19『発見! rank:Bモンスターその名は……』
タイトルのイメージを変えてみました いかがでしょうか?
とりあえず次も似た感じにしようと思ってます
「なんにも起こらないな、深読みし過ぎたか?」
ストーンスワローと遭遇してから1時間、今のところ魔物等々の遭遇は、無い。
まあ、無いなら無いで良いんだが、今は移動を優先したいしな。
ただ、余裕が出てくるとどうしても考えてしまう、何故あれほどの数が一斉に襲ってきたのか? そして、何故姿を消したのか? だ。
今まであった動物や魔物は、リアルに近い行動をとっていた、それなら燕だってそうなはず。
燕が人を襲うと言うのは聞いた事がないーー少なくとも自発的にはだがーー、ならば燕達は移動していただけ? それなら煙幕張って逃げるのは納得出来る。
わざわざこっちに突っ込んだのは、ささやかな嫌がらせと言った所か、説得力は欠けるがとりあえずはそれで納得しておこう。うん。
「ジン、まだ警戒が必要だと思うか?」
イアンも似たような事を思ったのか、そう聞いてきた。
「あ~、とりあえず注意程度に変えようか、まだ予定の村までかかるし、ずっと気を張ったままってのはな」
「俺達も同意見だ、ただ……」
「ただ、何?」
「それがアヤメさんが静かすぎて怖いって」
「静かすぎる?」
……確かに、ここの道はしっかりしてるけど、道を外れれば木も沢山生えている。
それなのに、木が揺れる音と馬車の動く音しか聞こえない。
このゲームのリアルさなら聞こえるであろう、鳥や虫の声さえも。
確か南の森では聞こえたな、だとすると、
「この先に何かがある? いや、いる?」
「分からん、だから皆に聞いて回ったんだが」
「だったらシロツキに頼もう」
「ジンの従魔に? そうか! 兎系は耳が良いんだったな」
「ああ、何か聞こえたら声を上げて合図を出してーー」
「キュ! キュ! キューーー!」
俺が言い終わる前にシロツキが騒ぎ出した、どうやら早速何かを見付けてしまったみたいだ。
しかしシロツキよ、君がそこまで慌てるとは、一体何が?
「大丈夫なのか? なんか凄く慌ててるみたいだけど」
「俺もここまで慌てるシロツキは初めて見た」
「まずいのか?」
「分からない、けど、この子は俺のところで一番賢いから無視は出来ない」
「……分かった、馬車のスピードを落としてくれ、俺達が先を見てくる」
「了解、でも無理はしないでくれよ」
「分かってる、あくまで偵察だ、馬車は任せたぞ」
そう言うとイアンが馬車に引っ込み、間もなくメンバーを連れて馬車を降りた。
馬車を追い越して行くイアン、ジロウ、クロウ、ガブ、アンクの5人を俺は御者台で見送る。
大きくカーブを描く道の先にイアン達が消えた、斜面のせいで向こう側が見えない。
見えればイアン達に偵察なんてさせる必要も無いのにな。
さて、残っているのはレキ、キキ、シャロン、ユキムラ君に春夏秋冬の4人、か。
ユキムラ君とネリネさん達を置いて行くのは分かる、元々同じパーティーじゃ無いからな。
でも、どうして同じパーティーの魔法職を置いていったんだ?
「魔法職組が置いていかれた理由を知ってるか?」
馬車の2階にいる女性陣に訪ねてみる、御者台には2階にいる人と話が出来るように、天井部分にメガホンの様な形をした蓋の付いた筒が2つある、名前が分からないので、とりあえず【通話器】と呼ぶ事にする。
片方が2階、もうひとつは荷台の下にある拡張空間の厩舎に繋がっている、今回は2階の方に話しかける。
答えたのはレキだ。
『私は偵察に向かないからって』
さっきの行動を考えればそれが一番だろうな、俺でも連れていくか悩むし。
『今回は偵察だから回復は要らないって』
次はキキ、戦う訳じゃないから仕方ないか、もし勝てない相手で真っ先に倒されたら困るしな。
『鎧が重いから逃げる時足手まといになるから、だってさ』
最後はシャロン、頑丈そうな見た目だけど重そうだしな。
「なるほど、一応理由はあるんだね」
『ジンさん! 前から馬車が来ます!』
ネリネさんが突然叫んだ、でも、前から馬車? つまり、道は安全? なのか。
道幅的には2台通れる筈だから、まずは端に寄せよう。
正面から馬車がゆっくり近付いてくる、それほど大きな物ではないが商人だろうか。
いや、そのふりをした野盗かも知れない、武器の用意はしておく。
「警戒だけお願いします、対応はこちらで」
『分かりました、蓋は開けておいて下さい』
「了解です、さて」
馬車がすぐに近くを通る、御者台の人の姿が見えたのでとりあえず挨拶でもしてみようか。
そう思い会釈をすると、相手も返し声をかけてきた。
「あんた達がイアンさん達のお仲間かい?」
「ええ、そうですがあなたは?」
「わたしゃ、ウネアってしがない商人でさ、この先にあるビーグって村にアインからの荷を届けた帰りでさ」
ウネアさんはアインのノルン達とそう変わらない格好したお爺さんだ。
とても戦えるとは思えないが、
「失礼ですが、お一人ですか?」
「いんや、荷台の中に護衛がいるよ、心配は無用でさ」
「そうでしたか」
荷台の中から一人が顔を出し、こちらに会釈する。
とりあえず、野盗の類いでは無さそうだ。
「んでさ、イアンさんから伝言でさ、この先で待ってるってさ」
「そうですか、ありがとうございます」
「いーんでさ、困った時は助け合いでさ、それとこの先に大きな魔物がいるでさ、でも卵さえ持ってなきゃ大丈夫だから心配すんなさ」
「卵ですか?」
「エッグイーターって言う卵だけを食べる変わり者の魔物でさ、確か~rank:Bの魔物でさ」
「rank:B!?」
ジェネラルと同じ強さの魔物!? 俺達じゃ勝てるわけがないのがこの先に。
……いや、卵を持ってなきゃ大丈夫なんだ、幸いゴウカとケンランは既に孵った、問題は無い筈。
「大丈夫でさ、卵を持たず攻撃もしない、これさえ守れば襲われる事はないでさ、それじゃあそろそろ行くでさ、気い付けてさ」
「ありがとうございます、そちらもお気を付けて」
ウネアさんは手を振り、馬車を進ませ離れていった。
『変な訛りの人だったね』
『ちょっと聞き取りづらかったです』
『一体どの地方の方言を参考にしたのかしら?』
『それより魔物よ! rank:B! 見に行くわよ! HURRY UP!!』
なんで突然英語? 現代じゃ話す人も少なくなったのに、単語位なら俺も言うけど。
まぁ、別にいいか。
「ウネアさんの話だとそれほど危険じゃ無さそうだけど、余計な事はしないようにして下さいね、それじゃイアン達に合流します」
『『はーい!』』
返事はしっかりしてるな、行動もそれに合わせてくれると助かるんだが、……無理かな~。
とにかく今は進もう、今日の目標の村まであと少しなんだ頑張ろう。
ゲームを頑張る、ってのもなんだか違和感のある言葉だな、今更な気がするけど。
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イアン達の姿が見えなくなったカーブに差し掛かった所で、【気配察知】に巨大な反応を確認した、恐らく件のエッグイーターだろう。
しかし、これは……デカイ、間違いなく俺が出会った魔物の中ではダントツだ。
しかも、いままでは丸表記だった反応が、長く伸びた餅みたいになってる、蛇みたいな魔物なのかな? それならこの反応にも納得出来るんだけど。
そんな事を考えている間にカーブが終わる、前にイアン達が居た。
「皆、無事か? むやみに突撃してないよな」
「もちろんだ、流石にあれに突撃する気にはなれない」
「無謀、としか言えない」
「右に同じです」
「【識別】が効かない相手に突撃とかするわけないッス」
「少なくとも今の僕達が戦える相手じゃないのは分かります」
「それで、エッグイーターは何処?」
「あそこだ」
そう言いながらイアンが指差す先に見えたのは、
「蛙? それも尻尾が生えたままの?」
道の外側、下り斜面から道を覗く形で緑色の蛙が居座っている。
体の後ろからは同色の尻尾が生えていた、それも結構な長さと太さを持った。
蛙は俺達が乗ってる馬車と同じーーいやそれより大きいかもしれないーー、そして尻尾は蛙部分の5倍程の大きさだ。
……デカすぎじゃない? でもこの大きさなら【気配察知】の反応の大きさにも納得出来る。
「ただの尻尾じゃないッス、尻尾には鱗が生えてるッス」
よく見ると、尻尾には鱗が生えていた。
魚の様な鱗では無く、爬虫類の持つ頑丈そうな鱗だ。
「……確かに、あの鱗の感じだとあれは、蛇?」
「でも頭は蛙です、足も生えてますよ」
「なんだその不思議生物」
「エッグイーターですよ、ジンさんがそう呼んだじゃないですか」
「アンク君そうじゃないんだ、結局あれは蛇の体を持つ蛙なのか、それとも蛙の頭を持つ蛇なのか、どっちなのって話」
「それは、……どっちでしょう?」
「今大事なのはそこじゃないぞ、やり過ごせるかどうかだ、それでジンは卵を持っているか? 俺達の中で卵を持ってそうなのはジンだけだと俺は思うんだが」
「今は持ってないぞ、前に持ってたのは、ほらあそこでゆらゆら泳いでるよ」
馬車の中でゆらゆらと泳いでいるゴウカ達を指差しながらイアンに答える。
俺の回答にイアンは一度頷き続ける。
「だったら大丈夫だろう、ジン達に伝言を頼んだ人達は普通に前を素通りしてたからな」
「例え襲われないと知っていてもあれの前を通るのは怖いから、その情報は精神的に助かるよ」
「それじゃあ進んでくれ、おじいさんの話だとここから30分程で村に辿り着けるらしいしな」
「分かった、それじゃあ乗り込んでくれ、さっさと蛙をやり過ごそう」
イアン達が乗り込んだのを確認し、再度出発。
徐々に蛙の顔が近付いてくる、卵は持ってないから大丈夫なはずだけど、やっぱり不安だな。
デカイ口を横目に馬車を進める、蛙の正面に来たとき目が開いた、しかし蛙は動かなかった。
そして、ビビりながらも前を通り過ぎた時、突然衝撃が馬車を襲った。
この状態でそうなる理由は一つ、エッグイーターが俺達を襲ったのだ。