6.月灯
「あ!」
「あ。」
声を出しながら進む。
「そっちホールがあるから気をつけて!」
「ありがとう。」
僕が少女に声をかけながら。
「そっちはかべ。」
「へぶしっ。」
少女が僕に声をかけながら。
波紋が飛び交う景色は、意外と悪いものではなかった。
先が見えなくとも、こうやって助け合って進むのは悪くない。
だけど、すぐ近くにあるかもしれない波紋をも吸い込むホールにが危なくて、気が気でなかった。
「そういやさっき暗闇になったとき、世界に情報が広がらなかった?ほら、明るいから暗いに。それならホールが消えてるはずだけど…」
「もともとほーるのまわりにはひかりがない。すいこんじゃうから。」
「なるほど。ホールからしたら何も変わってないってことか。」
進んでいるとたまに、電力を保ち続けている家や、コンビニがあった(どちらも中身はすでに空っぽで、人が何人か倒れて死んでいた。)。その地点を目印に宇宙へ、宇宙へと進む。
道中、少女にいろいろなことを聞いた。
一番最初に店に来た時のことや、ホールのこと。
少女は、見せに来たことを覚えていなかった。
じゃああれは何だったんだ?本当に幻覚?
ホールについても、最初に説明されたこと以外はあまり知らないらしい。
まあ、知らなくてもいい情報はあるってことで、諦めよう。
ちなみに少女はまだ、名前を教えてはくれなかった。
「ん?」
水平線が明るく見える。
僕は立ち止まった。
「はやく。」
一つ上の方にいる少女が急かす。
「ごめん、ちょっとまって。」
まるで日の出のようだが、太陽は消えてるし、色もなんだか冷たい。
徐々にその光の正体が顔を出し始める。
「これは…!」
それの半分が顔を出した。
銀色に輝いていて、球体で。兎が餅をついているように見える模様。
なぜ太陽がないのに輝いているのかはわからないが、そんなことはどうでもいい。
「月だ!」
白く美しい光が、暗闇の世界を優しく撫でて、ぼんやりと照らす。
ふと隣を見ると、少女が月光に目を細めていた。
実際には表情はあまり変わっていなく、無表情のように見えるが、
長い間一緒にいると何となく分かるようになるってのは本当だったんだな。
「これでみやすくなった。はやくいく。」
「わかった。じゃあ後20個登ったら休憩にしよう。」
「さんじゅっこ。」
「え〜…まあ、一刻を争うしな。でも無理はするなよ。見やすくなったって安心はできない。」
この言葉は少女にも、自分にも向けられた言葉だった。




