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130 ロケットパンチ……そして、 (改訂-5)

【ロケットパンチ】をお送りします。


宜しくお願いします!

 魔物が駆逐されたフロアは、静寂に満ちていた。

 

 迷宮内では昼夜の感覚もおかしくなる


 武蔵とドワーフのバロフは酒盛りを始めている。無理矢理ジレやビリーも参加させられているが、満更でも無さそうだ。ヒロトは召喚者全員に対して手紙を残すことにした。アーサー王が言う様に、現世に戻ったら記憶を無くすかもしれない。装備一式ごとこの世界に召喚されたのなら、手紙も持って行けるかも知らない。クレオパトラはヒロトにくっつくリプリスを見咎めて、食ってかかった。女同士の駆け引きが始まっている。



「モテモテじゃなヒロト」



「すみません……」

ヒロトとマーリンはテントの中で、アーサー王から貰った編成案の調整を行なっていた。



「責めてなどおらん。英雄色を好むとかなんとか、確かボナパルトの言葉じゃったかな? 」



「うっ……」

 マーリンのネチネチ攻撃だ。ときどきエスっ気がある様な気がする。



「ま不味いよマーリン……」

 マーリンはヒロトの身体にベタベタし始めた。そこへクレオパトラとリプリスがはいってくる。



「ご主人様! ずるいです〜」

 リプリスはヒロトを押し倒して左胸に抱きついた。



「マーリン! ここまで来たら抜け駆けなしじゃろ! 」

 クレオパトラは右胸に抱きつく。

 


 二人を見てもマーリンは嫌がらない。もう次はどうなるかもわからないからだ。現世に戻って離れ離れになるかもしれないし、死ぬかもしれない。クレオパトラや、ボナパルトの話しでは、前回の災厄の渦よりも出現するモンスターが強力になっていると言う。確かにまだ第十階層だが、編成を変える必要に迫られている。そして、もう一つの気がかりがヒロトにはあった。


(…….俺はフルダイブ中のVRMMORPGファイヤーグランドラインをプレイ中にこの世界に召喚された……装備もそのままだった……ならそのゲーム世界に入っていた実際の俺の身体はどうなっている?……もし意識だけが、この世界に飛ばされていたら……)

 ヒロトの背中に冷たいものが走る。今更考えても仕方が無いが……





◆◇◆





翌朝、グラウスから部隊の再編成が告げられた。


【先行部隊】

ヒロト

アンブローズ・マーリン

セネカ

ジャンヌ・ダルク

沖田総司


【主力部隊】

グラウス

アーサー王

クレオパトラ

エレクトラ

宮本武蔵

佐々木小次郎

源九郎判官義経

ウィリアム

ビリー

安倍晴明


【補給部隊】

ライラ

メイデル

ジレ

ルナール

リプリス

バロフ

ヴァルフ

円卓の騎士


 先行部隊と主力部隊の戦力をその都度入れ替えながら進む事となった。30分毎に各部隊は出発する。これは一度に全滅する事態を防ぐ為だ。

 ヒロト達は先行して、各階層を次々とクリアしていった。

第二十九階層のヒドラを打ち倒し、次の拠点設営予定の第三十階層を進む。気味が悪いぐらいの静けさだ。



「ここが、この階層の最終エリアだな」



 ヒロトと総司はゆっくりと扉を押し開いてゆく。カビ臭い匂いが吹き付けてくるが、それに混じってもっと別の悪臭が漂う。



「階層主が居るぞ……照明を! 」

 ヒロトがそう言うと、マーリンが魔法の光を灯す。

 元は大理石の様な壁や天井だったのだろうが、長い年月のせいか、苔がびっしりと生えている。



「中心に何かある? 」

 セネカが目を凝らすと、巨大な部屋の中心部分にこれも巨大な人影が座っている……ように見える。



「なんか動き出しますよ! 」



 総司がそう言って身構えた。

 その人影から苔の塊が次々と剥がれ落ちると銀色に光輝くその身体が軋みながら立ち上がった。モーターの駆動音が聞こえる、



「機械人形?! 」

 体長五メルデはある巨大な機械の体躯を起き上がらせる。



「こいつも、あの機械蜘蛛と同じか?! 」

 セネカも背中から二本の戦斧を取り外して身構えた。



 AS-0560 魔導陸戦自律兵器【十式】レベル125



 二本足で自律歩行するそれは、超重量の体躯をゆっくりと前進させてくる。両腕を平行に上げてきた!



「来るぞ!! 」



 魔導兵器の腕の付け根にルーン文字が浮かび上がり、なんと腕その物が総司に向かって発射された!! 神速の動きで、なんとか交わすが、すぐに追跡してくる。



「ロケットパンチ!? スーパーロボットかよ? 」

 昔みたアニメの主人公が乗るロボットみたいな攻撃だとヒロトは一瞬考えたが、それどころでは無い。かわしながら、総司が一撃を喰らわせたが、軌道が変わったぐらいで、傷もつかない。



「あれは、装甲を構成する分子自体の時が止まっていると、グラウスが言っておったぞ! 」





◆◇◆





 東京都 市ヶ谷防衛軍特殊作戦群司令部

 

 海外からの軍の要人を招く為のVIPルーム。その部屋の巨大な大理石のテーブルに両足を乗せた女が、目の前のドイツから来た男を睨みつける。男はどこ吹く風と意に介さない。


「……てめ〜が、表に出てくるって〜事は、相当ヤバいな、これ…バチカンがよく許したな……」

 咥えタバコの女は天井を見つめ、タバコの煙と一緒に溜息をついた。



「枢機卿は次の教皇選出戦に華を添えたいお考えの様ですね。まあ、私は報酬さえ頂ければ、宇宙だろうが、異世界だろうが、それこそ地獄でも、ね」



「流石、化け物じみた力をお持ちの千場慶次(センバケイジ)だな……他にもお付きの連中か……」



「彼らは私の雇い主です。日本の魔導組織【土御門一門】の高弟です」



「どうでもいいさ……俺の仕事の邪魔はするなよ。あと、そっちの内調の女もな! 」

 ミカエラ・レッドフィールドは壁に持たれかかる日本人に視線を投げかける。



「……それはこっちの台詞だ。私の部隊の邪魔はするなよ。ネットワークに繋がれて居ない者は、背後から撃たれる覚悟をしろ」

 東堂詩織(トウドウシオリ)はニヤリと笑みを浮かべた。



【ロケットパンチ】をお送りしました。

敵もどんどんデタラメに強くなっていきます。

(映画 シャッターアイランドを観ながら)

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