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不思議な国の…俺?  作者: 田中AG
10/12

第10話

昼を過ぎたあたりで目覚めた。

ハクロウもトムもすでに起きていた。

「おはようございます武田様」

起きた俺を見て挨拶する。

「ああ、おはようトム」

「お早う、武田様」

ハクロウも挨拶する。

「おはようハクロウ。そして昨日はとても助かった。ハクロウは命の恩人だ。ありがとうハクロウ」

俺はハクロウの頭を撫でた。

「あのくらいなんでもない。我はそれ以上に恩を感じている」

言葉はそっけなかったが尻尾はすごい勢いで横に振れていた。

俺はもう一度ありがとうとつぶやいて首を抱く。

トムもうれしそうににこにこしていた。


遅くなったが朝食、いや昼食をとった。

そしてすぐに作戦会議を始める。

「俺は大いなる者だそうだ。だけどとりあえず魔王を名乗る事にする」

「魔王と勇者でない強大な力を持つ大いなる者を捨てるという事ですか?」

「いや捨てたりはしない。そしてもちろん魔王にもならない。ただ方便として名乗り上げる」

「方便の魔王になる理由はあるのですか?」

「簡単な話だ。そう名乗った方が悪役になれるからな。そして悪役になってとりあえず立花を公衆の面前で大々的に誘拐する。そうする事によって俺の悪名は高まる。予言では国が混乱して人心が離れ災害が起こるらしいのでそれを最小限の被害で誘発する事にした」

「わざわざ自発的に起こさせるんですか?」

「そうする事によって予言を終らせるんだ。そうすれば俺も心置きなく元の世界に返れるし。まあ帰り方がわからないけどな」

「あ、そのことなのですが武田様は別世界なる場所から来られたのですか?」

おっと言ってなかったか。

「そうだ、ここの世界とは違う世界。魔法とか一切ない世界だ」

「魔法、ないと不便」

「そうでもないさ。魔法の変わりに科学というものが発達してるからな」

「その科学とはなんですか?」

「難しい質問だな。例えば、500名の人が入った大きな箱が大空を飛ばす事が出来る。国から国へと長距離をな。しかもあっという間に移動できる」

飛行機の話をしてみた、ざっくりとだけど。

「大空を飛ぶ箱ですか!」

「そうだ、地を走る箱もある。それは同じ道しか往復できないが一回で1000人を運ぶ事ができる。ハクロウの加速の魔法とほぼ同じくらいのスピードでな」

今度は大雑把に電車の事を教えたやったがトムもハクロウも驚愕している。

「我と同じ速度で、1000人…」

「だがそれは科学の片鱗だ。ごく一部といってもいい」

テクノロジーとか言葉は知ってるけど説明とかは不可能だし、このくらいでいいか。

「そのような国から…武田様にはいつもいつも驚かされます」

トムの尊敬の眼差しを浴びながら話を戻した。

「話を戻すが、俺が魔王と名乗れば国から選ばれし勇者が現れて、そして俺を討って終わりだ」

ハクロウは不服そうに吼える。

「武田様は、勇者になど負けません!」

ハクロウは俺を慕ってくれているが、芝居なので負ける必要性を説明した。

「わざと負けるんだよ。そうして姫を救い出しハッピーエンドだ。俺は違う国にでもいって帰り方を探すさ」

「ひとつよろしいですか、武田様」

トムが改まって聞いてきた。

「ん、なんだ?」

「どうして武田様はあの王女に肩入れなさるのですか?」

「んー、あいつが俺を頼ってきたからだ。あいつの事はぶっちゃけ嫌いの部類に入るが、それでも国のために世界を渡って俺に助けを求めてきたんだ。だったら男としてその願いを叶えてやりたいと思うだろ」

「武田様は寛大なお方です。私たちに名前を与え、好きではない人の願いもほっとけない。自分のことは本来自分で守らないといけないのに武田様は森や町に住む皆も守ってくれた。武田様は本当は勇者なのではないのでしょうか」

勇者か、そんながらでもないな。

ただ自分のやりたい事をやっているだけ。

自分勝手な奴だよ。

そんな事を思いながらトムの頭をなでる。

「勇者とか魔王とか関係ないさ。せっかく違う世界にいるんだ。元の世界にはない魔法がここにはある。昨日トムと一緒にはしゃいでたあの時間をこれからも楽しむだけさ」

「ですね、私もいっぱい手伝います」

「我も協力する」


あれから5日過ぎた。

はっきり言おう。

俺はかなりすごい事になった。

かなり自在に形を変えて操れるようになった。

最初はハクロウの何気ない一言。

魔法のじゅうたんを出して空を飛ぼうとしたらそれは盾ですか?と尋ねられた。

盾…だと?

そこでひたすらイメージして魔力の硬質化に成功した。

ちなみに俺の出す魔力には俺の魔法を打ち消すアンチマジックの効果もそのまま備わっていた。

そしてその性能を試してみる。

トムの魔法攻撃を無効化し、さらにハクロウの物理攻撃にも壊れなかった。

ハクロウ曰く、グリズの攻撃も一発は防げる、だそうだ。

かなり無敵な盾が完成した。

次に位置を固定する事にも成功した。

魔法のじゅうたんで宙返りをしたら、もちろん重力が働きそのまま落下した。

低いところだったので怪我もなかったが、高いところでもし強風が吹いたら危険なので体にくっつけるようイメージした。

そしたら見事に成功した。

足の裏にくっつけて空を飛んでみたら見事成功した。

と、いう事は?

天使の羽をイメージして背中に固定させた。

だがしかし天使の羽が展開したままの状態でしか飛べなかった。

なので今度は動作する様にイメージした。

見事動作した。

そして羽ばたかせる動作をしながら飛ぶ事にも成功した。

魔王として立花を誘拐するのだから色も変えなければと思いイメージしたら黒色になった。

どんな色にでもイメージすれば変ええるようになった。

次に立花を誘拐するにはどうすればいか?

多分暴れられるかもしれないのできっちりと拘束する事をトムに提案されたので、縄のような細長い形に魔力を伸ばした。

思い通りに動作させれるように練習した。

そして俺は触手使いにもなった。

誘拐にはトムやハクロウにも手伝ってもらうので完成した盾を持たせてやりたい。

がしかしさすがに装備は不可能なので体表面を覆う薄い膜を張る事に成功した。

そしてその膜を硬化する事もできた。

かなり万能に使える魔力であるが、いかんせん俺のイメージが貧困すぎて他にどう効果的に使えばいいのかがなかなか浮かばない。

さすがは普通人たる俺だ。

そこんとこもぬかりなく普通の知能だ。

立花の式が明日なのをハクロウがすでに調べてくれている。

準備も万全、とは言わないが成功する確率はかなり高いと思う。

明日に備えて早めに寝る事にする。

寝坊して式が終っちゃったとか洒落にならないしな。



翌日。

盛大に結婚式が執り行われた。

城から盛大な行列が教会にまで続いている。

前回、王女に逃げられたせいかどうかは知らないが、かなり厳重な警備になっている。

四方にある門も今日はすべて閉鎖されている。

花嫁一行が教会の前に着いた時が決行の時だ。

普段の格好のままで翼もまだ展開していない。

俺、トム、ハクロウに防御膜をすでに展開している。

足元には透明のじゅうたん。

じゅうたんがなくても飛べるがトムをいちいち浮かせるのも面倒だしじゅうたんを使用することにした。

トムには衝撃で吹っ飛ばされても大丈夫なようにじゅうたんから命綱を伸ばして背中に固定している。

今回ハクロウは別行動なのでかなり前に分かれた。

そして花嫁一行は教会前に到着した。

茶番の始まりだ。


「ふっははははははははははははは!」

城方面から立花のいる場所に近づく。

声に気づいた立花や侯爵や護衛の者に見物客が一斉に俺のほうへ向く

「た、武田!」

立花が大声で叫んだ。

すごい驚愕な顔で。

そういえば俺はあの火事で死んだ事になっているのをハクロウが教えてくれた。

護衛の方はすごい怒声で指示がでている。

民衆の方はポカンとした感じだ。

侯爵も立花と同じように驚愕している。

その他の教会関係者もざわめいている。

「はじめまして、俺は魔王。この世界に恐怖と混乱をもたらす者だ!」

拡声器がないからずっとシャウトなのが厳しいな。

「魔王だって?」

「まさか。」

そのような声があちこちから聞こえる。

「え、魔王?」

立花は俺の魔王発言に何がなんだかわからず呆然としている。

アホ面になってるぞ、立花。

やっと統制が整った護衛が弓を構え出す。

おいおい、こんなところで矢とか撃ったら見物客にあたるだろ。

しかし護衛は弓を放つ事ができなかった。

トムの眠りの魔法広範囲バージョンが炸裂してばたばたと眠りに落ちていく。

見物客も巻き込まれて眠っていく。

「これが俺の力だ!」

俺の手柄ではないのだけどな。

「震えるがいい、泣き叫ぶがいい。そして絶望するがいい!」

眠りの魔法に抵抗した者もハクロウからの攻撃でそれどころではなかった。

ハクロウは加護の魔法を掛けこの群集の合間を抜けてどんどん不意をついていく。

護衛も俺しか見ていないので不意打ちが簡単に決まる。

「さて魔王たる俺が誘拐未遂などと、くだらぬ罪状をかけられているとか」

「何を言ってるんだ武田!しっかりしろ!」

武田武田と連呼しないでほしいな。

せっかく魔王を演じてるんだから。

「うるさい、黙れ!」

触手を左手から伸ばし立花の体を腕ごと巻きつける。

そのまま立花を宙に浮かべる。

「な、なんだこれは、やめろ武田!」

「クックック、誘拐未遂とくだらない罪状を撤回する事にしよう。これは誘拐事件だ」

ここまでは筋書き通りの展開だ。

トムは横でひたすら魔法を唱えている。

護衛がほとんど無力化できたので、目標を見物客に変更して魔法も硬直の魔法に変更している。

硬直の魔法はその名の通り、体が動かなくなる魔法だ。

魔法抵抗が少し高いと簡単に抵抗されてしまうのだけど、トムは素の魔力が高いので見物人相手には絶大だった。

見物人は体が動かなくて恐怖に陥っている。

「や、やめろ貴様!王女を解放しろ!」

侯爵のおっさんががやっと自分を取り戻したのか、大声で俺に指差してくる。

「お前か。お前には例を言うぞ」

ニヤリとわらってやると、侯爵のおっさんはどういうことだとつばを飛ばして叫んだ。

「お前があの火事で俺を殺そうとしてくれたおかげで、俺は魔王に覚醒する事が出来たのだ」

立花はすごい形相で侯爵のおっさんを睨む。

もしかしたら俺と同じように疑ってるのか。

だが残念な事に今の話はでっち上げなのだ。

申し訳ないが侯爵のおっさんは人身御供になってもらう事に決まってしまったのだ。

ブルブルと青い顔になり震え出した

「そ、そんなことは知らん、知らんぞ!」

あれ、実は大当たりだった?

まあどっちでいいけど。

「お前には感謝しているので俺から特別にプレゼントをやろう」

俺は右の掌にとても大きな魔力を溜める。

「や、やめろ武田!」

立花は俺の魔力の塊をみて顔面蒼白になっている。


「やめなさい!」


凛とした声が教会の方から聞こえた。

美人な大人の女性だ。

着ている服もとても豪華だ。

「わらわはこの国の女王サリュミデスキカネノ・カヂハベニギハケヌである。その魔法を収めなさい」

女王陛下だったか。

しかもやっぱり長い名前だな。

「なぜ俺がお前の言う事を聞かねばならない?」

「もちろんタダとは言わぬ。わらわの命と引き換えにこの国の市民の安全を約束しなさい」

お願いする立場なのに上からか、すごいな王族は。

「お前の命と引き換えにか、クックック悪くないな」

「やめろ武田!」

お願いだから武田っていわないでよ、盛り上がってるところなのに台無しだよ。

なので触手をもう一本だして猿ぐつわのように巻いて黙らす。

「だが今日は挨拶に来ただけだ。さきほどの宣告通りこの王女は誘拐するが、今回はお前や市民には手を出さないでおいてやろう」

「娘をはなしなさい!」

子を守る母。

ゾクゾクするほどの怒気だ。

「さすがにそこまでは甘くない」

そのまま立花を連れて上昇する。

眠っている兵士の中からレイニーが飛び出して俺に斬りつけてきた。

トムの最初の睡眠の魔法で眠らせたと思っていたが。やはりフェイクだった。

俺はレイニーの位置はずっと把握していた。

もちろん対策済みでレイニーの目の前に透明の風船型の壁を作る。

レイニーは剣を振り上げた状態のまま壁に当たり、そのまま弾き飛ばされる。

レイニーが落下するのを見た立花は俺をギっと睨むが無視した。

そして俺は練習の成果を披露すべく黒い翼を展開した。

俺のその姿を見た立花も女王も吹き飛ばされたレイニーも体の動かない見物客も、あと侯爵のおっさんも全員俺に恐怖や畏怖の念を抱いてくれたようだ。

「はっはっは!またお会いしよう!」

上昇しながら森へ去っていく。

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