06『契約の儀式』
はーい、新キャラですよ
「主、連れて来たにゃ」
「御苦労様~、もう戻っていいわよ~、ここからはわたし達のお仕事だから」
引き摺られてきたのは神殿の奥へ向かう通路の先の大きな扉、の前の広場。途中下に向かう感じがあったので地下、だと思う。さて、気を取り直して、今回の元凶は誰だ? 声の方を振り向くと、猫耳の女性の姿が突然消え、代わりに白い猫が現れた。あっれ? 確かあの猫はジーナスさんの使い魔のミーちゃん。
「ミーちゃんでは無いです、ミ~ちゃんですよ。間違えないようにして下さい」
「……はい、気を付けます。って人の思考読まないでもらえます?」
「まぁまぁ、【読心術】はわたしのような者には便利なんですよ~、これでもわたし【審問官】ですから」
「【審問官】? あの異端者を見付けて拷問する?」
「失礼ね~、わたし達はあくまで聴く側よ、このスキルがあれば拷問なんて殆ど必要無いもの~」
「そうですか、ところでさっきまで居た猫耳の人は?」
「ん? あれはミ~ちゃんよ、種族【猫又】本来は幻覚や幻影で相手を惑わす存在よ、残念な事にミ~ちゃんは【変化】って言う姿を変えるスキルと探索系のスキルしか持ってないけどね」
「にゃー!」
「ハイハイ、怒ってもスキルは増えませんよ~」
ミ~ちゃんはジーナスさんのスカートの裾を引っ掻いているが、ジーナスさんは余裕の対応をしている、慣れっこなんだろうな。でもあれじゃ裾がボロボロになるんじゃないかな?
おっと、本題を忘れてた。え~と、これだ。
「ここに連れてきた理由はこれ、ですよね?」
俺は指輪から取り出した『神秘的な仮面』を被る、前も思ったけど視界が一切変わらない、便利だよな~。顔を隠したい時用に改めて買っておこうかな。仮面。
おや? ジーナスさんが固まってるどうしたんだ?
「どうしました?」
「え、え~と、思ってたより珍しい物が出てきて少々驚いただけです」
とてもじゃないけど“少々”って感じの驚きかたではないと思うけど、それは置いとこう。
「それで、このあとどうすれば?」
「はい、その仮面を着けたまま扉を潜って部屋の中央へ向かってください」
「それだけですか?」
「そうですね~、強いて言うなら恐れず進んで下さい、でしょうか」
恐れず進め、ね。とにかく中央だな、よし、行くか。
「それじゃあ行ってきます」
「善き御縁がありますように」
「ニャー」
ジーナスさんとミ~ちゃん──本人はミリアリアって名乗ってた──に見送られ、重厚そうな扉の方へ向かう。……いや、これ押して開くのか? そう思いつつ扉を押すと扉が勝手に開きだし俺の肩幅程度で止まった。部屋の中は見通せないが、街の中だしいきなり襲われたりはしないはず、よし、行くか。
部屋の中に入るとドォーン! と大きな音を立て扉が閉まった。勢いよく閉まり過ぎじゃない? 挟まってたらどうするんだ、死ねるぞ、今のは。肝心な部屋の中はクラスアップの時より真っ暗な部屋だった、今度は俺の姿も確認できない。そんなに暗い部屋が好きなのか? 神殿の人達は。
そんな事を考えていると、足元から淡い青い光が漏れだし少しずつ広がっていった。同時に部屋の中で何かが迫り上がっていくのが微かに見える。そして、光が部屋を満たした時、漸く部屋の全貌が見えてきた。
目の前に広がるのは簡単に言ってしまえば噴水、かな? 俺のつま先数センチの所にその縁が存在している。噴水といっても別に水が流れている訳ではない、ただ張ってあるだけだ。噴水は段差になっていて数は5段、外側が1番広く中央の5段目が一番狭い、その噴水の中から光が射している様に見える。
俺が行くように言われた部屋の中央というと、あの5段目の位置になる筈だけど、
「底が、見えない」
一番近い外側の噴水を覗いてみると、光の元も噴水の底も見えなかった。……泳いで行けば良いのか? そもそもゲームの中でも普通に泳げるのか? 普通に動けるし、行ける、よな?
俺は恐る恐る1歩を踏み出す、水に触れた部分から波紋が広がり水面に何か見えてきた。あれは、グレイスと初めて会ったときの映像か? チュートリアルで初めての戦い、テイムに初めて成功した時、グレイスと一緒に戦った記憶、それが水面に古い順に映し出され消えた。どうして映像が流れたか分からない、けど1つ気付いた事がある。どうやら、この水に沈む事は無いみたいだ。地面を踏んでる時と感覚が変わらないし、力を入れても沈む感じはしない。このまま中央まで行けそうだな。
1段目を歩いていくと、従魔達との出会いと戦いが古い順に水面に再生され、2段目はノルンとプレイヤーの出会いと戦い、アムトさん、ランディ、セネルさん、アネットさん、ジオンさん、皆元気かな?
3段目はテイム出来なかったラプターと幼虫、どちらも何か条件が足りなかったんだろうな~、もしもまた会えたら今度は別の方法を試してみたいな。
続いて4段目、ここでは俺が挑み倒した強敵達、嘘です。俺が挑み別の誰か倒した強敵達です、はい。グレイウルフリーダー、ゴブリンジェネラル、ハントスパイダー、ハイポイズンセンチビート、どれも厄介で今の俺じゃ絶対に勝てない相手、ま、ゆっくり確実に強くなれば良いさ。いつか俺1人、いや、従魔達と一緒に倒せるようになりたいものだ。そして、5段目に足をかけるが、
「ん? 何も映らないのか? 最後は何が出るのかちょっと楽しみだったのになぁ、さて」
気持ちを切り替え5段目に上る、ここが部屋の中央の筈だけど何が起こる? そう思いながら周囲を見渡していると仮面が勝手に外れ5段目の中央に向かってスーッと空中を移動、止まったと思ったら吸い込まれるように水の中に沈んでいった。仮面は水中で徐々にその形を失っていき最後には跡形もなく消えた、その直後、中央の水面が盛り上がり始めた。
水中から現れたのは玉、巨大な水の玉だ、俺と従魔達が全員入ってもまだ余裕のありそうなほど巨大な。その玉は完全に水面から離れると暫く空中に留まっていたが、そのうちに形が歪み、姿を変えたそれは水面に降りた。
それは小さな子供だった。透き通るような白く柔らかそうな肌、髪型は耳を隠す程度のふんわりショートカット、色は青みがかった白、目は澄んだ青、そして大きな一対の白い翼を生やした女の子。背は俺の腰よりも低い、7,80cm位だろうか? その少女はこちらを見上げていた、全裸で。いや、服位着せておこうよ運営、問題しかないぞ!
と、思った矢先、目の前にウィンドウが、このタイミングで名前をつけろって? 先に服だろ運営!?
えーい! 今すぐ対処できない事は後回しだ、とにかく名付けだ。……なんか見た目雪女──翼生えてるから天使の方が近いかも──っぽいから雪、雪と言ったら寒い、寒いは冷たい、冷凍、保存、維持、停止、よし! この娘の名前は『セツナ』、漢字で言うなら一瞬の刹那に雪を重ねて雪那、これで行こう。理由に説得力がない? そんな事言ってる状況じゃない、さっさとこの娘に服を着せる! 最優先はこれのみだ。
「はじめましてあるじさま、わたしはせつっ!? あうぅ」
名前をウィンドウに入力すると、セツナはお辞儀をしながら挨拶、自己紹介をしようと頭を上げると翼の重さに引っ張られたのか、仰向けに倒れていき後頭部を思いっきりぶつけて悶えだした。倒れて体を丸めるもんだから見えちゃいけないものが、……袋を取り出してっと、まずは体を隠してもらおう。
「え~、まずはこれで体を隠してもらえる? 自己紹介はそれからで」
「……ありがとうございます」
袋を受け取ったセツナは小さな手で手こずりながらも体に袋を巻き付けていく。あ~、背中の翼が邪魔そうだな、片翼の幅だけでセツナより大きいし高いもんな。背中の開いた服を探さないといけないな。
服の値段がどれくらいか、現在の俺の懐事情で買えるのか、そんな事を考えている間にセツナが漸く袋を体に巻き付け終えて、改めて自己紹介を始めた。
「初めましてあるじさま、わたしはセツナ、あるじさまのつかいまです、どうかすえながくよろしくおねがいします」
「俺はジン、よろしくな」
俺はそう言いながら握手をしようと手を伸ばすが、
「あるじさま、それはどうとうのあいてにおこなうこういです。わたしはあるじさまのしもべ、もっとざつにあつかってけっこうです」
拒否られた。……どうしよう、見た目幼女なのに物凄く面倒な性格してて対応に困るんだけど。
いや、従魔達の様に進化、もしくはノルン達のように大人に成長する可能性もある、少しずつ変えていけばいいだろう。
「分かった、それじゃあとりあえず部屋を出ようか」
「はい、あるじさま」
扉に向かって歩きだそうと振り返る、おっと、セツナのステータスを見るのを忘れてた。メニューを開きステータスを確認、従魔の下に使い魔の項目が追加されてる、選択すると項目が1つ、もういっちょ選択っと。
【使い魔】
【セツナ】
種族【雪天狗】 状態【良好】
職業【槍使いLv1】
TLv1
LP :50
MP :120
SP :100
攻撃:10 魔攻:10
防御:7 魔防:10
持久:3 精神:8
器用:10 素早さ:10
運:5
土:1 水:5 火:-50
風:3 光:1 闇:5
JP:0
ジョブスキル
【槍術Lv1】
スキル
【雪妖術Lv1】【風妖術Lv1】【飛行Lv1】
【妖力操作Lv1】【氷体Lv1】
称号
【ジンの使い魔】
【雪天狗】? 天狗ってあの妖怪の1種の? それにスキルの妖術、魔法と何が違うのか? 明日は確認する事が沢山あるな、JPも貯まって来たからジョブスキルも習得したいし。でも今日はもうログアウトだ、時間が予定時刻を30分も過ぎてる、急がねば。
扉の前に到着、扉を押すと思い感触と共に扉が開く。扉を2人で抜けると部屋に入った時と同じく大きな音を立て扉が閉まる。すると、部屋の前で待っていたであろうジーナスさんとミ~ちゃんが駆け寄ってきて、
「無事契約出来たみたいですね~、うん、友好的な使い魔と契約出来たみたいですね、良かった良かった」
「え~と、ありがとうございます」
「さて、それじゃ次はこの娘の服ですね、待っていて下さい! シスター全員で良いものを選ばせて貰います!」
「え? ちょっと待っ……」
「それじゃ神殿の入り口で待ってて下さいねー!」
「おい! 人の話を聞けー!!」
ジーナスさんはセツナを小脇に抱えミ~ちゃんと一緒に神殿の何処かに消えていった。
お金も時間も無いんだって、服なんて最低限で大丈夫だから、戻ってきて下さーい!
アニメ見てると大体居るよね幼女
ってことで新キャラは幼女です、彼女が大きくなるかどうかは……まだ考えてません
世間的には小さいままの方が好きな人が多いのかな? 悩ましいです
それではまた来週




