151 生命の叫び (改訂-5)
【生命の叫び】をお送りします。
宜しくお願いします。
魔導電磁加速粒子砲から発射された実弾は、亜光速で、仲間の騎士達の間をすり抜けて、虚なる神の円形に連結された魔導縮退炉の中心に着弾した。そこで砕け散った術式阻害結晶体が魔導回路を寸断破壊した!
「命中! 」
ビリーは更にビーム弾を連続でヒットさせてゆく。本来は一瞬で再生するが、再生速度が見るからに遅くなっている。
「確実に、効いてるだなや! 」
「一気に畳みかけろ! 」
総司が吠える! 神速の連撃で虚なる神の翼を切り裂いた! 入れ替わる様にウィリアムが足を下から斬り上げる。 たまらず下がる神を小次郎が追い討ちをかけて左腕を斬り飛ばす!
だが虚なる神は、失った部分に天使を融合させてパーツを再構築する。
「くそ! 切りが無いな! 」
ジャンヌが自己の神霊力の回復の為、主に祈りを捧げる。その時、虚なる神の足元に青白く輝く五芒星の魔法陣が展開され、天使が融合するのを阻害する。
「遅くなりました! 」
晴明が転移魔法で跳躍してきた。
「おせいぞ! 晴明! 」
ビリーはやけに晴明には厳しい。
「またまた! そんなに寂しがり屋さんなんですね」
右手で印を素早く結びながらそんな事を言う。
「オーガの餌にするぞ! 」
悪態をつきながらも的確に虚なる神を狙撃していく。
「オーガや、ミノタウロス……マンティコアまで天使を攻撃している……本能的に何が敵なのかをわかっているのですね」
「だが次元バーストとかいうのが、どんな攻撃かわからんが、このままでは皆に被害がでるぞな」
マーリンが無詠唱の爆裂魔法で天使を攻撃しながら、晴明に問いかける。
「私達で神を中心に広域結界をつくって、被害が外に出ない様にしますか? 」
「それしか無いじゃろな。妾の魔導結界とそなたの陰陽結界の合体技じゃ! ぬかるなよ! 」
マーリンと晴明とが同時に詠唱を始めた。
◆◇◆
「魔導回路を寸断したか……無駄な事を……次元バーストなど使用させん」
時貞の胸から大きな書物が迫り出してくる。宙に浮いたそれは自らページをめくり出す。それと同時に時貞は詠唱を始めた。
「ヘブライ語?! 黒魔術言語か? 」
ヒロトは左手で印を結びながら、右手で空中にルーン文字を刻んだ。その文字が強い緑色の輝きを放ち、時貞に向かって飛ぶ! 時貞の手前で連続炸裂した!
「その様な術は効かぬと言った筈だ」
時貞の本が輝きだす。
「この本は、法の書と言う。我がアレイスターと呼ばれていた頃に、アイワスと呼称する外宇宙から来た知的エネルギー生命体より授かった知識を纏めた魔導書だ」
法の書が輝きはじめ、本のページから靄のような物が湧き出してくる。その途端、虚なる神の魔導回路が急速に修復されてゆく。そしてそのページから一振りの剣が迫り出して来た。赤黒く光その剣からは禍々しい妖気が立ち登る。
「法の剣の一撃を受けてみよ! 」
時貞が片手でその剣を振り切る! 真っ赤な閃光が皆を襲った!
「ぐぅぅ! なんとととと!!!! 」
ヒロトが右手の剣を前に突き出して、障壁を展開し、その莫大な衝撃に耐える! だが武蔵と九郎は耐えきれずに吹き飛ばされた!
ヒロトを中心にして、空間に揺らぎが生じていた。
「…….これは虚なる神の超新星と同じ攻撃だ。よく耐えた。褒めてやるぞ」
◆◇◆
アヴァロンの艦橋では次元バーストの最終シークエンスに突入していた。エレクトラの古代アリストラスの儀式術式にて最終プロテクトを解除し始めていた。
「……アルナロス アルカナ リア エフェクトリア 我、アリストラスの正当なる預言者の王。クエルクロアルサ ライドル 我が声を聞け! 」
アヴァロンの前方部が四つに分かれ開いてゆく。そこに強烈なエネルギーを内包した黒い球体が発生し始める。アヴァロンを旋回させて、ジークフリードは虚なる神と、アヴァロンとの距離をとった。
「虚なる神の魔導回路が修復されていきます。このままでは、奴の攻撃の方が早い! 」
奴の超新星攻撃はアヴァロンの超電磁バリアを突き抜けてダメージが届き、それが思いの外酷い。
虚なる神が六枚の翼を広げて、神霊力を圧縮していく。
『……ダークマター圧縮九十八%、カウント参……弐……壱、発射』
ヒロトは時貞の強烈な攻撃に耐えながらカウントを取っていた。衛星軌道上の戦闘衛星アルテミスから圧縮されたダークマターのエネルギー奔流が一気に発射され、虚なる神の真上から直撃した!
【生命の叫び】をお送りしました。
(映画 TAXIを観ながら)