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緑の地球  作者: 陸うなぎ
7/7

第2章 【3】鳥さん心配…

11.

サンライトは不審に思いながらも小さな影に近づいてみると…白くてフワフワな羽毛に長い耳をした鳥が地面に這いつくばっていた。

「え、え、え、ねぇ、きみ大丈夫?どうしたの?」

小さな鳥はグッタリしていた。


「えー、こういうときどーすればいいの?アレ兄なら“食材にしよう”とか言うから論外だし。あ、でもイレビーさんなら…」

サンライトは小さな鳥を抱えて西側に走り出した。



「ちくしょー、袋破かれたから木の実を持ち歩くの一苦労だ。野良ゾンビめ…」

アレキドは文句を言いながらもやっとの思いでトゲツの家に着いた。


「トゲツさん、夜分遅くにこんばんは!」

「んぉ!?アレキド君だ。こんな時間にどうしたの?」

1人の男性が家の梁にぶら下がっていた。

青髪の短髪。垂れ目で優しい顔立ちをしており、右目下に泣きボクロがある爽やかな青年だ。


この人はトゲツさん!

空手の名家ホウリュウ家の一人息子で礼儀正しくてめっちゃ強くて…

俺が男として尊敬できるすごい人なんだ。

さっきのロリコンとは真逆かも。

ただ、背が163cmと小さいことを気にしていていつも何かにぶら下がって身長伸ばそうとしてるんだよね。


「木の実の差し入れです。たくさん食べちゃってください!あ、それと、さっき野良ゾンビに襲われて木の実を少し持ってかれちゃいましたよ」


「こんなにたくさんの食材ありがと!野良ゾンビさん、あの子も不思議な子だよ。俺の前には全然姿見せないからね」


「そりゃあ…めっちゃ強いトゲツさんから食材奪おうなんて誰も思わないですよ」


「てことは、野良ゾンビさんはアレキド君なら食材奪えるって思ったってことかな?」


「…!そっか、野良ゾンビのヤツ、俺の事ナメてるんだなぁ!まぁ実際少し盗まれちゃってるんですけど」


「ははは、なら今から一緒に修行するかい?」

爽やかで優しい笑顔でのお誘いだったが、アレキドはトゲツの修行内容が過酷な地獄コースである事を知っていた。

「せっかくですけど、今日はもう遅いし帰りますよ。サンも先に帰ってるし。トゲツさん、また今度です」

逃げるように家を飛び出してアレキドも帰路に着いた。



「(イレビーさん、今日はどこにいるんだろう?)」

小さな鳥を抱えてサンライトが探していると、少し先に屋台が出ているのをやっと見つけた。


「こんばんは、イレビーさん」

サンライトが屋台に声を掛けるが返事はない。

「イレビーさん?サンライトです」


「…あ、サンライトさんか。良かった。知らない人かと思ってすごく怖かった」

小さな声とともに、屋台の隅から小柄な女性が出てきた。

ボーイッシュで黄色髪のベリーショートヘアに赤いカチューシャを付けたコックさんのような服を着ている女性。


「イレビーさん、この子のこと診てあげてくれませんか?」

サンライトはイレビーに小鳥を差し出した。




12.

「あらあら、どうしたのかしら?」


相変わらずイレビーの声は蚊の鳴くように小さい。

でも、サンライトが連れてきた小鳥らしき生き物を見た途端、イレビーは目の色を変えて真剣にその小鳥を受け取って観察を始めた。


「この子は見たことがあるわ。薬草を取りを行った時に見たのよね、この種類の子たち」


そう気軽に言うものの、どうやってイレビーが一人で薬草を取りに行っているのか、サンライトもアレキドもさっぱり分からなかった。


こんなにか弱そうで、気弱そう(失礼、とサンライトは思ったが)なイレビーが薬草をどこからともなく取ってきては、希少な薬を開発している。

サンライトもアレキドも、こっそり、実は魔法を使えるんじゃないかと噂している。


アレキドが片腕を無くした時も、サンライトは、イレビーに頼み込んで薬の作り方や薬草の見分け方を沢山勉強した。

そのおかげで、大分知識も得たし、イレビーの超絶人見知りな性格にも多少は警戒心を解いて接してもらえるようになっているのだ。


「衰弱してるわ、多分、脱水症状だと思うの。水を与えて、少し休ませないと。この子は夜行性の子ね」


イレビーは、テキパキと柔らかい草で動物のベッドを簡易的に作ると、そこへ小鳥を寝かせた。

耳の長い小鳥は、ぐったりしているが、さっきの過酷な砂漠地帯から柔らかい草の上に寝かされて、心なしか表情が穏やかになっているように見える。


「この子、私が預かるね、いいかしら?水分を与えて、元気になったら少しずつ食べ物を与えたら回復すると思うの」


イレビーの前向きな言葉に、サンライトも心から安堵して答える。


「ああ、本当によかった!助かりそうなんだね!!うちのアレ兄に言おうものなら焼いてご馳走の1品に加えられちゃうもん。イレビーさんの所へ連れてきて正解だったー!じゃあ、この子のこと、宜しくです」


「分かったわ、しばらくは私の薬草を作る所でいるから、もし何かあったらそこへ来てね」


「ありがとうイレビーさん、じゃあ、そろそろ暗くなるから、家へ帰るよ、またね」


サンライトはお別れの挨拶をすると、イレビーの所へ来る時とは正反対に気持ちも軽く家へと今度こそ帰り道を辿ったのだった。


家に帰宅しながらサンライトはふと思う。


あの子、家族はどうしたのかな?一人だけだったけど、治ったら家族を見つけて返してあげなきゃな·····と。


そんな事を思っていると、家で待つ家族の事が思い浮かんだ。


そうだ、今日はご馳走だ!

取ってきた木の実で沢山美味しいものをママが作ってくれてるはず!


今夜のご馳走の事を考えるサンライトの足取りは自然と浮き足立って速くなって行ったのだった。




13.

「ただいま」

サンライトが家に入ると、一足先に帰っていたアレキドは安堵した表情をみせた。


「おかえり、サン。どこ行ってたの?あんなにロリコンを嫌ってダッシュで逃げていったのに、俺より帰りが遅いから何かあったかと思ってこれから探しに行こうとしてたよ」


「ごめんね、行き倒れの小鳥拾っちゃって…放っておけないからイレビーさんのところに預けてきたの」


「小鳥!?もったいない!せっかくの鶏肉が〜」


「絶対そう言うと思った」

サンライトは苦笑いをした。



「サンおかえりなさい。早く席に着いて、パパも2人の帰りをずっと心配しながら待ってたのよ」

綺麗な声が後ろから飛んできた。


私たちのママ、ミラプ。

私とアレ兄に天使のように優しいママ。

ママがいなかったらパパと気まずくなっちゃうから、家には絶対不可欠な存在なの。


「別に俺は心配してないけどな」

今度は威圧的な重音のような言葉が飛んできた。


俺たちの父さん、シンネ。

あれから5年経っているとはいえ、正直、腕を切り落とされた恐怖感が今だに消えないよね。

無口で何を考えているか分からないから、俺たちは気まずいんだぞ。



「アレ、サン、ありがとね。今日は2人が木の実たくさん拾ってきてくれたからご馳走よ」

「やったー、母さんありがとう」

家の外では気持ちが張っている分、母親と話しているときが双子にとっては安心できる癒しの時間だった。


「(何故だ?なんで子供たちは妻には優しく話せて俺に対してだけそんな風に笑いかけてくれないんだ??)」

妻と子供たちが楽しそうに食卓を囲む風景に自分だけ取り残されたような寂しさと疑問を感じる父親シンネ。

そう…彼は不器用なだけで本当は家族思いで、実は自分も家族みんなで仲良く話したい気持ちがあるのだ。


コソコソ。

「(おい、サン。また父さんが無言でジーッと俺たちを睨んでいるぞ。あんまり食事中に話しちゃいけないんだよ)」

コソコソ。

「(本当だ…でも、パパに何を話していいか分からないし、怒られるかもしれないから静かにしておこっか)」


シーーーン…


「(この重苦しい空気感、もしかして俺が悪いのか?)」

シンネは今日も年頃の双子との気持ちのすれ違いで翻弄されてしまうのだった。


「あ、そうだ!さっきトゲツさんのところにも木の実持って行ったんだよ」


ガタッ

「…トゲツ君、今日もカッコよかった?」

椅子を乗り出してミラプは笑顔で訊いてきた。

母、ミラプはトゲツの大ファンでミーハー追っかけヲタクなのだ。



ガタンッ

「母さん、明日俺はトゲツ君に決闘を申し込もうと思う」

妻を盗られまいとトゲツをライバル視しているシンネが椅子から飛び上がり、唐突な宣戦布告を宣言した。


「あなた、静かに座ってて」

ミラプの低音ボイスにシンネはすぐに従って着席した。

サンライトが本当に嫌な時に低音ボイスになるのは母親譲りの遺伝であった。


コソコソコソコソ

「(おい、サン!なんで父さんは急にトゲツさんと戦う宣言をしたんだ?)」

コソコソコソコソ

「(パパの考えていることなんてわかんないよ。アレ兄、とりあえずそこには触れないでおこう)」


シーーーン…


「(この重苦しい空気、俺のせいなのか?)」

シンネは今夜も誤解されて1日を終えることとなった。




14.

そんなやや気まずいながらも、美味しいミラプのご馳走を堪能したサンライトは、その日ソワソワしながら寝床についた。


家族の寝息を聞きながら考える。


(あの子、大丈夫かな?イレビーさんに任せてきたから大丈夫だとは思うけど、あんなに弱ってたし、もし衰弱していったらどうしよう·····)


そんな事が頭に思い浮かぶ度サンライトは頭をブンブンと横に振って、嫌な思考を追い払った。


(大丈夫だよね、明日イレビーさんのとこに朝一で寄ってみよう)


そう思いつつ、嫌なこと繋がりで、ジュウジャの顔が思い浮かんでしまう。


(うわっ、やな奴の顔が思い浮かんだ。本当気持ち悪い人よね、私が嫌がってるの分からないのかな?心配してくれてるのかもしれないけどありがた迷惑というか·····)


毎回ジュウジャのとこに行こうとアレキドに頼みこまれて仕方なく行っているが、もういい加減行きたくない、とサンライトはため息をついた。

でも、アレ兄には強い武器を作ってもらわないと困るし·····

ふわぁぁ


そんな事を考えているうちに、サンライトの瞼は重くなり、いつの間にか意識は夢の中に入っていったのだった。


次の日、サンライトは、朝の日課である洗濯を干して、食事の手伝いをすると、そそくさと家を出た。

一刻も早くイレビーの所にいる小鳥の様子を知りたかったからだ。


イレビーが当分家にいると言ってくれて助かった、とサンライトは思う。

出店にいたり、人の家に治療しに行ってたり、森にいたり、イレビーがどこにいるのか大抵は不明だったからだ。


「イレビーさん、お邪魔します」


サンライトがイレビーの家ののれんをくぐって挨拶をすると、イレビーは一瞬ビクッとなって、入り口の方を見た。


「ああっ、サンライトさんっ、ビックリしたっ、誰かと思って緊張しちゃった」


イレビーは相変わらず蚊の鳴くような小さな声でサンライトに言う。


「昨日の子、木の実は食べてくれなくて。もしかして肉食かもしれない。木の中に住むワームを潰してペースト状にしたら食べたわ」


「わ、わわわわワーム?!!」


サンライトは、ワームという言葉を聞いて青ざめた。

木々の幹の隙間や、樹皮の間にウネウネとした白い細長い虫が生息している。


それを取って食べる大人もいるが、サンライトはどーしても見た目が受け付けず口にしたことは無かった。


父親はたまに取ってきて食べるよう勧めるが、他の家族は断固として拒否していた。


イレビーからはそのワームも薬などに効くと聞いていたので、本当に非常時は取りに行くが、普段は滅多に近寄ることはなかった。


そのワームを小鳥が食べると聞いて、サンライトは激しいショックを受けていた。


「ワームって、それ、イレビーさんが潰したの?!」


サンライトの声も思わず大きくなる。

イレビーは当然のように頷いた。


「それはそうよ、じゃなきゃこの子が死んじゃう」


「そ、それは·····そうだね」


サンライトもそれを聞いて反省した。

この小鳥の為なら、頑張ってワームも取りに行ける·····かもしれない。すごく頑張らないと無理かもだけど。


「大丈夫、まだ当分間に合うくらいワームは取ってあるから」


サンライトの葛藤を知ってか知らずか、イレビーはニッコリ笑って言う。


「良かった、イレビーさん、手間かけさせてごめんね」


そう言いながら、サンライトは昨日より明らかに元気になって、羽の毛づくろいをしている小鳥を見てホッと安心のため息をついたのだった。


それから何日かすると、耳の長い小鳥はすっかり元気になって、羽ばたいてイレビーの家の中を飛び回れるまでになって行った。




15.

それからサンライトは毎朝イレビーの家に行き、日増しに元気になる小鳥と戯れるのが楽しみになっていた。

小鳥もどんどんサンライトに懐いて楽しそうに遊んでいた。

サンライトが家にお邪魔する度にイレビーは相変わらずビクついていた。



「あの、サンライトさん、お話が」

「…はい?」

イレビーの小さな声に耳を傾けた。


「この子の今後のことで。もう元気になったみたいだけど、私が前に見たときは群れで暮らしていたの。自然に帰すにしても、この子だけでやっていけるかどうか…それかサンライトさんが育ててあげるかなんだけど…」


「育てるとしたら、私がワームを取ってくるってことですよね?」

サンライトの声が一気に低音ボイスになった。


「もし家族と離れ離れになっちゃっているなら、家族や仲間を探してあげなきゃいけないなって私は思うの」

少しだけイレビーの声が大きくなった。


「そうですよね…家に帰ってアレ兄にも話してみます。(もしアレ兄に話したら明日にでもこの子とバイバイになっちゃうかも…話すのはもう少し経ってからにしたいな)」

サンライトは小鳥とお別れになってしまうことに悲しさを感じていたが、そんなこととは知らずに小鳥はサンライトの肩にとまって元気に鳴いている。



「………」

「…?」

自分を見つめるイレビーの優しい眼差しにサンライトは気付いた。


「イレビーさん?どうしました?」

「あ、ごめんね。親友を思い出しちゃって…サンライトさんそっくりだから。こうやってサンライトさんとお話をしていると昔に戻ったみたいで懐かしい気持ちになっちゃうの」

「その親友さんとは会ってないんですか?」

「10年以上前に亡くなったからね」

「あぁっ、本当にごめんなさい!!」

「謝らないでいいのよ。サンライトさんなら普通にお話出来るからいつでも遊びに来てね」



〜その頃〜

「おかしい。最近、おかしいぞ」

アレキドは毎朝嬉しそうに一人でどこかに行ってしまう妹に違和感を覚えていた。

「(絶対におかしい!これはきっと…)」


「お義兄様もそう思うかい?」

「うわっ!ロリっ、、、ジュウジャさんいつの間に…てか、なんで真後ろに居るの!?」

「嫁のいる所には旦那がいるものだ。それより…俺もお義兄様と全く同じことを考えていたよ。ズバリ嫁は不倫をしている!」


「…はぁぁぁ?」

「見てないのかい?嫁の表情を!あの顔は“恋する乙女”の顔だった…俺はショックを隠しきれなぁい!!」


「いやいや絶対違いますって。サンのやつ、きっと俺に内緒で一人で何か美味しい物を食べてるんだ」

「…アレキド君、少し乙女心の勉強をしよう。モテないぞ、このままじゃ」

「(アンタにだけは言われたくないわ)」



そんなやり取りをしつつ、明日の朝、何故か俺はロリコンと一緒にサンを尾行することになってしまったぞ。


ロリコンは「不倫相手を倒す」とか意味不明なことを叫んでいたけど。

不倫は絶対に無いとして…てか、サンはロリコンの嫁じゃないし、そもそも不倫じゃないんだけど、というかそんなことは別にどうでもいいとして…


美味しい物を独り占めすることだけは兄として許せないぞ!!!

明日の朝は美味しい物を食べている現場をおさえて、サンに“半分こ”してもらうんだ。




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