閑話:イルの過去Ⅱ
昔々のお話です。
大陸がまだすべてつながっていた時のことです。
この大陸には大国がありました。
すべての人々が豊穣の加護をその身に宿し栄華を極めた王国がありました。
王宮は黄金で作られており何もかもが純金で作られていた金色の国がありました。
誰もが幸せに生きていた時にどこからか時の圧縮があったようです。
世界の改変とも言われる時の圧縮はいつどこで行われるか分からずその驚異は大変なものです。
時の圧縮で大陸の北部が水と化し人々は恐怖した。
大陸中の人がありとあらゆる方法を使って時の圧縮に対しての対策を取った。
そうしてできたのが1つの小瓶に入る程度の液体だ。
この液体を飲み自我を保ったままオードになることで時の圧縮を制御するという物だ。
大陸中の魔法使いが王都に集まり小瓶に自分の限界まで魔力を注ぎ込む。
しかし半年たっても一年たっても何人きても何万人来ても魔力が満ちることはありませんでした。
製作者の1人が言いました。
「古書の力が必要です、彼の者なら原因がわかるでしょう」
王は隠居している古書を呼びつけ聞きました。
「お前はこれに魔力が満ちない理由は知っているか?」と。
古書の男は言いました。
「はい、王様。私は知っています。それは私たちの一族でしか作れないものだからです」
謁見の間の音が死に、次に罵声が飛び交った。
罵声が飛び交う中で古書の男は王の目を見て言った。
「私の血を媒介にして魔力を通さないとそれは満ちる物ではないのです」
私は小瓶を持ち自分の手を切り小瓶に血を入れていく。
一滴、二滴、三滴。赤い血が小瓶の色を侵食し変化させていく。
青色の液体が朱色に染まり白光しだしていく。
光が収まると小瓶の中には赤色の結晶体が1つだけ残っていた。
「ご覧下さい、こちらが完成品です。」
私は控えの者に小瓶を渡しその場を去った。
謁見の間を出て空を駆け家に戻る。
必要な物をカバンに詰め込み家を焼き払い私は旅に出た。
挨拶もなしに去ったため無礼打ちにされたり今回の一件で王家への忠誠を強要されたら困るからだ。
「しかしこの髪は目立ちすぎる、どうにかしないと…」
私は空を駆けながら考える。
「まぁ独り身なんだから別にいいかな」
鳥が飛んでるのを横目で見ながらつぶやく。
「君はこの大空を自由に飛べる翼があっていいね」