放つ《鎖》が、颯爽とリリーナの周辺を覆い囲んで、彼女に襲い掛かる。




「………ふざけないで……!!」




 低く、小さく、冷静な声を零した刹那__



 並なぬ軽快な速度で、洞察力で、軽やかな動きで、食って掛かる《鎖》をすべて回避しては__


 『紅色の閃光』が迸って、全てをあっけなく破壊する。




「はっ……速っ!? 何をしたか目が追いつかない!? あれが本当にリリーナ先輩の動きっスかっ!?」





 片側の腕で、怯える盲の少女を抱く隻腕のラフィアスは、目の前で戦うリリーナの動きを、肉眼で追うのに精一杯だった。



 ……しかし、捉えたと思うや否や、少女リリーナを襲った《鎖》は、すでに彼女によってバラバラに斬り裂かれていた。





「なっ……!? 何よあの小娘の速さ……!?


 気力体力は普通じゃないと思ってたけど、あれが病み上がりの身体……!?


 まだ怪我の包帯も取れていないくせに……!」




 看護師を装った女テロリストは、並外れたリリーナ身体能力と、負担を堪えてでも戦う闘争本能に驚愕を覚える。


 ふと、その立ち姿に目を留めれば__


 《鎖》を引き裂いた『紅色の閃光』の正体を、ようやくその眼球に捉えることができた。



 それは、リリーナが右手に握っていた、先端で目立つ大きな『花形の刃』が芸術的な大型の長槍。


 事前情報として知っていた、改造された彼女の大脳と連動する『遠隔操作兵器』《ブレイン=ギルソード》__


 

 名は《創造する(ズィミウルギア・)脳操槍剣(ブレインセイバー)通常槍ランス:アゼリア』》__





「何が「無差別攻撃は儀式」よ! ふざけるなっ!! その身勝手な欲求で!!


 どれだけの人や子供達が命を! あるべき笑顔を奪われたと思ってるの!?


 人の痛みを踏み躙る人間に、情なんてかけられない!!」




 リリーナが怒りを叫んだ直後、右手の《長槍》は紅色の光を帯びて、今度は槍から刃渡り70cm程の《細剣》へと、その形状ごと姿を変える。


 まるで細長い葉の刃。これは、幾通りの形態が1つ__


 《創造する(ズィミウルギア・)脳操槍剣(ブレインセイバー)細剣サーベル:サンセベリア』》__




 正義の《剣》を携えて、リリーナは女テロリストへと真っ向から立ち向かっていく。




「あァ!? ガキを宥める理屈か? その戯言が各国共通で通じる程、世の中は甘くねぇよ!


 お前の抹殺は、()()()()による処刑がお似合いだァ!!」




 天の力を授かったように高揚する女テロリスト。


 それを守るように、そしてリリーナを喰らうように__


 無数の《鎖》がメデューサの蛇髪の如く空中で踊り、女を覆うようにして、少女にさらに囲い、潰そうとする。




「いい加減にして__!」




 __苛立ちの顔と言葉が、その少女から見られるや否や、



 紅色の雷光はこの瞬時に疾走って、次々と《鎖》を微塵に粉砕する。

 

 どれだけ八方を《それ》が覆い尽くそうとも……



 瞬く速度によるリリーナの剣捌きが、それ等の合間を擦り抜けて、散らしてゆく__



 驚愕を通り越し、ついに相手側も怖れを覚える程に、彼女の身体は回復と同時に力を増強させるうに見えた。


 次々に襲う《鎖》の束を斬り裂き、踊るように回避し、瞬く速さで全てを薙ぎ払ったかと思えば__




 この時リリーナの姿は、テロリストの女とは目と鼻の先、零距離の位置にまで迫っていた。




(っ!? 馬鹿なっ……!? 速す……ぎ……!)




 __気がついた瞬間は、すでに遅い。


 姿は目に映っても、その剣先だけは捉えられなかった。




 少女リリーナの姿を見た直後、女テロリストの身に襲ったのは、身を焼かれる痛覚と、微かに見た鮮血の飛沫。




「……っあ"!? ……ぅぐぉ……お"……!!」





 立ち眩むようにバランスを崩した女は、看護師の服を赤く染めて、その場にうずくまった。



 __霞む視界を凝らせば、


 その胸から右脇腹まで、溢れる血から刀傷の溝が覗く。そして血の雫は、少女リリーナの握る細剣の刃先に__





「__不可抗力でやむを得ず、ごく浅い太刀筋を身体に刻んでしまいました。


 病院の人達の命を守る為なので__!


 でも安心して下さい。その刀傷は表面だけ。血が出ても臓器に損傷はない。命に別状はないので!


 しかし、その傷ではもう動けない。


 このまま拘束されてもらいます! 拘置所の病棟で、ゆっくりと治療を受けましょう? 無差別テロリストさん?」





 __覚悟で満ちた、女騎士の鋭く冷徹な眼差しで、リリーナは蹲る女テロリストを見下ろしていた。



 その見下された視線は、その女にとって酷く屈辱だった。


 


「……ぅぐっ……ジャリが……舐めやがって……!」

 



 傷を押さえながら、女テロリストは憎しみの皺を寄せてリリーナを見上げる。




 __これまでの時間は、女テロリストが謎の《鎖》で彼女達を襲ってから、まだ3分と経過していなかった。


 


 短時間によるあまりの展開の速さに、


 盲目の少女シェリーを片手で抱き抱える隻腕少女のラフィアスは、ただ呆然としてこの状況を眺め続けてしまう。




「ひっ……くっ……! 血の……臭い……怖い…よ……

 ラフィアス……怖いよ……誰か……死ぬ……の……嫌ぁ」




 シェリーはラフィアスの腕の中で、顔は青ざめて、恐怖で震え、過呼吸の発作も起こしていた。


 それは過去、紛争の傷によって、家族も、目の光も、暗殺で育ての親も失った故の、癒えない【心の傷】__



 

 そんな怯える彼女を見た瞬間、ラフィアスは我に返る。


 

「シェリーごめん……! 私、やらなくちゃいけないの!

アンタを絶対に守る為だから、我慢して……!」




 自分がこの時、本来すべき事__


 それに気づいたラフィアスは、シェリーから手を離すと、


 着用する検査用衣服に隠し持っていた、軍事用の薄型スマートフォンを取り出して、内蔵された警報ベルを鳴らす。




『フォアァアァアァ!! フォオオォオ!!』



 けたたましいサイレン音が鳴り響いて、病棟の廊下とナースステーションはざわめきと悲鳴で騒然とする。


 同時に、ラフィアスは喉を枯らす大声で警告を発する。




「皆さん! 落ち着いて聞いてください! 緊急事態です!


 このフロア内にて、スタッフを装ったテロリストによる襲撃事件が発生致しました!


 主犯は今は行動不能ですが、事態は危険が予測されます!


 皆さんは落ち着いて! 入院患者の方は、医療スタッフや警備兵の方々の指示に従って、この場から避難して下さい!


 医療スタッフの方々は、重病患者さんを優先に、警備兵の誘導で、シェルターや指定避難区域へ搬送して下さい!


 国軍組織〈戴冠の女王軍(マリー・ルイーズ)軍立学園:メアリ=ステュアート学園〉所属生徒の権限をもって!


 緊急避難指示を発令します! 落ち着いて逃げて下さい!」






「……おっ……オイ! 聞いたか!? またテロだってよ……! この階が一番危険だぞ……! ここから離れろォ!」



「この階のスタッフの者です! 皆さん落ち着いて! 慌てないでこちらへ続いて下さい!」




 ラフィアスの警告は即座に聞き入られた__


 フロア内はどよめきの声と共に、至急避難する人々によって、その往来は加速する。




(へぇ!? びっくりしたな……! あのラフィアスって女の子は、私と同じで、他校の軍立学園の生徒だったんだ……!)




 警告を聞いたリリーナは、内心では静かに驚いていた。


 だが、その間にも、有事の際に病院付近で駐在していた特殊武大隊が、20名程の大人数で、彼女達の元へ駆けつける。




「リリーナ様! おぉご無事でしたか!?


 この女が主犯とお見受けしますが、後の処理は我々にお任せの上、貴女様も安全な場所へ__!」



 黒い武装服とゴーグルの覆面で身を包む武装隊、その部隊長らしき男が、リリーナに寄り添って、避難を促す。




「そ……そうッスよ! リリーナ先輩のご活躍のお陰ッス!


 先輩が、この《鎖》で襲ってきた《()()()()()使()()》の女を成敗した事で、病院の人達の安全は確保できたッス!


 後は、私達も避難民について行った方が確実ってわけで、シェリーも震えてますし、先輩がいて下さったら……」




 怯えるシェリーを思い、リリーナに付き添って欲しいと願うラフィアスだったが__



 その返答として、リリーナが次に発した言葉は、ラフィアス達を再び、また武装兵隊達をも戦慄と困惑に陥れる。




「ごめんラフィアス……! また私は一緒に行けないの! まだ事態は何も終息していないよ!


 だってこの女の人__!

《ギルソード使い》でも何でもない()()()()だから__!


 主犯は別の場所に隠れてる、もう1人の人間だよ……!」





「へっ……!? あのぉ……どういう意味……!?」



 

 彼女は一体何を言っているのか。ラフィアスは理解が追いつかず、一瞬だが硬直していた。



 __が、それをわざわざ再確認する必要も、猶予すらもなかった。


 次の瞬間、その僅かな時の内に__


 否応なく、それを見せられたのだから__



 

「ィ"あァアァァ……!! あァ"……助げでぇ……!!」





 彼女達の足元から、女性の痛ましい断末魔が耳に響く。



 リリーナ、ラフィアス、そして武装隊の全員が、その下に横たわる女性に視線を落とすや否や__




「あァ"痛ァ"……《鎖》ぃぃ……! 刺さっ……でぇ!!」




 この女テロリストが意のままに操っていたはずの、大蛇の《鎖》、それが今は、逆に彼女自身を襲って、その身体を締め殺そうとしている。



 胴体、そこから頭部、そして身体全身を__


 その紅色に輝く《鎖》は、彼女を喰い尽くすように覆い、力強く取り巻いて、徐々に皮膚へと食い込んでは、その箇所から赤く染まる。



 その合図は、生贄の最期__



 それは瞬く速度で、その水分と血液を急激に奪っていく。




「……ぇ"……っぁ……ァ………」



 声が掠れ果てていくにつれて__


 女の頬や眼球、手脚、髪を除く身体は、枯木の如く痩せ細り、皮膚は枯れて、ただ命を吸い取られ続ける。



 2分と経たぬ間に、その身体はミイラと化して朽ち果て、すでに干乾びた心臓は動いていない__




「オイ、何が起きた……コイツもう死んでいるぞ!?」



「自害か? いや……! 《ギルソード》が所有者を……媒体を襲ったのか!? そんな馬鹿な事例が!?」




 僅か数名の兵隊達が議論を始めていたが__

 

 ただその他は、この惨たらしく異様かつ理解不能な現象を前に、周囲の一同は、驚愕のあまり思考が停止していた。




「あっ……!? えっ……!?」




 この短時間、混乱に包まれた空気の中、敵とはいえ目の前で起きた女性の悲劇に、リリーナも唖然とする他なかった。



 だが__




(そう……!? 奴等はそう出たんだ……!!)




 女性の絶命直後、冷静に状況を分析していたリリーナは、すでに敵側のあらゆる思惑に確信を見出していた。


 __そして今、この現状を招いた彼等の卑劣さには、怒りの激情が血と熱を支配し、額や頬に亀裂が走る。





「いやぁ! えぇ……? 人が……死ん……!? ひっ……嫌……人が……目の前……死ぬ……の……!


 うぅ……! ひぅ……! かはっ……ひゅ……!」




 ラフィアスの腕に抱かれるシェリーの過呼吸は、徐々に激しさを増していく。



 過去の恐怖から呼び起こす極度のストレスは、瞬く間に、かつ確実に少女の心身を破壊している。


 この症状が何よりの証拠だ__




「シェリー! シェリー大丈夫だから……! 私がついて守ってるから……ね! だから……しっかりして……!


 クソッ! どういう事態っスかこれ? 頭が混乱してヤバい! テロリストに潜入されてたし暴れられるし!


 終いには、勝手に原因不明の死を遂げやがるし!?

 もう分かんないや……! 何がなんだか……!?」





 シェリーを精一杯に宥めるも、ラフィアスは必死に冷静になろうと、状況を見渡して、思考を整理しようとする。



 まずは恐怖に苦しむ彼女を救うことが先だ。


 その為に、実力者であるリリーナの協力は必須__



 即座に顔を上げて、ラフィアスはリリーナに対し、声を荒げて要望を叫ぶも……





「リリーナ先輩! ここは一度避難しましょう! 怪我もしてるでしょ!? それに敵の正体が不明なまま深追いは……!


 ………えっ? リリーナ先輩? あの……何処へ……!?」






 つい一瞬まで、そこで凛々しく立っていたリリーナの姿が、忽然と姿を消していた。




 今そこに存在するのは、十数人の機動隊と、腕の中で震えるシェリーと、ミイラ化した女性テロリストの変死体だけ。





(……まさか先輩!? 独りで追いに行った……!?

 あの正体不明の真犯人とやらを……!? 無謀すぎる!


 あぁクソッ……! 私の《義手》が再調整中じゃなかったら、とっくに加勢してるっつーのにィ!!)





 震える少女を抱いたラフィアスは、置かれた状況の歯痒さに苛立っていた。


 とはいえ、片腕かつ丸腰の姿では戦力外。


 何よりも、今はシェリーを危険から遠ざける事が、任務の最優先事項だ。



 程なくして、「オイ君達!? 避難を急ぐぞ!」と、機動隊員から迅速な行動を促される。




 __やむを得ず、ラフィアスはリリーナの追跡を諦め、シェリーをつれて、他の避難民の元へ連れて行こうとした。




 だが、次の瞬間__


 乱れた呼吸に溺れるシェリーが、掠れた声で訴えかける。





「……ねえ、セイバーはどこ……? 近くにいるの……? ねぇセイバー? あの子を置いてかないで……?」





「だっ……大丈夫だよシェリー! セイバーなら、ほら!

 ずっとシェリーの……傍……? に………?」




 宥めながらも、今一度周囲を見渡した刹那__


 その存在が忽然と消えたことに、ラフィアスは驚愕した。

 



 いつもこの少女の傍らに寄り添って、その目の役割を果たしていた忠犬の姿が__




(っ!? どこ行ったしアイツ!? 今まで勝手にシェリーから離れたことなんてなかったのに……!?


 何よこの展開……!? 冗談でしょ……? 今からこの私にどうしろって……!?)



 ラフィアスは顔を歪めて、瞬時の判断に苦しんだ。


 

 どこかで恐れていた最悪の事態が、ここに実現してしまったのだから__





◇◇◇◇◇◇◇




「……ゼェ……ハァ……くっ……!」




 左胸を手で押さえて息を荒げながら、リリーナは高層階の非常階段を、ふらつきながら駆け上がっていた。


 


 日頃から鞭を打つリハビリで、体力はつけていたつもりだったが、退院直前とはいえ、自分はまだ怪我で入院中であることを、すっかり忘れていた。



 唐突の緊急事態だが、こんなにも激しく身体を動かしたのは、この1ヶ月の入院生活以来、今日が初めてだ。



 まだ身体が本調子ではないのか__


 心臓が痛く息苦しくなり、さらには関節や、傷の癒えていない各包帯の傷まで、じわじわと痛みだす__




(病み上がり……って自分に言い訳するの、私は嫌だけど。


 情けないな……今日ちょっと動いただけで、思ったより疲れが表れるものなんだね……!


 でも……別にどうってことはない。


 仮にこの不調が弊害だとしても……病院の人達を守る術は決まっている!


 倒さなきゃ!この先に潜伏する、本当の主犯を__!!」





 他の誰にも見えない、分からない、感じ得ない__



 リリーナの《覚醒瞳アイズ》だけに映る、無色透明の《静止状ナノマシン》と、それを肉体に隠して潜む、真の敵の姿__




 その者の元へと辿り着くために、身体の苦しさを堪えて、顔を前に上げ、非常階段の上を見上げた。



 その刹那__



 視界を襲い掛かるは、再び宙を乱れ舞う、紅の《鎖》__





「__っ!!?」


 


 はやい__



 顔面に飛び掛かる大量の《鎖》、その速度は先のそれとは打って変わったような、別物のそれ__




 狭い非常階段の足場では、これは避けきれない。



 そう判断したリリーナは、咄嗟に左手を背後の手摺りに伸ばし、土壇場の覚悟と跳躍力で__


 その身体を足場から空中へ放り投げる。




【ガコッ__! ガッ! ゴロッ__!】




 巨大な鋼鉄を砕かれ、轟音が耳を打つ__


 それと同時に、彼女が立っていた階段の足場は《鎖》に破壊されて崩れ落ちていった。




 間一髪で直撃を免れたリリーナだが、その崩れかけた鉄パイプに左腕一本で掴まった状態のまま__


 吊るされた糸繰り人形のように、彼女は地上130mの空中にて、その身体を晒されていた。




「くぅ……! ぎっ……!」



 防衛行動が故に、致し方なかったが__


 宙に放り出されたリリーナを唯一支えているのは、パイプに捕まった、その左腕だけだった。



 まだ完全に傷が癒えていないので、包帯が取れていない。



 そこへ無理に負荷をかけているので、負傷した腕の包帯が、徐々に出血の赤へと染まっていく__





「__えぇ何ぃ? 思いの外、無様な格好なんだけどぉ?


 冗談やめてくんなぁい__?


 この都市に降り立ってから、アンタの姿を四六時中観察してたってのに、がっかりさせんじゃねぇっての__!



 無様! ダッサ! きひゃひゃひゃひゃ__!!」


 


 崩れた階段の上からか、無邪気な少女の声がする。


 何事かと、リリーナが顰めた顔で見上げれば、異彩を放った面妖な黒服の長髪少女が、歪んだ笑顔で見下ろしていた。



 

 

 __155cm程度の低い身長。綺羅びやかに靡なびく、マゼンダ色のロングヘアーに相対して、闇の内面を一層と強調させた、漆黒の軍用ワンピースドレス。



 肌艶は美肌だが、異様に幼さが残る顔__


 中でも少女の際立った特色は、綺羅びやかに靡なびくマゼンダ色のロングヘアーと、妖しく輝く同色の瞳。



 戦慄を印象づける、異質極まった様相だが、その者を真犯人と断定させるには、少女はかなり幼く感じられた__





 だが、その少女の見せる瞳は、人為的異彩を放った、人間のそれではない。



 瞳の奥は白く、紅色の光沢を輝きを帯びた、人間のそれとはかけ離れた眼球は、正しく何らかの機械手術が施された《覚醒の瞳》__



 その少女の周囲に漂う大量の《鎖》は、彼女に付き従うが如く、その側に巻き付いては、離れない。





「ねぇ、名前リリーナ=フェルメール……だっけ?


 この〈新都市国家"マリューレイズ"〉で1人唯一の《ブレイン=ギルソード使い》って、アンタなんでしょ?


 同じ《能力》を宿した同類なんて、出会ったの初めて♪


 だから、私と遊んでよ__!♪

 

 この私、ゼフィーネ=クライシスとさァアハハハッ!!」





 少女ゼフィーネの発狂を合図に、周囲を覆い尽くす《鎖》が宙を疾走って、リリーナに突進する。

 

 幻想的に美しい《ナノマシン・オーラ》の光を帯びて__





 マゼンダの髪が靡く漆黒少女、ゼフィーネ=クライシス。




 彼女は狂った笑顔と、その《覚醒瞳アイズ》で__


 高所から宙吊りにされたリリーナに、容赦の欠片も知るまいと、問答無用で襲い掛かるのであった。





◇◇◇◇◇◇

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