EP008[何の罪もないスライム誘拐事件]
パイロット版はここまでとなります。
”異世界サーセン”を描き切ったら続き書きたいなぁ。その前にこの作品が人気になったりして……グヘヘ。
宮内率いる自称自警団と遭遇した日はスキル秘匿の為の行動で帰宅に時間も掛かった為、宮内からもたらされたスライムの出現情報を元に杉浦大地は翌日に公民館周辺を捜索して昼に差し掛かる前にスライムを発見することに成功した。もちろん自警団には見つかっていない。
* * * * *
種族:ミニスライム
【スキル】
◆下級鑑定眼では閲覧不可
◇内包マスタリー≪下級鑑定眼では閲覧不可≫
【ドロップ】
・スライムゼリー
* * * * *
「宮内さんが言ってたスライムってあれかな? 何かミニスライムってなってるけど……」
「わふ」
街道を目を凝らしながら探した結果見つかったのは小さなスライムだった。ただ、宮内の発言はスライムだったので瓦礫の隙間でウゴウゴしているアレを指した言葉なのか、それとも別扱いなのかがわからない。杉浦に問われたストレルカもわからないと答えを返す。
「消化速度とか満腹の制限があったらミニなりに胃袋の容量は小さいだろうから。その辺次第かな……」
とはいえ、そこは下級鑑定眼しか持ち合わせの無い杉浦では見つめるだけで集まる情報はこれ以上得られないのも事実。ストレルカに周囲警戒をお願いした杉浦はミニスライムに近づいていく。
「ラージラビットみたいに一定範囲に近づくと逃げるかと思ってたけど、目の前まで来ても慌てる様子はないな」
キャンプ場周辺で生息している魔物のラージラビットはノンアクティブモンスターだ。こちらに危害を加えないのは勿論の事、近づけば一定の範囲でダッシュで逃げ始める。それでもラージらしくドッスドッスと普通のウサギに比べれば遅いので辛うじて仕留める事は可能なのだが……。目の前のミニスライムは杉浦が近づいてきた事も理解した様子はない。
お座りしてまじまじと観察するストレルカが今にも前足を出しそうに見えた杉浦は念の為注意する。
「ストレルカ、どこまで消化する力があるかもわからないんだから不用意に触ちゃダメだよ」
「くぅ~ん、わん」
わかってる、と言わんばかりの表情で出そうだった前足を揃えて振り返るストレルカの表情には誤魔化しが見えた気がした。
とりあえずキャンプ場に連れて行く前に土や草や石を消化するかどうかを検証しようとその辺から回収した素材を確認する。一応魔物とはいえ生きている。食事が必要な点は同じだと考える杉浦はなんでも消化するとは考えていなかった。
「まずは草……。おぉ、反応した!」
雑草をミニスライムに近づけると嗅覚でもあるのか反応を見せるミニスライム。ゆっくりとした動きで差し出した雑草に触れると、これまたゆっくりと体内に吸収を始める。杉浦の手には雑草を引っ張る微かな感触が伝わり、手を離すとそのままミニスライムは身体の中心に雑草を取り込み徐々に消化が始まった。
「草は食べる、と。次は土だ」
こちらは残念ながら何も反応を示さない。続いて瓦礫から回収したコンクリートと地面に転がっていた石ころを差し出すも同様に反応を示さず移動を開始してしまう。
「まぁこれも生物としては普通かな。土ってミネラルとか塩分を吸収する為に食べるって聞くし、石も消化を助ける為とかで最終的には吐くらしいし……。最後に鞄な。これを消化されたら移動手段に困るから頼むぞ」
杉浦に勝手に期待を寄せられるミニスライムだが、鞄も同様に食べ物とは認識しない様子で興味も引かれない。これにてひとまず鞄に詰めて移動させる事は出来そうだと杉浦は判断して両手でミニスライムを包んで持ち上げる。
「なんか……子供心をくすぐる奴だなお前は。丁度両手のサイズだから零れ落ちないしヒンヤリしてて良いじゃないか」
「わ”ふ”!」
ストレルカ、嫉妬のかみつく攻撃。杉浦は悲鳴を上げてミニスライムを取りこぼしてしまったが、落下ダメージを無視するボディをお持ちのミニスライムは特に気にした素振りも見せずに地面にポヨンと着地した。杉浦の恨めしい視線にかみついた張本人のストレルカは、何か文句でもあるのかと頭突きを繰り出した。今度は痛くはない甘える様な頭突きなのでその心を読み解き杉浦も頭を撫でて許した。
実際に血が出るほどの力は入ってなかったので悪戯レベルの甘噛みだったのだろう。
今度は堪能せずにスライムを鞄に詰め肩から掛けてストレルカに騎乗する。
「もう少し見回って普通のスライムが見つからなかったらキャンプ場に戻ろうか」
先日、千代が予報した通りに空模様もかなり怪しい。雨が降り始める前にキャンプ場に戻らないと暖かくて美味しい昼食もお預けとなってしまうので杉浦とストレルカは捜索を続けて追加でもう一匹のミニスライムを確保してキャンプ場へと戻る事にした。
その前に通り掛かる駒原の倉に杉浦は顔を出す。
「管理人さ~ん!予定通りにスライム捕まえて来ましたよぉ~!」
「お~おかえり、杉浦君。早かったね」
さっそく鞄二つに確保しているミニスライムを渡してチェックしてもらいながら実験の説明を行う。
「なんか普通のスライムが居なかったのでミニスライムを確保してきました。草は食べましたけど土や石は食べなかったので食性は俺達とあまり変わらないかもしれません。消化速度は結構遅いと思いました」
鞄の一つのジッパーを開いた駒原はミニスライムの様子を見ながら杉浦の話を聞いている。徐に骨ばった手でスライムに手を伸ばし撫でると返って来た弾力性と冷感に思わず微笑む。どうやら消化したくない物に囲まれた状態で身動きが取れない場合はロクな抵抗もせずにじっとしている性質を持つらしい。
「良い感じだね。でも、これから雨だしすぐにトイレの設置は無理だろう?」
「ですね。少しずつトイレのパーツは加工してますけど、大工のスキルじゃないのでどうしても時間が掛かってしまって……」
現在のトイレ事情は女性用トイレと男性用トイレでエリアを確保しており、用意された穴に致してから埋める作業でなんとか誤魔化している。数日分とは言え既にエリアから漏れ出る匂いは自分達キャンプ場においては社会問題となっていた。
とはいえ、今すぐにトイレ用の縦穴を掘ってミニスライムを放ったとしても雨で水没して最悪ミニスライムが死亡する可能性もある訳で……。穴を掘る時間と屋根有のトイレを設置するには修正も含めて2~3日は頂きたい所だった。
「じゃあ、キャンプ場に放しておいてあげようか。トイレの穴の一つでも掘り返してこの子達を放して食べるかの実験も必要だろう? この辺はフジの仲間しかいないし安全だよ」
確かに駒原の下にしろ、杉浦たちのテントにしろ、変にその辺の物を消化されても困る。スライムの家も用意出来ていない以上は駒原の言う通りにキャンプ場で好きに過ごさせるのが良いだろう。ラージラビットも草食なのでミニスライムを捕食する事もない。
駒原の倉から出たその足で杉浦は男性用トイレに向かった。ストレルカは自分達の帰還を知らせるべく三枝家のテントへと向かわせた。
「よし、さっそく掘るか……」
自分達の排泄物とはいえウンコを掘り返すなんて……。息を止めて初日に埋めたウンコを掘るべく近くの大樹に立てかけていたトイレ用シャベルを手にした杉浦は気合を入れてトイレ(仮)を掘り返し始めた。
埋めた土はかぶせる程度で固めていない。スッとシャベルは入っていき5回目で土の中から見覚えのある棒状の健康的なウンコが転がり出てきた。雨が降ると湿気も手伝って臭いは更にひどくなるだろう。鞄の中からミニスライムを取り出してウンコの側にそっと置いてやるとその刺激的な香りに誘われるのかミニスライムはウンコの方へと動き始める。
「ウンコに多少なりとも栄養ってあるのか?」
そもそも生物として摂取したところで益があるのか不明なウンコにミニスライムは触れるとおずおずと身体の中に取り込み始めた。
「おぉ!美味しいか? 無理するなよ?」
ウンコを食わせる鬼畜の所業を試している張本人から驚きの言葉がミニスライムに送られる。ただ、言葉の意味を理解する知能も持たないミニスライムは順調に健康の象徴を消化していく。大体、一分強で象徴は消火され消えてしまった。ウンコを食べたミニスライムを今度は杉浦がおそるおそる両手で抱き上げ臭いの届かない場所に移動させて臭いが移るのかの確認に入った。もちろん移動中に腕を限界まで伸ばしてしまった点はミニスライムに申し訳ない気持ちを持っている。
クンクン。
人間の鼻からすれば臭いは無いと思う。色に関しても食べた物が反映されるわけではないのか捕まえた時と同じそのままの色合いなのでこれは上手く行きそうだと杉浦は内心ほくそ笑んだ。あとは妙子と千代がウンコを食べたミニスライムを不用意に抱き上げない様に注意だけは忘れない様にしようと決意をしてからこのミニスライムはこの辺に放しておくことにした。
残りの一匹は女子トイレの近くに放すように後で妙子に渡そうと杉浦は雨が降る前に昼食を食べる為に三枝家のテントに向かうのであった。
読み終わり『続きが気になる』『面白かった』など思われましたらぜひ、
広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援いただけると執筆の励みになります。
よろしくお願いします。




