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春乃坂学園高校ゴルフ部

 春乃坂学園高校ゴルフ部は、弱小だった。


 総部員数が八名。そのうち三年生が四人。

 来年、詩穂たちが抜け、一年生が入らなければ団体戦(選手五名が必須)に出ることも叶わず、廃部となる。


 というのも、春乃坂学園では部員数の最低条件があり、五名以下は部として認められていないのだ。

 同好会としての活動は認められているものの、それでは部費も出ず、遠征費など経費の掛かりやすいゴルフ部を続けていくことは難しい。

 ここは是が非でも新入部員を獲得し、部としての存続をと、それがカエデの目的であった。

 今は二年生が二人、一年生が二人と来年以降も非常に苦しい状況で、瑠利が入ることで最低ラインはクリアーできるが、今後も部員数を維持していくためにも大きな実績を上げる必要があった。


 そのためにもプロ志望の瑠利の獲得は、必須だったのである。




「どうかな?」


 カエデは部の存続を心配し、瑠利にそう尋ねる。


 まずは五人目を確保して、それから部員を増やす方法を模索していけばいいのだが、問題は瑠利の置かれた状況だ。

 プロを目指すのであれば、弱小ゴルフ部に入っている暇など無いと思われるが、興味が無いわけでもない。

 同世代の学生たちがどの程度の実力なのか、それを知る意味では参加するのもアリなのだ。


 ただ……。


「えっ、でもわたし、プロを目指しているけど、大丈夫なんですか?」


 その言葉通り、瑠利の心は揺れていた。


 自分はすでに師匠を決めている。

 まだハッキリと返事をいただいていないが、大丈夫だろうと思っていた。

 けれど、そんな自分が高校のクラブ活動に参加していいものなのか。

 プロを目指す以上、アマとしての競技に参加する資格はないのでは?


 そんなことを考えていると、カエデは瑠利に佳斗の言葉を伝える。


「それは問題ないって、佳斗おじさんが言ってた。ルリはまだ実戦経験が少ないだろうから、高校の部活動に参加するのも大事だって。ただ、本人が嫌がるようなら、やめてあげて、とも言ってたよ」


「そうなんですね……」


 カエデの話を鵜呑みにすれば、瑠利が部に入ることは問題ないらしい。


 というのも、女子選手がプロになるには、18歳以上というルールがあるためだ。

 プロテスト受験資格は、その年に18歳となる者と明記されているため受ける時は17歳の者もいるが、それから講習を行い、翌年がデビュー。


 要は、高校生のうちはプロ資格を持てないと考えておけばいいだろう。

 ただ、男子は別で、16歳からと大きな差があるようだが……。



 ともあれ、瑠利が部活動に参加することを、佳斗は薦めていた。


 それが事実であれば、断る理由も無いのである。


「わかりました。一度、師匠と話してみますが、問題無ければ入りたいと思います」


 そう伝えたところで、カエデと詩穂も大喜びだ。


「ほんと⁉ やったー。これで廃部は免れたよ。あとは、ルリを絶対に合格させなきゃね」


「うんうん、これで私も安心して受験に集中できるよ。流石に次の代でゴルフ部が廃部になったら、後味悪いしね。でも、まずはルリちゃんを合格させなきゃ始まらないから、時間があれば私も協力するよ」


「はい、ありがとうございます」


 こうして話は纏まったかに見えたが、問題は瑠利の成績である。


 春乃坂学園は文武両道を掲げたレベルの高い高校であり、私立とはいえ倍率も高く、現在ギリギリの瑠利は気の抜けない状況だ。

 いずれは海外を目指したいと考えていることもあり、英語は問題ないが、それ以外がどれもヤバめと、一筋縄ではいかなかった。


「じゃあさ、さっそく今日から始めようか」


「えっ…………今日からですか?」


「「…………」」


 ただ、この状況で、勉強道具一つ持ってきていないところが、やはり瑠利らしかった。

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