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女子寮へのリフォーム開始と、新たなスタッフ

 御殿場でのツアー競技を終えた大内雄介プロと神川佳斗は、翌日の午前中には宮崎入りしていた。

 

 それというのも、プロゴルファーにとって月曜日は移動日。

 翌火曜日からは練習ラウンドが始まり、木曜日には本戦と、あまり余裕がないのだ。

 おまけに、キャディーの佳斗はこのコースのラウンド経験がなく、データ収集にも時間は掛かる。

 となれば、少しでも早く現地に赴き、下見がてらに散歩というのがベストであった。


「なんだ、休んでいてくれても良かったんだぞ」


「いや、ここは私も苦手なコースだからね。二人で歩いた方が、研究も捗るだろう」


「まあ、お前がいいなら、構わないけどな」


 そう話す二人の表情は、真剣そのもの。


 というのも、ここ宮崎は、これまでに何度も海外メジャー選手が優勝争いを演じた日本屈指の難コースであり、今年も多くの有力外国人選手が参加する予定であった。

 

「風が吹いたら、けっこう厳しいな」


「ああ、我慢のゴルフになるだろうね」




 この時の会話が、まさに現実となったこの大会。


 賞金総額2億円。優勝者は4000万円と高額だ。


 そこで雄介は再び優勝争いを演じたものの強風に悩まされ、終わってみれば五位タイでフィニッシュ。

 

 二週連続優勝(ブイ)とはならなかった。




 ☆ ☆ ☆



 ところ変わって、こちらは神川ゴルフ練習場。


 宮崎では大内雄介と神川佳斗が厳しい強風と戦っているが、こちらでも美里が苦労していた。


 というのも、ついに女子寮へのリフォームが始まったのだ。

 予定通りではあったが、佳斗は雄介のキャディ―でいないため、対応するのは全て美里。

 事前に業者との話し合いは済んでいるものの、いざ始まってしまえばトラブルは付き物だ。

 本当に困った時は夜に兄と電話で話をするとして、そうでなければ判断するのは彼女である。

 自分でリフォームを勧めたてまえ、泣き言など言ってられない。


「まあ、楽しくはあるのよね」


 それが彼女の本心だった。

 美里は管理栄養士の資格を習得しており、寮母となれば、それを生かすことが出来る。

 今のところ予定では瑠利一人だけだが、いずれは入居する人数も増えるであろう。


 そうなれば、と期待を膨らませるものの、現状はまだまだ。

 

 それよりも、彼女がリフォームへ関わっているため、練習場での人手が足りないのである。

 娘の詩穂が手伝いに来たとしても、彼女は高校生。受験生でもあり、そう何度もというわけにはいかない。

 

 そのための解決策として、パシオンゴルフガーデンから新たにスタッフを派遣してもらった。


「初めまして、森沢彩夏もりさわあやなです。朝は得意なので、任せてください」


 そう挨拶する彼女は森沢彩夏(19歳)といい、大内雄介プロの門下生だ。

 赤茶けた長い髪を後ろで縛り、のほほんとした可愛らしい顔つきをした彼女であるが、その身体つきはプロのそれ。

 少し小柄なものの、プロスポーツ選手特有の強靭な下半身の持ち主だ。

 

 中校生の頃から大内雄介プロに師事し、学生時代からの実績もあって、プロテストに合格する日も近いとされていた彼女。

 ただ、残念なことに、今年のテストでは最終で落ちていた。


 それでも毎年合格者は20人。3%の狭き門であるから、最終プロテストまで残れた実力は、本物だ。

 今後の期待値込みで、神川ゴルフ練習場へと派遣されてきたのである。



「ほんと、助かるわ。私は、夏目美里。よろしくね」


「はい、こちらこそ、よろしくお願いします」


 こうして渡会海未に続き、二人目の派遣となった森沢彩夏。

 彼女の担当は朝。ボール拾い込みで平日は六時出勤。土日祭日は五時となっており、期限としては男子ツアーの最終戦までであるが、本人次第では継続もアリとの契約だ。

 彼女の技量レベルであれば、どこで練習していようと同じであるため、パシオンゴルフガーデンに拘る必要はない。

 むしろ、これを機に神川ゴルフ練習場に移ることで、佳斗という切り札を得ることが期待できる。


 今後プロテストに合格し、ツアープロへと進めばキャディー問題は必須だ。

 となれば、師匠の大内雄介が認める優秀なキャディーである佳斗の下で働くことは、メリットしかないのであった。


「来年こそは」


 彼女にそう思える理由ができ、そうなるように仕組んだのが、雄介であった。

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