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竜となったその先に  作者: おかゆ
第一章 出会い
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第10話 ルーネの本性

 あの部屋のある家への道のりは、思った以上に長かった。

どうやら俺は、結構子供達と遊ぶのを楽しんでいたようだ。

・・・そういえば、俺って人間だったときは何歳くらいだったんだろう?

思い出そうとしたが、やはり記憶は曖昧で、ちっとも思い出せやしなかった。


(ちぇ・・・)


俺には自分の情報は何一つないのか。何かひとつでも思い出せれば、もう少し気が楽になるのになぁ。


・・・とか考えながら歩き続け、いつの間にか目的の家の前についていた。

そっと戸を開けてみる。

・・・ルーネさんはまだ帰ってきていないようだ。

よっしゃセーフ!!

軽い足取りで部屋へと向かい、ベッドに横になる。


フー・・・。


長く息を吐き出した。

横になって初めて分かったが、かなり疲れた。

俺はそのまま眠ってしまった・・・。




 目を覚ますと夜だった。


(寝たのは確か昼過ぎだったから・・・ずいぶん寝てしまったな・・・)


そんなことを思いながら、身体を起こそうと・・・・起こそう・・・。

・・・・あれ?

・・・・。

・・・身体を起こせない。


(何で!?)


と思ったが、すぐに分かった。

身体をベッドに縛り付けられているからだった。

・・・悪い予感しかしない。

この状況でいい予感などするはずがないのだが。

誰が縛ったかなど、聞かなくても分かる。

・・・ルーネさんしかいない。

この部屋に入ってきていたのは、トクサとルティとルーネさんだけだ。

トクサやルティがこんなことするはずがない。

やりうる人物はただ一人。ここまでする人とは思ってなかったが、間違いなくルーネさんだ。


俺は恐怖に駆られた。

竜体に戻ればこの縄を解けるかもしれないが、そんな荒っぽいことをしてこの家を壊すわけにはいかない。

しかし、人間の姿でも十分人間よりは力を出せるはずの俺でも、この縄は千切れない。

一体どういう仕組みの縄なんだ・・・。


試行錯誤しながら何とかして縄を解こうともがいていると・・・。


ギィィイ


ビクッとして、動きを止める。

見なくても分かる。

ルーネさんが部屋に入ってきたのだ。


「セト様?」


「は・・い・・・」


抜け出したのがばれたのか!?

だとしたら何で!?


「外に出られたそうですねぇ?」


「そ、そうなんですか・・・?」


ばれている。

完全に、ばれている。

先程から、俺の背中には冷や汗が流れていた。


「さぞ、楽しかったことでしょうねぇ?」


「・・・・・・・・・」


なんか、だいたい分かった。

ばれた理由が。

たぶん、子供達だ。

子供達は確かにルーネさんには言わないといったが、俺という初めて会う人間(まあ竜だけど)と遊んだのだから、親に言わないはずがない。

で、その親を通してルーネさんにも情報がいったってところだろう。


(・・・迂闊だった・・・)


「ところでセト様?」


「・・・はい」


「その縄、解けないでしょう?」


「・・・・・はい・・・」


「それねぇ・・・魔力の流れを強制的に止めることができるものなんですよ」


(あぁ、それでか)


「今は竜体に戻ろうとしても、無駄ですよ?」


「・・・そんなこと・・・思ってもいないですよ・・・」


なんだ?

この人は俺に何をする気だ?


「私が今から何をするか、分かりますか?」


ルーネさんはそう言って、先端のとがった細長い筒のようなものを取り出した。

・・・なんか、角に似てる?


「・・・いえ・・・」


ルーネさんはフフッと笑って、俺の頭の方へ来て座った。

何をするつもりだ?と思っていると、俺の耳の少し上の辺りに手を置いた。

・・・途端、身体の力がフッと抜け、指先一本動かすことができなくなった。


『な・・・にを・・・?』


声を出すこともできなかったため、念話をとばした。

するとルーネさんは少し驚いた顔をして、言った。


「あら、流石天竜といった所でしょうか? まだ念話はできるんですね」


『何を言って・・・?』


「知らなかったんですか? 人間体になった竜の弱点は、角を触ることなんですよ?」


・・・?

だって角は隠して・・・。


『角・・・?』


「どんなに完璧に人間体になっても、角は名残として少しですが残るものです。 まあ、人間と竜を見分ける1つの特徴ですね。 髪に隠れてめったに見分けられることはありませんが」


(・・・そんな見分け方があったのか・・・)


「さて、セト様には今から一週間後のこの時間まで、これをつけていただきます」


ルーネさんは、先程の筒のようなものをひらひらと振った。


『・・・つけるって、角にですか?』


「ええ。 これをつけますと、気を抜くと魔力がなくなったときのように角が出てきてしまいます。 ちなみに、この村の人間はある一部の人間を除いて、貴方が来たときの記憶を私が消してあります」


(記憶って・・・この人いったい何者!?)


「明日から自由に外へ出かけてもいいですが、竜だとばれたくなければ、常に緊張感を持つことですね」


確かに、できれば竜だとばれたくない。

トクサに聞いたのだが、竜は人間と契約することができるそうだ。

その後俺はトクサから竜に関する本を借りて動けない間読んでいたのだが、その本によると、竜には契約名というのがあって、それを教えた人間と一生を共にするのだという。


だが俺はその契約名とやらを知らない。

なんたって記憶が無い。セトという名前も、ルティからもらったものだ。

それでも、竜をほしがる貴族や王族は多くいるため、迂闊に姿を現して居所を知られるわけにはいかないのだと、本から学んだ。

竜がめったに見られない本当の理由を、俺はその本を読んで初めて知ったのだ。


そんなわけで、ルーネさんから与えられたこの試練はかなり困ったものだ。

記憶を消してくれたのはありがたいが、突然人間から角がニョキッと生えてきたら吃驚するだろう。


「ちなみに、この筒は魔法封じの呪文がかかっていますから、魔法を使うことは不可能ですよ?」


始終ニコニコしながら、とんでもないことをしてくれた。


『俺、ルーネさん苦手です』


「あら、私はセト様が大好きですよ?」


『ここまでしておいて?』


「好きだからこそ、です」


『・・・愛がねじれてます』


「よく言われます」


なんでここまで言っても笑顔なんですか!!

結構な暴言はいてますよ俺!


「あ、ほら、もう角が出てしまっていますよ?」


『・・・鬼・・・』


「それもよく言われます」


明日からのことを考えると、どうにもやるせない気持ちになった。


『とりあえず、手、離してください』


するとルーネさんはちょっと微笑んで、筒を角にすばやくはめると、そのまま角にきゅっと力を入れた。


『ひっ』


電撃のようなものが体中を駆け巡り、俺はそのまま意識を手放すこととなった。


視界が真っ暗になる前に、


(俺、この村に来て何回気絶するんだろう)


と思った。


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