152 散りゆく魂 (改訂-5)
【散りゆく魂】をお送りします。
宜しくお願いします。
アーサー王は何処で治世を誤ったのか……
民草の為に全てを投げ打って尽くして来た……
その為に、血みどろの道を歩き、全ての穢れをその身に受けた。
その生真面目さが、反乱を誘発し、国土が荒れる原因になったのか? 我を信じてついて来てくれた円卓の騎士達だけでも……
虚なる神は、衛星軌道上からのダークマターによる攻撃を受け、沈黙した。原初から宇宙に存在するエネルギーを、攻撃兵器に転用した凄まじい攻撃。だが、沈黙したのも束の間、また虚なる神は再生を始める。
「……今の攻撃はヒロト殿の術だな。だがまだ時間が足りない……ウィリアム殿、小次郎殿…… 」
アーサー王は2人に目配せする。その刹那の時間で二人は全て理解した。そしてこの御仁であるならばと納得した。
「心得た。我らが道をつくる! 」
ウィリアムと小次郎は刀身に神霊力を流し込む。
「……みんな、何を言って? なんなのさ? 」
総司は呆然とアーサーを見つめる。
「私には頃合いと言う事さ。世話になったな総司殿」
「ばば馬鹿な! 何を?! 現世に円卓の騎士と戻るんじゃなかったのですか?? 」
「……我が息子モードレッドに身体を貫かれた瞬間、このアリストラスに召喚されたのです。戻ってもすぐに死が待っているだけです」
「……なら何のために戻るつもりだったのさ? 」
「最後にもう一度、息子に会いたかったと言えば、笑うかい? 」
「そんな……」
「だが、この状況では出し惜しみして何とかなるとは思えない。もう私は十分生き、そして考える時間があった。良き王にはなれなかったが、私は自分の子を信じている。彼奴なら必ず暗闇から脱して世界を正しく導いて行ける」
「……マーリンは? 」
「……あの人は強い。大丈夫さ! もう話しは終わりだ、活路を開け、少年! 」
「……少年は心外ですが……ならば来世で会いましょう! 」
総司は愛刀【菊一文字】に込めた神霊力を解放して虚なる神に向かって走る。
◆◇◆
「次元バースト、臨界まであと百秒! 」
フェルミナは次元バーストの最終シークエンス・カウンターを凝視しながら叫ぶ。
「偽神の野郎が動きだすぞ! 」
エルトリアも叫ぶ。その時艦橋にグラウスが入ってきた。ナターシャに肩を支えられている。
「艦長?! 」
「俺は大丈夫だ。それよりアーサーが何かするぞ?! 」
「……クライアス、ザナダラス、我が名を持って命じる! その真なる姿を顕現せよ! 」
エクスカリバーがいつもと違い、紫色に輝きだす。
「?! アーサー?! 何をする気じゃ? それは聖剣EXカリバー・カリバーンの封印かえ??! 息子に会いたいのでは無いのか?! 」
マーリンは直ぐに悟る。もう戻る気が無いのだと。
『その剣を息子に渡すのでは無いのかえ?! 』
マーリンは念話でアーサー王に呼びかける。
『……師よ! それは貴女にお任せします。蓄積されたカリバーンの魔力が解放されました。もうお別れです』
『……わかった! 必ず渡すぞ! 必ずじゃ! 』
アーサー王は一気に聖剣EXカリバー・カリバーンの魔力を解放し、己が神霊力と魔力を直接混ぜ合わせた一撃を虚なる神に浴びせた!! それと同時に自身の身体と魂は分解され、天に登っていった。
虚なる神はアーサー王の一撃で、魔導回路を更に傷つけた。連結した八つの魔導縮退炉の一部が停止する。遅れて爆風と衝撃波が周囲に、広がっていった。
「……アーサー王よ、流石は初代ブリテン王だ。貴様の生き様、確かに見届けたぞ! 射線軸固定、次元バースト発射!! 」
グラウスがトリガーをエルトリアから受け取り、次元バーストを発動した! 虚数空間へ続く圧縮された特異点その物と言えるエネルギーを虚なる神に向けて発射した。
「晴明、次元断層が広がるのを防ぐぞよ! 押し返せ! 」
マーリンと晴明の合体結界魔法が同時に発動した。次元バーストが直撃した虚なる神の周辺を広域結界で覆うようにし、次元断層が広がるのを防ぐ。
「……ぅぐぐっぐぐぐ!! いかん! もたんぞ! 」
「……マーリン殿……私が陰と陽、両方の陰陽結界を張ります」
「……晴明?! なにを言っておる? そんな事をすれば、其方の霊性が崩壊するぞ?! 」
「良いのです。ほらこの通り……」
晴明の身体は既に崩壊が始まっていた。
「……なに言ってんだよ?! 晴明?! 現世で子供達に学問を教えるんだとかいってただなや?? 」
ビリーは、なにを言ってるんだと言う顔で晴明を責めた。
マーリンもジャンヌも心のなかで泣いた。もう時間切れなのだ。
「……既に私の霊性には亀裂が入っています。生還する確率はほぼ零ですので……二人で時計塔の迷宮に入ってみたかったですね。ツンデレな感じで! 」
既に晴明の下半身は分子崩壊していた。
「……ああ、てめーなんかと潜ったら、迷子になるって言ったろーがよ! ふざけんなよ、この!! 」
「……人の光が見え……ますよ……」
消え去った晴明の身体から桜の花びらが散った様な気がした。
【散りゆく魂】をお送りしました。
(映画 タイタニックを観ながら)




