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竜となったその先に  作者: おかゆ
第一章 出会い
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第12話 ウル村長の秘密

 午後の部は、思ったよりも穏やかに時は流れていった。

子供達はまだ学校から帰ってきていないし、大人達は大人達で別の仕事や買出しに出かけていった。


(・・・竜体に戻りたいな・・・)


どうもこの人間体でいると魔力が収まりきらないらしく、たまにものすごく身体が重くなったりだるくなったりするのだ。

だからそういう時は、とにかく運動をする。

体を動かす。

そうすると魔力が身体のエネルギーとして取り込まれるのか、問題は解決するのだ。


が、食事をすると魔力が戻るらしいため、俺は極力食事の量と回数を減らしている。

さっきも、昼食を取ったとはいえ、水一杯とパン1つだけだ。

魔力があるうちはお腹はそれほど減らない。


そして、俺は今村の外のあの大木の根元にいた。

そう、今夜ウル村長と待ち合わせている場所だ。

何故かというと、村長が何か仕掛けをしていないか、またはするつもりがないかを確かめに来たためだ。


・・・何もなかった。

子供達と遊んだときのまま、土が掘り出された様子もないし、草が抜かれた痕もない。

安心して、またうっかり角が出てしまった。


(心臓に悪いよ・・・この仕掛け・・・)


ふと、高いところに行ってみたくなり、俺は大木の幹につかまった。

そして、子供達が登っていくときに足場にしていた箇所を思い出しつつ、とうとう一番上まで登った。


「うわぁ・・・」


感嘆が出た。

手前には男達が元気に働いている小さな村、その奥には森、そして連なる山々。なんて素晴らしい眺めなんだろうと思った。

子供達が見せたがるのもわかるなぁ・・・。


風も気持ちよくて、俺はそのまま夜までここにいることにした。

いい感じに座れる箇所を見つけると、そこに座って眠った。




風が冷たくなったので目が覚めた。

辺りはすっかり暗闇に包まれていた。


(何時だろう?)


と思ったが、俺は時計を持っていない。

村長が来たら分かるだろうと思い、気長に待つことにした。


・・・結構待った。

なかなか来ない・・・。

一度帰って、時間を確認して来ようか・・・と思ったそのとき。

・・・木の下の空間が青白く光ったかと思うと、瞬間、そこに人が二人現れた。


吃驚したが、よく見てみると一人はウル村長だった。

もう一人は、知らないがっちりとした銀の鎧を纏ったなかなかハンサムな男だった。

・・・とりあえず、俺はその場で二人を様子見することにした。

あの鎧の人も気になるし・・・。


「まだ来ていないようですね」


鎧の人がキョロキョロしながら言った。

ウル村長も辺りを見回して、そうだねと言った。


「しかし、本当ですか? 天竜がこの村に現れたなんて・・・。 にわかには信じられません。 天竜はそう簡単に人里に姿を現さないはずでは?」


ちょい待ち。

なんでこの人天竜がいるって知ってるの!?


「わたしも初めて会ったときは驚いた。 天虎を従えた天竜など聞いたことがないし、黒い鱗の天竜も聞いたことがない。 一般的に天竜は輝くような明るい色とされてるからね。 まあ、一般にはあまり知られていないようだけど」


それは初耳だ。

竜はみんなこんな色なのかと思っていたが・・・。

あれか?

突然変異的なあれなのか?


「・・・隊長、やはり竜にお詳しいですね。 戻って来る気はないのですか?」


「・・・そのつもりだよ。 あそこにわたしの居場所はもう無いからね・・・」


隊長?

何の話だ?

戻るって、どこに?


「しかし、遅いな・・・」


ウル村長が時計を見た。

・・・そろそろいいだろう。

なにやら怪しげな話も聞けたし、鎧の人はウル村長を慕っているようだし・・・。

まあ、たぶん大丈夫だろう。


俺はなるべく音を出さないように木のてっぺんまですばやく登り、そこから大きくジャンプした。

そして、着地する直前足元に風を発生させて、音を立てること無くウル村長と鎧の人の真後ろに立った。


「いますけど」


鎧の人は文字通り飛び上がった。

ウル村長はあまり驚いていないようだったのが残念だが、鎧の人の反応が面白かったからよしとしよう。


二人は振り返って、俺を見た。

・・・ウル村長の目が意外と驚いたように見開かれていた。

これには満足した。


(・・・って、俺はどこのイタズラ小僧だよ!!)


「・・・ウルたい・・・ウル村長、この者が?」


「ああ。 天竜、セトだ」


なんか勝手に紹介されたんですけど。

しかも村長、さらっとばらさないでいただけますか!?

とか思ったが、口には出さずに黙っていた。

鎧の人は、村長が紹介した俺を上から下まで舐めるように見ている。


(・・・なんか・・・やだ・・・)


目を合わせたくなくて逸らしていた。


「これはこれは・・・なんと見事な雄竜か・・・」


・・・なんか恥ずかしいんですけど。

雄とか言わないでくれます?

俺一応心は人間なんで。


「だろう? お前、魔力は?」


「はい、この数年鍛えて、人並み以上には魔法を使えるほどにまでなりました。 そのおかげで、今は意識すれば隊・・・村長のように魔力を読み取ることができるようになりましたが、これはあまりにも・・・」


「そうだろう? わたしも最初に読んだときは飲み込まれそうになった」


そして数分ほど、二人は少年のような目をして時折俺を見ながら竜の話だの魔力の話だのをした。

・・・飽きてきたな~と思った頃に声をかけた。


「・・・で、俺を呼び出した理由はなんですか?」


すると二人はハッとなって、すまないと謝り話を戻した。

村長の話によると、この鎧の人はラルクというそうだ。

この世界にある国々をまとめる大国の騎士団の団長をしているそうだ。


(それってかなり偉い人じゃね?)


しかも、そんなラルクさんがウル村長に敬語を使っている・・・。

ルーネさんも変だけど、このウル村長もなかなか読めない人だ。


「・・・・・で、だ」


ウル村長が長々とラルクさんの説明を終えたところで、話は1つ終わった。


「セト、今ここで竜体になれ」


「・・・え・・・は!?」


この人、突然何を言い出すんだ!??

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