4章 二人での戦い
「行け」
男が命令すると狼が僕達に向かってきた。狼は二列に分かれ襲いかかってくるがジクハさんは軽く流して防ぐ。その瞬間に僕が剣を斬りつけるという即席の連携で、すぐに数が減っていく。
「このまま一気に行く」
僕は男が一人になっていると気付き、男に向かって走りだした。
「オル君。罠だ!」
男はにやりと笑った。急に狼が僕の左右から現れ、襲いかかってきた。しまった油断した。
「オルは左!」
急に甲高い声が聞こえ、僕は指示通り狼を斬りつける。右側の狼は、後ろから飛んできた弓が当たり吹き飛んだ。
「よくできました」
「ディミなんで来たんだ!」
ディミが駆け寄って来て弓を構える。
「オルが心配だからよ。援護は任せてよ」
僕は男に剣を向ける。ジクハさんも横に着く。
「いいコンビじゃないか」
「ただの幼馴染ですよ」
パチパチパチパチ、敵の後ろから拍手する音が聞こえてきた。
「ダルクさん。回収できましたか?」
男の後ろから現れたダルクさんは、以前の人間の姿だった。
「できましたよ。もうここです」
ダルクさんは胸を指差し、こちらに向き直り優雅にお辞儀をする。
「皆さん。こんにちは」
ジクハさんは身を低くして身構える。
「ダルクお前!」
ジクハさんは声を荒げる。
「ジクハ、あなたに用事はありません。オル君」
ダルクさんの鋭い目が僕を見つめる。
「もう一度聞きます。私と共に来ませんか?」
ダルクさんは僕にもう一度誘いかける。
「力を求めませんか?何のための力ですか」
ダルクさんは手をこちらに出す。
「私はあなたを気に入ったんです。ユークの様に死なせたくない!」
ユークって確か、ガントフォレストで死んだ人の名だよな?どういう事だ。どうして僕をこんなに誘うんだ?
「オル、聞いちゃ駄目」
ディミの聞き慣れたが声が聞こえ、僕は一回深呼吸し、ダルクさんを睨みつける。
「仕方ない。力こそ全てだと分からせる必要があリますね」
ダルクさんの目は赤く光り、体が鱗に覆われていく。動きはどこかぬるりと動き始め、以前戦った時より蛇の魔物に近くなっている。
「どうだ。この姿すごいだろ!」
以前と同様で、口調すらも変わっている。
「お前はジクハの相手でもしてろ」
狼使いの男は頷くと手首をジクハさんに向けた。残っていた狼達が、一斉にジクハさんに向かって走り出した。
「済まないオル君。一回距離を取る」
ジクハさんは、横に走り出した。
「ダルクさん、どうしてこんな事をするんですか?」
僕の問いにダルクさんは、鼻で笑った。
「どうしてだと、力がいるからだよ。力さえあればユークも死なずにすんだんだ」
「ユークさんの事は、私も聞いたよ。でもそれとこれとは、別の事じゃない」
ディミが弓を構える。
「だからなんだ、力がないことには変わりないだろう?」
ぬるりと滑り、一瞬で僕の後ろにいるディミの側に現れた。
「え!」
「ほら」
ダルクさんは剣を振り下ろす。僕はなんとかディミの側に駆け寄り、防ぐことができた。
「よくできたな」
ダルクさんは、シュルリと後ろに飛んだ。
「やはり、お前には才能がある、お前のようなやつを殺したくない。ユークの二の舞いにしたくない」
また誘われた。なんでだ?
「あいつは夢を持って仕事をしていた。なのになんであいつは死んだ!力がないからだ!」
ダルクさんはシュルリと僕の背後に回った。僕は振り払う。ダルクさんはまたぬるりと遠ざかる。
「俺はお前をあいつのようにしたくない」
「そしたら、他の人が犠牲になるのはいいってこと」
ダルクさんの横を、弓矢が飛んでくる。
「あぁ、そうなるね」
ダルクさんはディミの問いに不気味に笑って答えた。
次はどこに攻撃してくる?ダルクさんの攻撃はどこからしてくるか分からない。僕が作る盾じゃ大きすぎるし、出すのも遅い。僕の剣じゃいつまで持つか分からない。
「もう、面倒だな。後で説得するか」
ダルクさんは剣を鞘に収めたかと思うと、その場から消えた。
辺りを見渡すがわからない。
ザスと弓が折れた音が聞こえた。
「ディミ!」
ディミは弓を犠牲にして、ダルクさんの爪の致命傷は防いだが、腕に傷を負ってしまった。僕が駆けつけると、ダルクさんは距離をとる。
「どうした?」
腕の傷はかすり傷程度だがディミが片膝を突いた。
「どうやら、毒みたい」
「さすが薬師だな。くらっただけで分かるか」
ダルクさんは感心した声を出す。
「今度はオル君、君の番だ」
魔物の大群を見つめるパイルクだったが、急にふっと魔物の姿が消えた。見間違いなのかと何回か目をこすってみたが、間違いなく消えていた。
「パイルクさん。誰かが走ってきます」
兵士の一人が指を指した。パイルクはにやりと笑う。
「あいつか」
猛スピードでやってくる人影に、身構える兵士だがパイルクは手を上げて静止した。人影はあっという間にやってきた。
「ヴィンセントどういうからくりだ?」
汗一つ流れていない男が涼しい顔で答える。
「マスター、あれは魔法による幻影ですよ」
「魔法だと?」
パイルクが知っている幻影魔法は難しく、一匹二匹出すのがやっとの魔法のはずだ。
「これが、あいつのダルクの研究結果です」
「何!」
パイルクは拳を握りしめた。
「それより街中は?」
「さっきから煙が上がっている」
ヴィンセントは街を見る。
「街の中が本命です」
「何だと!だったらこっちは囮か!」
ヴィンセントは頷いた。パイルクが何か言おうとしたがヴィンセントは手を上げて静止して、意識を集中して呪文を唱える。
「ウインドサーチ」
呪文を唱え終わると、街の方を見た。
「ダルクがこの中にいます。どうしてオルとディミさんも一緒にいるんだろうか?」
「ここは任せろ」
その言葉を聞き終えると、
「頼みます」
一言を残してヴィンセントは走り去っていった。
読んでいただきありがとうございます。
突如現れたダルクに苦戦するオル達、街に到着する師であるヴィンセント。
物語は次が最後になります。楽しんでいただけると嬉しいです。
ご意見・ご感想お待ちしています。




