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本当の理由

「さてね、話をするのはカエデだよ」


「うん、わかってる」


 そんな重い空気を造り出す姉妹に、瑠利も緊張のためかゴクッと唾を飲み込んだ。


 これから何が行われるかといえば、カエデが瑠利に絡んだ理由の説明である。


 不可解な彼女の言動。


 それを疑問に思ってはいたが、あまり敵意は感じなかった。

 むしろ、こちらを値踏みするかのようであったため、おおかた新参者の実力でも確かめようと思ったのだろう。


 そんなことを瑠利が考えていると、カエデからは予想外な言葉が発せられる。


「あのね、ルリは佳斗おじさんの弟子になるわけでしょう。ここに住み込みってことだけど、高校はどこを受けるの?」


 それはほんとに想定外。ここで、まさか志望高を聞かれるとは思っていなかった。

 けれど、それを答えたところで特に困ることはないので、瑠利は素直に志望高を告げる。


「あっ、高校ですか? えっと、私立ですけど、春乃坂学園高校を受けようかと思っています。ここから一番近いので」


「え、やっぱそうなんだ」


「はい、両親もお金の心配はいらないと言ってくれました」


 それが一番に大きな理由であった。


 春乃坂学園であれば、ここからの通学時間は自転車で10分程度であり、授業が終わり次第、練習場に籠りたい瑠利には、絶好の環境だ。

 娘がプロになりたいという望みを叶えようとする両親なのだから、たとえ私立であっても通わせてくれるであろう。

 あとは、受験で失敗しなければだが……。


「えっと、受かればですけど……」


 ちょっとばかり自信の無さげな瑠利であるが、実はギリギリ。

 本来なら週末にここへきている場合ではなく、受験勉強を頑張らねばならない状況だ。


 けれど、それを聞いた夏目姉妹は笑顔を見せる。


「うんうん、そうなのね。実は、あたしたちも春乃坂なの。私が一年生で、お姉ちゃんが三年生」


「えっ、そうなんですね」


「だから、もし必要なら、言って。勉強を見てあげるよ。お姉ちゃんが」


「おいっ」


 それはあまりにも不意打ち。

 カエデも春乃坂に通っているのだから、一応は教えられるはずである。


「あんたねえ、私は受験生なんだから、そんな暇はないわよ。ちゃんと、カエデが面倒をみなさい」


「は~い。……じゃあ、そういう事で、あたしがみます」


「もう、最初からそう言えばいいのよ」


「ははは……」


 相変わらずな姉妹の会話に、瑠利は苦笑いをするばかり。


 でも、実際にあぶない状況ではあったため、その申し出は嬉しかった。


「ちょっと心配だったので、助かります」


「いいよ、任せて。ただ、あたしからも少しお願いがあるのだけど……」


 と、ここに来て、まさかの交換条件。

 瑠利は少しばかり不安気に尋ねるが……。


「えっと、なんでしょうか?」


「あのね、入学したらゴルフ部に入ってくれない? お姉ちゃんが三年生で卒業しちゃうから、団体戦のメンバーが厳しいのよ」


「うん、私からもお願い。うちの学校ってスポーツに力を入れているから、ゴルフ部もいい加減実績が欲しいの。ほんとは私がいるうちにって思っていたけど、ダメだったから。でも、ルリが入ってくれたら、凄いことになると思うわ」


 そう一気に捲し立てる二人。


 彼女たちが瑠利に会いたがっていた本当の理由は、ここにあったのだ。

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