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Create・World・Online  作者: 迅風雷
第3章 星の降る島
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14『亀と蟹』

「はぁ、はぁ、ここまで、来れば、だい、じょうぶ、かな?」

「はぁ、そう、ですね」


 くそ、息苦しい、それに体に力が入らない。これが、【虚脱】か、戦闘中になってたら、足手まといまっしぐらだな。さて、ここは何処だ?


 森の中を突っ切り森を抜け辿り着いた場所は、岩壁がそびえ立った行き止まり。振り返れば森が広がり、海岸は見えない、森の中にあるはずの遺跡らしき物も無い。目印が何も無いとは、厄介な。

 でも、何処からか波の音が聞こえるから、近くに海岸あると思われる。とりあえず海岸を探すか、【虚脱】が回復してからね。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「「おぉ(わぁ)」」


【虚脱】が回復し体に力が入るようになった後、岩壁を中心に周囲を調べると岩壁に裂け目を発見。

 横幅は両手を広げてギリギリ、縦は非常に高い三角形の裂け目を抜ける。そこには小さな入江が広がっていた。


 周囲は岩壁に囲まれ、裂け目の反対側に大きな穴が空いており、そこから海の波が広がっている。

 入江は円形で半分以上が海、白い砂浜が三日月型に広がっていて、とても綺麗だ。だと言うのに、


「なんか嫌な物が見えるな」

「ええ、非常に不愉快になる光景が見えますね」


 綺麗な砂浜に相応しくない光景が目の前で繰り広げられている。

 大きな緑色の甲羅を背負った亀らしき動物を、それより大きな黄色の蟹だと思われる動物が囲んで叩いている。これが獲物を食べる為なら俺も何も言わないが、蟹達は明らかに亀を巨大な右のハサミで殴って遊んでいる、実に不愉快だ。


 よく見ると、その亀を助けようと巨大な蟹に立ち向かう小さな白い蟹もいる。小さいと言ってもシロツキよりも大きいけど、あの体格差ではどうしようもないだろう。とりあえず【識別】発動。


【エンピビエスタートル】対応rank:E

『四肢をヒレ、あるいは足に変化させる事が出来る水陸両用の亀の魔物

 どこでも住めるのが強み、頑丈さは同rank内では上位に位置する』


【ライトハンマークラブ】対応rank:D

『自分の体を越えるハサミを右側に持つ蟹の魔物

 ハサミを叩く事に特化させてしまった故か、本来の能力は失われている』


【サンドクラブ】対応rank:F

『砂辺に住む小型の蟹、非常に器用

 砂や土を使って自分の住みかを作り、外敵から身を守る』


 ああ、うん、これは酷いな。まさに弱いものいじめ、気に入らないな。


「従魔を連れている俺としてはあれを見逃す理由が無いな、ユキムラ君は?」

「リアルならともかく、ゲーム(ここ)で退く理由は無いですね」

「OK、じゃあ止めるぞ、最低でも2体の保護! 最高はあの蟹4体の討伐!」

「分かりました! ゲンジロウ、牽制お願いします!」


 俺達は2人同時に砂浜へ駆け出す、ゲンジロウは先行して大蟹の1体に攻撃を開始した。

 ゲンジロウは、ストレインと違いえらく好戦的な性格なようだ。回避ではなく攻撃を主体とした戦い方、ストレインなら一撃当てたら逃げる、が、ゲンジロウは相手が攻撃するまで逃げず攻撃を続けている。リスキーだけど、注目(ヘイト)を集めるならいい手ではある。


「ユキムラ君、囮と保護、どっちがいい!」

「ゲンジロウの側で囮をします! 指示を出さないといけないですから」

「分かった、大蟹のハサミに気をつけろ、どうやらあれで殴り付けて来るみたいだ」

「分かりました、亀達をお願いします」

「おう」


 ユキムラ君は大蟹に向かって槍を突き出す姿勢で突撃していく。が、大蟹の甲羅に当たった槍はキンッ、と言う音を響かせ弾かれる。硬い、あれじゃまともなダメージは入れられないだろう。それに、近くで見ると更にデカイな、ユキムラ君と比べると倍以上じゃないか、これは急いで合流しないとマズイかもな。


 俺は更に急いで小蟹に駆け寄る。既に大蟹達はゲンジロウとユキムラ君を追って入江の奥に向かっている。それにしても、魔物になっても横歩きは変わらないのな、まぁ、蟹が正面から襲ってくるのも違和感だけど。


 さて、小蟹の状態は大蟹に弾かれて仰向けに倒された状態だ。立ち上がろうとしているのだろう、じたばたと砂の上で暴れている。しかし残念、ただその場で回り続けるだけになっている。


 小蟹の小さなハサミに挟まれないように注意しながら胴体部分を掴み立たせる。小蟹はこちらを警戒してか、ハサミをカチカチとならしながら少しずつ離れていく。ちょうど良い、このままここから離れてもらおう。


「そのまま離れてろ、これから友達を助けて、あのデカイのぶっ潰すから」


 そう言うと小蟹は、動きを止めてこちらを見た、甲羅から飛び出た小さな目で。そこからは何も俺は感じられなかったが、コイツの意志は別の形で伝わった。何故なら、


【クエスト発令】

『種族を越えた絆 小さき者の友を救え』

 難易度 ☆☆☆☆


 なんて書かれたウインドウが目の前に広がったからだ。なんだクエスト発令って、あと、突然目の前にウインドウ出すの止めてくれない? 前が見えないから、戦闘中だったら不意討ち食らうだろうが。


 左手でウインドウをスワイプしてみると、ウインドウが消え右上にクエストの文字が現れる。これがデューの言ってたアップデートか? 面倒な。

 ええい、今それは後回し。とにかく、そこでひっくり返ってる亀の救出だ。


「クッ、こ、のっ! 思ってたより重い、な」


 甲羅が半球状だから軽く押せば元に戻るかな? と思ったらそうじゃなかった。真面目に重いわ、これは。上から見た亀の大きさは小さな机、そうだな、所謂ちゃぶ台位の大きさで、高さは俺の股下より低いから60cm位かな、頂点部分が砂に埋まってるからもう少しあるかな。


 何が言いたいかと言うと、デカくて更に重いってこと。そして、あの大蟹の力が想像以上に強いってことだ。このままだとユキムラ君がヤバい。急がないと。


「これでなんとかなれよ、気力、ぜん、かい!! うぉぉぉぉぉぉ!」


 甲羅に手を当て全身に気力を纏わせる。これでダメなら亀を守りながら大蟹の攻撃を避けつつ、更に頑丈な甲羅を持つ大蟹全てを倒すと言う、無理ゲーに早変わり、動いてくれ亀、頼むから。


 そう思いながら甲羅を押し上げる。すると思いが通じたのか、甲羅が勢いよくひっくり返り、亀は4本の足で砂地に立った。


 その代わり、甲羅の割れ目に引っ掛かったらしく回転する甲羅に引っ張られ俺は反対側へふっ飛んだ。背中から豪快に叩き付けられたが、地面が砂のおかげか、軽いダメージで済んだ。


「いたた、これは予想外、だけど」


 立ち上がり亀に振り返る、亀はゆっくりと短い首を伸ばしこちらを振り向いていた。防御が高いと【識別】にあったけど、甲羅は傷だらけだ、でも、頭に目立った傷はない。


 致命傷は逃れた、ということか。賢いのか、本能かは知らないけど。……いや、ゲームで本能はおかしいな、プログラム、と言うべきか。とりあえず、逃げるのは問題無さそうだ。


「君も逃げろ、……友達と一緒に」


 亀に告げた時、視界の端の波打ち際に小蟹の姿が見えたので、それを指差しながら一言付け足した。亀は俺から視線を外し小蟹の方へのっしのっしと歩いていった。


 これで、大蟹との戦闘に入れる。と、なれば、まずはあの甲羅を貫く手段を見つけないと、早速切り札を切るとしよう。


「ネイ、【擬態】解除、限界高度まで上がってチャージ、大蟹が動きを止めたら狙い撃て」

「ーーー♪」


 元の形に戻ったネイがゆっくり上昇していく、さぁ、俺達の新技の実験台になってもらうぞ大蟹。

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