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不思議な国の…俺?  作者: 田中AG
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第9話

取り調べが始まるまでは特にやる事がない。

魔法の練習でもやっておくか。

漠然と練習するよりも何を習得したいかを決めるか。

花形の攻撃魔法は、トムが特化してると言ってたな。

攻撃の手はいっぱいあっても悪くはないがどうせなら俺も何かに特化したい。

とりあえず攻撃魔法は横に置いておこう。

魔法がだめなら物理は?

って魔法から離れるとか本末転倒だな。

それに物理特化はグリズがずば抜けてるか。

シマリは統率が特化してるしハクロウは移動に特化してる。

みんなとがった奴ばっかだな。

クロコも水中戦にとがってるし。

となると残りは…空か。

空中か、胸熱だな。

よし、ではどうやって空を飛ぶか考えてみよう。

まずは翼。

天使のような翼を背中に生やして羽ばたいて飛ぶ。

魔法でそんな事が可能なのか?

まず魔力を凝固させないといけない。

…イメージが難しそうだ。

次に重力。

重力制御が出来れば人類の夢がまた一歩前進するな。

その夢は魔法で重力を発生させることができれば実現可能なんだろうけど。

そもそも重力とはなんだ?

…。

いやもちろん地球の重力に引っ張られて物が落ちるって事はわかってるよ。

だけどその引っ張る力は何か?

といわれるとピンとこない。

俺の勉強不足のせいだろう。

なのでイメージがさっぱりわかない。

よって却下だな。

最後に念動。

PK、サイコキネシス。

超能力でおなじみのあれだ。

念動力で物を動かしたり自分を浮かせたりする。

重力よりはイメージしやすい。

俺が何気なくつくり出す魔法。

あれはこの世界では魔法なんだろうが、俺はいつも念じて出してるので超能力といってもよい(適当)

だからあれを念じて動かす事ができれば空だって飛べる!はずだ。

とまあ翼、重力、念動の3つの候補を挙げたが、念動で試しよう。

早速俺は左の掌に小さな魔力の塊を出した。

これを念じて動かせば成功な訳だ。

30分ほどひたすらうねってみたがピクリともしなかった。

何かが足りないのか?

イメージが足りないのか?

ちゃんと上や右に動くようにイメージはできてるんだけどな。

何かが足りない。

──魔法には思い込みも必要だからね

ネズミの声が聞こえた気がした。

いや多分気のせいだろう。

でも肝心な事を思い出した。

思い込みだ。イメージするだけじゃダメだ。

絶対に動かせれると思い込め。

──動け!

そう念じると少しではあるが魔力の塊が少しだけ上に移動した。

おお!

イメージ通りの距離は動かなかったがちゃんと動いた!

そのまま右に動かすと、今度はちゃんとイメージ通りに動かせる事ができた。

かなり順調だ。

この後1時間ほど使って両手に出した魔力の塊を、イメージ通りに動かす事まで出来た。

大進歩だ。

あとはこの念動で自身を飛ばす事ができるかだ。

10分ほどがんばったが体はさっぱり動かなかった。

さすがにこのままでは動かせないか。

多分いろいろ足りないんだろうな。

発想とかイメージが。

もっとよく考えろ。

魔力の塊を動かす事はできたんだ。

…だったら魔力の塊を大きくしてその中に入ってみるのはどうだ?

ってかそもそもこの魔力の塊何なのだろうか。

いつも最終的には握りつぶしてるが、これを何かにぶつけるとどうなるんだ?

かなり小さな塊を地面に移動させてみたが水風船のようにベチョと割れるように霧散した。

小さすぎて攻撃力があるのかどうかわかりにくい。

ひとつわかったのは物に当たると割れるって事だ。

まあ握った程度で霧散していたからな。

そうなると中に入っても障害物に当たったら消えてしまう。

そもそも中に入るときに霧散しそうだ。

ただ出すのではなくてイメージして風船のようにしてみたらどうだろうか。

よし早速実験だ。

10分後、ブニョブニョした魔力の塊が作れるようになった。

副産物として遠隔爆弾もできた。

簡単に言えば離れた場所に置いて念じたら破裂させる事が出来るのだ。

中に別な何かを入れれるようになればいろんなことができそうなのだけどな。

まあでも魔力の風船は作れるようになったってのはかなりの進歩だ。

今度はどうやって入るかが問題になった。

大きなのを作って入ろうとしたがブヨンと抵抗されてしまう。

そうか掌に作るんじゃなくて体全体を覆うように作ればいいのか。

早速試そうとしたが…。

いやまて、これ息できるのか?

入って窒息して死にましたとか洒落にならんよな。

どうしたものかと思案してたら看守が降りてきた。

「なんだか騒がしいな」

怪訝そうな顔をしていた。

「そりゃ無実の罪でこんなところに放り込まれたら腹も立つだろ?八つ当たりで壁を殴るのくらいは目をつぶれよ」

咄嗟な言い訳が口から出た。

「フン、姫をさらっておいて無実とかよく言うわ。ほれ、メシだ」

看守が下の隙間からトレイを入れる。

粗末なパンに見たことのないスープだ。

「なんだこれ?」

スープに指を差すが、メシでるだけありがたいと思えと言い残し戻っていく。

とりあえず魔法の事はひとまず置いといて出された晩飯をじっくり眺めてみた。

この世界にやってきてパンをはじめてみる。

いや調理されたものを見るのが初めてだ。

グリズの町では素材をただ焼いただけだったからな。

まあそれでも一応は調理だけど。

パンは小麦を練って丸めて焼く。

りっぱな調理だ。

この得体の知れないスープも多分そうだろう。

それにしても本当に粗末な食事だな。

早速パンを、と。

…。

パンはとてつもなく固かった。

触っただけで簡単に確認できた。

おいおい、こんなの齧ったら歯が欠けるんじゃないか?

パンはひとまず置いといて問題のスープを鼻に近づける。

においは特に何もないな。

熱くもない。

小指をちょんとつけて舐めてみる。

…まずくはないがおいしくもない。

とりあえずこの硬いパンをスープに浸してみた。

硬いフランスパンなどをコーヒーとかに浸して柔らかくして食べる方法だ。

俺はやった事はなかったが、さすがにこのパンは齧るには固すぎるので試してみた。

…ウマー!

この食べ方がおいしかったのか、それとも久々のパンがおいしかったのかはわからなかったけど、とにかくおいしかった。

あっという間に完食した。

あんなに粗末にしか見えなかったのにこんなにおいしいなんて。

感動した。

そして満足したら睡魔が襲ってきた。

食ったら寝る。

自然の摂理だ。

魔法の続きを試したかったがまあ今はこの睡魔に身をゆだねるか。

そしてそのまま眠いについた。


変なにおいに気がづいて目が覚めた。

なんだか胸騒ぎがする。

「火事だー!」

遠くから叫び声が聞こえた。

火事だと!?

おいちょっとまて。

あわてて格子を握る。

「おい開けろ!」

こちらに少しずつ煙が進入してくる。

ここは地下のはずなのになぜ煙が。

考える時間はなさそうだ。

誰も来る気配もない。

火の回りも早そうだ。

とりあえず魔法で格子を破壊する事にした。

地の力を借りて格子の下から礫を噴き上げさせるが格子は壊れなかった。

しかし地面がえぐれたので簡単に格子が外れた。

俺はそのまま出口へ向かった。

がそこは火の海だった。

守衛室に大量の木が置かれていて、それを媒体にして炎が燃え盛っている。

「ここからの脱出は無理か」

そのまま引き返すがもちろんどこにも出口などない。

くそ、万事休すか。

ゲホゲホと激しく咳き込み意識が遠のく。

…これまでか。

「武田様、大丈夫か」

意識が朦朧としてるなか、ハクロウの声が聞こえた。

「ハク…ロウか」

「武田様。我に掴まれ」

目の前にハクロウがいた。

俺はハクロウの首に掴まる。

「脱出する」

俺はそのまま気を失った。



目を覚ますと森にいた。

「ここは、どこだ?」

上体を起こしまわりを見ると、真横でハクロウは倒れていた。

「お、おいハクロウ」

ハクロウはぐったりとしていたが息はあるようだ。

「あ、武田様お気づきになりましたか」

俺が起きたのに気づき、少し離れた場所にいたトムが近づいてきた。

「ハクロウ殿はかなり消耗していますが、命に問題はありません」

ハクロウを見ると以前魔力を使いすぎた時と同じ症状のようだ。

心配ではあるが大丈夫のようなので一安心。

「一体どうなさったのですか?先ほどハクロウ殿が急に武田様の身が危ないと言って風の魔法で移動したと思ったら、今度は武田様を担いで風の魔法で戻ってきた時にはとても驚きました」

そうか、俺は火事で閉じ込められたんだった。

そしてハクロウが助けに来てくれた。

そして覚えたての魔法で俺ごと風に同化して移動したのか。

よく俺は無事だったな。

でもそのハクロウのおかげで一命を取り留めたのだ。

「ありがとうハクロウ」

やさしくハクロウをなでる。

さて問題の火事は何故起きたのか。

俺は顎に手を添えて思案顔になる。

火の不始末どころではなかった。

誰かが故意に放火をした。

あの適当に放り込まれた大量の木。

明らかに俺を殺す為の放火だろう。

犯人は誰か?

一番の容疑者はあの侯爵のおっさん。

俺を憎んでいたからな。

俺のせいでもあるが。

だけどあのおっさんが放火で俺を殺すのはどうもしっくり来ない。

八つ裂きにしてやるとか息巻いてたし。

でも俺が誘拐犯じゃなかったと潔白されたとすれば、放火で殺しにきたとも考えられる。

一番の容疑者だな。

他には、俺が大いなる者だって知ってた者の犯行。

知ってるのは立花とハクロウとトムか。

ハクロウとトムはまったく動機がないので除外する。

特にハクロウは命がけで助けに来てくれたしな。

となると立花か。

…いやあいつがこんな事をする意味がわからない。

ハクロウやトムと一緒で動機がないと考えても問題ない。

とすれば大いなる者が俺だって知ってるやつの犯行ではないって事か。

いやまて。

あのネズミも知っていたな。

いや無いか。

意味深な言葉を言ってはいたが、放火で殺すにはいろいろおかしな行動もあった。

なにせ俺に魔法の使い方を教えてくれたからな。

もしかして魔法を使いこなして脱出しろって試練だったとか。

んー。

大いなる者の資格のテストとか。

絶対に違う気はするが一応頭の隅においておこう。

後は立花から俺が大いなる者だって事を聞いた奴の犯行。

それだと目星もつけれない。

それ以外に考えられるのは…あのレイニーという親衛隊長。

命令されない限りあの男が個人で俺を殺そうとするのは多分ないだろう。

以上の推理で一番怪しいのは、侯爵のおっさんか。

決め手がないから容疑者どまりだけどな。

とりあえず今後どうしようか。

もはや話し合いができない状況になってしまった。

やっぱ普通人が頑張った所で出来る事なんて限られてるからな。

だったら普通人で行動するのではなくて大いなる者として行動してみるのはどうだ?

確か予言では国が混乱して人心が離れ災害が起こるだったか。

さすがに災害は起こせないし起こって欲しくないな。

大いなる者か。

…とりあえず大いなる者としていろいろ考えてみるか。

そのためには魔法を使いこなせるように練習しないとな。

「考えがまとまりましたか?」

俺の思案を邪魔しないように控えてくれてたのか。

トムの頭に手を置いて、ああと答える。

「ただ魔法の練習をしないといけない」

「そうでしたか、私も武田様と別れてからいろいろ試しておりました」

「それは心強いな」

「もしかして私は武田様のお役に立てますか?」

「ああ、是非ともお前の力を貸して欲しい」

「はい喜んで!」

とても嬉しそうに目を輝かせる。

「実はな、俺もある程度魔法を使えるようになったんだ」

ネズミと会った時の話を聞かせる。

「名前を貰った者の様に流暢に話すネズミですか?聞いたことありません」

頭をひねりながらいろいろ思い出そうとしているようだ。

「でも魔力を感じられるようになったのは僥倖でしたね」

「ああ、あのネズミのおかげだ」

「それでどのような魔法を練習なさるのですか?」

これだと言って左手に小さな魔力の塊を出す。

「それは以前から出されていた魔力の塊ですね」

塊を大きく円を描くように動かして見せた。

「おおお!すばらしいです!」

そしてそのまま地面に落とした。

俺はなんにも感じなかったがトムはすこしまぶしそうに目を細めた。

「おっと悪い、俺にはなんにも感じないのでつい」

「武田様は魔法を無効にするアンチマジックの持ち主ですからね」

そうか、自分の魔法も防いでいたのか。

「でもアンチマジックがあるのにこうやって魔力を出して操作できるとかおかしいよな」

「じかに魔法に触るのがダメなのか攻撃性のある魔法だけ選別するのか、どちらかなんでしょう」

なるほど。

「とりあえずさっきの大道芸は俺が思い描いてる魔法の練習だ。空を飛ぶ魔法のな」

「空ですか!」

トムはとても驚いたようだ。

「そうだ、いろいろ考えてとりあえず空を飛んでみようと思った」

「空を飛ぶのと先ほどの魔力の塊を動かすのはどうつながるのですか?」

「空を飛ぶといってもいろいろ方法がある。たとえば鳥だと自前の羽で羽ばたいて飛ぶ」

「そうですね、鳥は自身の羽で大空を掛ける事ができますね」

「あとは難しい話だけど重力だ。これは説明するのもめんどくさいし実践も不可能だ」

「重力、ですか。物が落ちたりする時に働く力ですね」

トム君、実は超頭いいんじゃね?

「それだ、その理論を使って空を飛ぶんだけど…さすがに俺の頭ではイメージすらできなかった」

「私はそれで空を飛ぶとか、そんな発想すら思い浮かびませんでした」

普通はそうだろう、俺だってなにかの本で知った情報だし。

「最後に念動だ。簡単に言うと念じて物を動かす。すごいわかりやすいだろ」

「念じるだけで…動くものなんですか?」

さすがに詳しい理論とかはわからないよ。

「魔法だってそんな感じだろ?動かすかは知らないが念じて発動させる。同じ事だ」

たぶん…だけど。

「そういわれてみれば魔法の仕組みとかもよくわからないですね。考えもしませんでした」

魔法の理論とかも知りたいがまあ今は空を飛ぶ事が優先だ。

「それで魔力の塊を動かす事に成功した。という事は自分だって動かす事も可能なんじゃないかってね」

「なるほど、素晴らしい考えです!」

「イメージしやすく魔力の塊で体を覆ってみようと思ったんだけど、そうなると呼吸とかできるのかが気になってな」

左手に今度は魔力の風船を出す。

そして地面に叩きつけるが跳ね返り、そのままトムにぶつかるが割れずにそのまま跳ね返る。

「すすすすごいです!なんですかその魔力は?!」

トムは興奮して魔力の風船を目で追っている。

「これは体に纏っても壊れない用にしたものだ、今までの奴は物にぶつかると破裂してしまってたからな」

「すごいです!よくそんな短期間でいろいろと、さすがは武田様です!」

トムのベタ褒めに、いやいやいやたいしたことはないよと謙遜を装うが笑みが顔に出てしまった。

「まあそれでだ、これの中に入ったら息できるかどうかわからないだろう?密閉されるし」

俺の言葉にトムは少し考える。

「あの武田様。球体にこだわる必要はないのではありませんか?」

ん?

……!

その言葉に俺は驚愕した。

「そうか…つい球体ばかりに気をとられていたが形を変えればいいのか」

そしてそのまま思案すること10分。

「出来た…」

紙と同じペラペラで長方形なものが出来た。

普通に操作も出来た。

「トム、悪いけどそれの上に乗ってみてくれないか」

トムの前に魔力の紙を置いた。

トムはおそるおそるその上に乗った。

「ゆっくり動かしてみるがいいかな?」

「は、はい!」

かなり緊張しているようだ。

「じゃあ動かすぞ」

ゆっくりと上昇させた。

10センチ、30センチ、1メートルとどんどん上昇していく。

「おおおおおお!」

トムの興奮の雄たけびが聞こえた。

「武田様!浮いてます、すごいです!」

とりあえずは魔法のじゅうたんが完成した。

トムが乗っているのとは別の今度は2メートルの正方形な魔力のじゅうたんをつくりその上に乗った。

そしてそのまま同じ様に上昇させた。

「おお、おおおおおお!」

「すごいです!」

トムは俺の方に飛び乗ってきた。

そのまま魔法のじゅうたんを上昇させそして前進させた。

思い通りに動いてくれた。

すげえええええ!

そして俺とトムは大はしゃぎで30分ほど遊泳した。


「素晴らしいの一言でした」

トムは興奮で少し疲れているようだけどとても満足げだ。

だがこれはまだ空を飛ぶ第一段階に過ぎない。

「トム、最終的にはじゅうたん無しで飛べるようになる事だ。まだまだ先は長いぞ」

「はい!」

結局この後はハクロウのそばでトムと一緒に爆睡した。

明け方ではあったが俺も興奮して疲れていたようだ。

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