第六話 要塞都市
総合評価200到達しました!
評価してくれた方、ブクマしてくれた方本当にありがとうございます!
ちょっと泣きそうなくらい嬉しいです。
私とカミラちゃんの初陣から更に一週間経ち、私達一行は遂に【要塞都市フォルト】へと辿り着いた。
レオさんと馬車を護衛しながら進むとなると、こんなに早くフォルトへ辿り着くことは不可能だった。
というのも、分かってはいたけど馬車が遅すぎた。レオさんの話でも私達と会ったのがフォルトを出立して二週間後のことだったんだから、当然だ。
じゃあどうしたのかというと、馬車と馬を丸ごと私のマジックバッグに入れた上で、レオさんをおぶって飛んできたのだ。
マジックバッグの中は時が止まっているのは食材の件で分かっていたので、遠慮なく馬さんにもバッグに入ってもらった。
動物虐待? ピンピンしてるし問題なし!
それよりも緊急事態だったし、速度重視になるのは仕方ないってことで許して欲しいよ。
というか、魔力を込めながらこの小さなポーチの口をあてがっただけで、どんな大きさの物でも吸い込んでしまうマジックバッグがちょっと怖いよ。
それにしても、流石は要塞都市と言われているだけあって、フォルトの城壁はウォール◯リアかよと言いたくなるくらいに高く、城門も金属製の頑丈な作りになっている。これなら巨人に蹴られても大丈夫だね。
私達は今、そんな城門の脇で門番さんによる入場手続きを受けていた。
「それでは、身分を証明できるものを提出してください」
「ギルドカードで大丈夫ですか?」
「冒険者さんだったのですね、失礼しました。大丈夫ですよ」
門番さんは目を見開いて驚いていた。まあ、私とカミラちゃんはどう見ても子供だし、まさか他の街からやってこれる程の実力があるとは思えないだろうしね。
実際、私達のギルドカードを見てCランクの文字を見た時には目ん玉が飛び出そうになる程驚いていた。
私が表情豊かで優しそうな門番さんだなぁと思ってほっこりしていたら、レオさんが別の門番さんと少し揉めてる声が聞こえてきた。
レオさんは、フォルトに着く少し前にマジックバッグから取り出した馬車を引いてきていたので、手続きは別の場所で行なっている。
フォルトの城門は、馬車も通れる搬入用の門と、今私とカミラちゃんがいる人用の門の二箇所ある。
ちょっと離れた位置にあるのに聞こえてくるとは、結構深刻なトラブルが起きているのかもしれない。
「すみません、お兄さん。先程説明した商人さんが揉めているみたいなので、様子を見に行ってもいいですか?」
私が背の高い門番さんを頑張って見上げながらそう言うと、門番さんは緩んだ笑顔で頷いて、ギルドカードを返してくれた。
「大丈夫ですよ、小さな冒険者さん。お二人の審査は終わりましたので、用が済んだらすぐに入場できますよ」
門番さんはそう言って手を振った。私とカミラちゃんはお礼を言ってから、相変わらず揉めている声がする方へと駆け出した。
「だから、本当なんですって!」
「そんな非常識なことがあるか! 一体何年安全な交易路だったと思ってる! 本当は何をしたんだ? 護衛の冒険者達はどうした!? 何を企んでいる!」
思いっきり誤解受けてるー!
多分あれだよね、レオさんが冒険者達を騙して金品巻き上げた挙句どっかに置いてきたか殺してしまったのかと思ってるんだろうね。
確かに野営中とかに一人で馬車を出してしまえば簡単に置き去りにできるし、よくある犯罪の手口なのかもしれない。
ましてやレオさんは三週間ほど前に【カルムの街】に向けて旅立ったばかりな訳だし、疑われても仕方ない、のかな?
「あのー、すみません。今ちょっといいですか?」
私はレオさんに助け舟を出す為に、搬入門の門番さんにギルドカードを提示しながら声をかけた。
「ん? お、お嬢ちゃん冒険者なのかい? しかもCランク……?」
「はい。こちらのカミラちゃんも同じくCランク冒険者です」
「ど、どうもです。カミラと申します」
門番さんは訝しげな表情をしながらも、ギルドカードが偽造品でないことを確認したのか、それ以上は特に何も言わなかった。
それから私とカミラちゃんで、レオさんが襲われていたのは事実である事、レッドグリズリーはカミラちゃんが全滅させた事を説明した。そして証拠に、マジックバッグに詰め込んでいたレッドグリズリーの頭を十体分取り出してみせた。
そこまですると流石にレオさんの主張をある程度は認めたようで、慌てて誰かに連絡を取った後門を通らせてくれた。
代わりに冒険者ギルドに直行するようにと指示を受けた。それも監視付きで。
事態は重く受け止めたけど、弱冠7歳のCランク冒険者がレッドグリズリーを討伐したなんて信じられないってことなんだろうね。
まあそれは仕方ないし、いざとなったら実力を見せて黙らせてしまえば問題なし。そんなことを考えながら馬車の荷台に乗り込み、城門をくぐり抜けたその時。私は目の前に広がる光景の圧倒的なまでの迫力に圧倒された。
石レンガで作られた大きな建物が建ち並び、それらの煙突からは絶えず黒煙が吐かれ続けている。
道ゆく人々は皆逞しく、作業着のようなものを着た人が殆どだ。たまに鎧を着ている人がいるけど、彼らは多分冒険者だろう。
それから、この街を漂う独特な臭いは石炭だろうか?
この世界には蒸気機関とかはないみたいだから、多分鉄を精錬する為に使っているのだろう。
魔境の森に挑む冒険者達の装備や、城壁に設置する投石機やバリスタなど、鉄の需要には事欠かない街だからね。実際、あちこちからカンカンと鉄を叩く音が聞こえてくる。
「カッコいい街だなぁ……」
思わずそう呟いてしまうくらい、この街は男心をくすぐってくる。今の私は女の子だけど。
「あぅ、私にはちょっと臭いがキツイです……」
純乙女なカミラちゃんには、結構辛いみたいだね。こういう時に、やっぱり私は例外的な存在なんだなと実感する。
でも確かに、これだけ強烈な石炭臭がするってことは、身体にはめちゃくちゃ悪そうだ。宿に行ったらキュアをかけておいた方がいいかもしれない。
石炭を燃やして出る煙には有毒ガスが沢山含まれているから、あまり過剰だと公害被害が出ることもある。
地球であったものだと、確かロンドンスモッグっていう、一万人以上の死者が出た最悪の公害事件が有名かな。この街には霧は出ていないし、多分大丈夫だと思うけどね。
「確かに臭いはキツイが、俺も初めて来た時にはこの景観に感動したもんだ。……今はお尋ね者みたいな、目で見られてるから最悪だが」
レオさんはジト目で監視のために着いてきた門番さんを睨んだ。先程まで口論していた相手ってこともあって、心象は良くないみたいだ。
「ハッ、そりゃ当然だ。オレはまだ疑ってるからな。こんなちんちくりんな冒険者にBランクの魔物が倒せる訳がねぇ。一体どんなカラクリがあるのか、ギルドマスターに洗いざらい暴いてもらうから覚悟しろよ?」
なんかこの人、門を離れた途端口悪くなってない?
「おい、俺のことを悪くいうのはまだいいがよ、二人を貶すのは許せねぇな。俺の命の恩人なんだぞ」
いつか爆発しそうだなぁと思いながら見ていたら、遂にレオさんがキレた。門番さんに殴りかかりそうになるのを私とカミラちゃんで必死に抑える。
「レオさん、殴っちゃったら本当に犯罪になっちゃいますよ」
「そうですよ! 私達は気にしてませんから!」
そこまで言って、ようやくレオさんは拳を降ろしてくれた。まったく、肝が冷えるよ……。
こんな感じで、超険悪ムード漂う馬車に揺られながら、私達は冒険者ギルドに向かったのだった。




