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 それは佳斗のいない土曜日の夜のこと。


 夕方から降り始めた雨は次第に本降りとなり、お客さんのいなくなった神川ゴルフ練習場は終業時間を早めることにした。

 というのも、天気予報ではこれから大雨を予想しており、雷を伴って荒れた天気になると伝えていたのだ。

 もし停電なんてことになったら練習場の照明も点かなくなるため、お客さんにも迷惑を掛けることになる。

 それならいっそのこと、やめてしまった方がいい。

 そう判断したのであった。

 

 美里と詩穂も、天候を気にして早めの帰宅を選択。

 練習場の照明を落とし、鍵も閉めた。

 

 あとは、ここに残る瑠利に任せて、帰るだけである。

 

「ルリちゃん、あとをお願いね」


「はい、わかりました」


 そう言葉交わし、美里と詩穂は家に帰っていった。


 瑠利は車で帰る二人を見送り、母屋へ戻る。

 時刻はまだ八時。

 いつもならまだ営業を続けている時間だが、早く暇になってしまった。


 となれれば、受験生であるため勉強するべきであるが、天候の荒れ具合が不安だ。

 遠くの方では雷が鳴り始め、恐怖心を煽るような稲光にドキッとする。


 この状態ではあまり集中できないと考えた彼女は、停電などの心配もあるからと、早めのお風呂に向かう。


 時刻はいつの間にか九時を過ぎ、小学生の陸斗は眠っているこの時間。

 あまり音を出さないように気をつけて入浴し、ドライヤーも低速。

 二階で眠る陸斗であれば、多少は問題ないように思えるが、それでも念のためだ。


 そうして瑠利はテレビを見ることなく就寝へ。

 というのも、すでに外は季節外れの嵐。

 もう十一月も後半だというのに、嘘のような雷が鳴っていた。


 流石にこんな中、起きている気にはなれず、明日は晴れるといいなと思いつつ布団に入る。

 朝になれば彩夏も訪れるため、その前には起きなければならない。


 と、その時だ。

 コンコンと部屋をノックする音が聞こえてくる。

 それと同時に陸斗の声も。


「ルリねえちゃん、入っていい?」


 その声はどこか不安気で、瑠利もどうしたのかなと首を傾げるが、それを放置するわけにもいかない。


「うん、いいよ」


 そう声を掛けると、ガチャとドアが開き、枕を持った陸斗が顔を出した。


「どうかしたの?」


 こんな時間に、と瑠利は続けようとしたが、それを遮る雷の音。

 陸斗もその音に驚き、身体をビクッとさせる。

 更には激しい稲光の後にゴロゴロゴロドガーーーンと響き渡る雷鳴。

 

 同時に陸斗は「ヒィッ」と叫び、ダッシュして瑠利の布団へ潜り込む。


 そこでピーンときた彼女はニマニマ。


「ルリねえちゃん、一緒に寝てもいい?」


 と、もはや布団の中である陸斗がそう尋ねるので、瑠利は……。


「もちろん、いいよ。それよりも怖いなら、もっと引っ付いて」


 と、雷を怖がる陸斗を、ギュッと抱きしめた。


 思わぬことで野望が達成できた瑠利はイケナイ顔になっているが、それを見ている者は誰もいないのでセーフだ。

 

 これなら毎日でも雷が鳴って欲しいなんて余計なことを考えるも、二人だけでいるのは金曜と土曜だけである。

 明日には家に帰るし、あと一週もすれば男子のツアーも終わり、師匠も戻ってくる。

 そうなれば陸斗はそちらへ行ってしまい、自分のところにはこないのだ。


「うん、ざんねん」


 そんなことを瑠利が考えていると、陸斗からは「スー、スー」と寝息が聞こえてきた。


 どうやら安心したらしく、眠ってしまったようだ。


 瑠利もそれを確認し「私も寝よっと」と、二人して仲良く眠りについた。




 それから暫く、瑠利の部屋のドアが静かに開く。


 そこから顔をのぞかせたのは、美里だ。


「あらあら、りっくんが部屋にいないと思ったら、ここにいたのね。でもまあ、すっかり仲良くなって。うふふ、おやすみなさい」


 そうしてドアを静かに閉めて、「もう、うちへ戻るよりは、ここにいた方が早いわね」と、子供の頃に自分の使っていた部屋へと入り、眠りにつくのだった。

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