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異世界と混ざった現実世界でデスゲームとスキルライフを満喫する!~原生林に飲み込まれたキャンプ場からお送りします~  作者: 黄玉八重


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EP002[三枝妙子]

 水筒とパワーメイトと武器にはナイフを選択してウエストポーチに詰めると杉浦はキャンプ場を後にした。

 道路からキャンプ場までの未舗装の道は木の根に荒らされてはいたが避けて通る事は難しくなかった。むしろ道路に出てからが本番と言えた。何故ならアスファルトの一枚板や家屋の石垣が崩されたりガードレールが道を塞いでいるからだ。


「うへぇ……管理人さんこの道を通ったのかよ……。倉は無事って言ってたし先にキャンプ場までの道を整備するべきかな」

 まともに平坦な足場が無く常に足裏を石がツボを刺激してきたり指先がグニャっとなったり痛い思いを何度もしながら帰路を進む。

 途中で人の気配を感じて近づいてみると崩れた家の一部に下半身が挟まっている女性を助けようと何人かの男性が被害者の前で話し合っている姿が見えた。長らく捕まるわけにはいかないが無視するには後味が悪いと考えた杉浦は近づき声を掛ける。

「あの……何か手伝えることありますか?」

「おぉ!丁度手がもう一つ欲しいところだったんだ。俺達がコイツを持ち上げるから慎重にこの人を引き摺り出してもらえるか?」

 振り返り返事をした男性の指示に従いすぐに下敷きになっている女性に声を掛けて脇に手を入れる。


「ゆっくり引きますけどヤバそうなら言ってくださいね」

「わかりました。よろしくおねがいします」

 男性たちが声を合わせて一気に持ち上げた隙に上半身を持ち上げて引っ張っていくと足首付近が何かに引っかかっているのか抵抗を感じた。

「足、どこかにハマってますか?」

「ちょっと待って……うぅ……よし、抜けた」

 女性の下半身はちゃんと機能している様子で安心した。彼女の言葉に従い更に引っ張るとスルスルと身体は瓦礫から抜けて行く。完全に安全と判断出来る場所まで引き摺った後に男性陣に声を掛けて瓦礫からの救出劇は終わった。


「兄ちゃん、助かったぜ」

「よくやってくれたな!」

「本当に丁度良い所に現れてくれたよ、ははは!」

 細身のおじさんから脂肪を蓄えたおじさんまで皆が背中を叩き労ってくれる。だが、杉浦には自宅に帰るという使命がある。感謝に答えつつ「じゃあ自分は家に帰って荷物取ってこないといけないので……」と早々にその場を離れて彼らに別れを告げ再出発した。

 その後も見かける救出劇の手伝いを行ったりしながら魔物にも警戒していたがラージラビットしかこの付近では見かけることは無かった。それにラビット達は意識せずに近寄っても普段通りにドスドスと跳ね回ってこちらを気にする様子はないが攻撃の意思を持って近づけばそれを察して逃げて行く事が判明した。ノンアクティブの魔物ならキャンプ場付近はかなり安全と言えると判断材料を得た杉浦は行き先の無い人を見掛けたらキャンプ場を目指すように伝えようと心に決めて帰路を進む。


 予定では1時間半程度だったのに道路が機能していなかった点とちょいちょい人助けをしていたからか2時間半も掛かってしまった。それでも何とか住居であるアパートに辿り着いた杉浦の視線の先には見事に倒壊した独り暮らしを始めたばかりの新居の姿があった。

 まぁ築年数を考えれば倒壊は仕方ない。どちらかと言えばこの瓦礫の山の中から自分の荷物を探さなければならない事に絶望する。それに嫌な臭いもした。帰路の途中にも時折匂う時があり決まって近くには潰れた遺体が転がっているのだ。この集合住宅は2階建ての6世帯が住む事が出来るアパートで杉浦の部屋は203号室なので遺体に出会わない事を願いつつ瓦礫を登り始める。


「まずは丈夫なキャリーケースを見つけたいな……この辺りか?」

 傍から見れば火事場泥棒に見えるかもしれないと警戒しつつ瓦礫を掘っていくと部屋に飾っていたフィギュアが首を失った状態で見つかった。悲しくないと言えば噓になるがこれからのキャンプ生活にフィギュアは一文の価値も無い為、見なかった事にしてそっと視界の外に投げて瓦礫の除去作業を進めて行く。

「お!先に服を入れてた収納ケースを掘り当てたぞ!」

 ここまでで既に1時間が経っていた。遺体に出会わなかったのは不幸中の幸いだが御天道(おてんと)さんが天辺に来ているので流石に春先とはいえ暑い。それに収納ケースは無事は無事だったのだが季節毎の服を6つに分けて収納しているのでどこまでを持ち帰るのか考えなければならない。

 考えていたキャリーケースは広げてもせいぜい一季節分しか持ち帰ることは出来ないだろう。だが、残りをここに置いておくと誰かに盗まれる可能性もあるし何度も往復するにはキツイと杉浦はうんざりしていた。


 いや、こういう時に異世界ならインベントリ入手イベントが発生するのではないか?

 ゲームや小説ではないのでそんな都合よく簡単に手に入るとは現実問題思えない。でも、試すだけならタダだ。視界拡張のスキルは死活問題に直面した強い不安の感情を抱いた時に入手した様に思う。ならば今回も邪念を排し心の底から純粋に願えば……。


 ——杉浦は瓦礫の山頂で膝を着き、両手を握り込むと祈った。

「(インベントリ欲しい!インベントリ下さい!インベントリ頂戴!インベントリインベントリインベントリッ!)」

 2分ほどそのままの体勢で祈ってみたが祈りは天に届かなかった。スキル取得のイメージが浮かばず、ただただ物欲に塗れた男が蹲ったまま動かなくなるという奇行に走っただけに終わった。

「大人しく往復するか……はぁ……」

 雨が降らないなら毎日1回往復で全て持って行こう、と甘えた考えを改めた所で杉浦の姿を見つめる人物が現れ声が掛かる。


「大地君!探したよ!」

 聞き覚えのある女性の声に収納ケースを持ったまま振り返るとそこには見覚えのある知人がラフな姿で立っていた。

「お妙さん!無事だったんだ!」

 三枝妙子。同じ大学で同じく1年生だが家庭の事情で入学が1年遅れた為年上のお姉さんという点を踏まえて先日のコンパ帰りに同じ帰宅の路で酔っぱらった勢いで[お妙さん]と呼ぶ事が決まったのだ。もちろんお妙さんは一緒に帰った事は覚えていたがお妙さん呼びに関しては覚えておらず未だに納得されていない様子だ。


「知り合いだから念の為に朝ここまで見に来たのに居ないから何かあったのかと思って心配したわよ」

「心配かけてすみません。昨日はキャンプ場に行ってたので倒壊時はここに居なかったんです」

 収納ケースを持ちながら瓦礫の山を下山する。妙子に言い訳しつつも彼女の前に降り立ち無事な姿を見せると彼女は安心したように顔を和らげてくれた。

「そっちは大丈夫でしたか?」

 妙子は杉浦の質問に顔を曇らせ答えた。


「無事……ではないわね。ウチは母子家庭だから母さんとこれからどうしようかって相談していたところ。今は先を考えながら大地君と同じ様に発掘作業中よ。この辺の避難所は軒並み地震と大樹で倒壊しちゃって機能してないみたいなの……」

 こんな世界になってしまったのであれば仕事はおろかお金さえどこまで価値があるかもわからない。頼りになる大黒柱が居ない母子家庭なら尚更この先に不安を感じても仕方ないだろう。

「じゃあ、こっちの発掘を手伝ってくれたらそっちの手伝いに行きますよ。スキルの件も相談したいし」

「スキル?」

 おっとスキルをご存じない。まあ住宅地に入ってしまえばラージラビットも入ってこないだろうしオタク知識に疎ければスキルなんて思い付きもしないよな。

 疑問を浮かべつつ一緒に瓦礫の山に登ってくれた妙子に杉浦はスキルやステータスについて説明をしつつ必要なキャリーケースと各種収納ケースは分担作業のおかげで20分程度で全てを見つけることが出来た。


「ふぅ~ん、そのインベントリって便利そうね。本当に取得出来るならだけど」

「あれば衣服以外に使えそうな物も持っていけるんですけどね……。取得出来ないなら諦めざるを得ないですよ」

 杉浦が絶賛欲しいスキルであるインベントリ系についての説明を聞いた妙子は半信半疑だ。そもそも視覚拡張の取得ですら曖昧なのだから存在するかも怪しいスキルの取得に懐疑的になるのも当然と言えば当然だろう。それでも杉浦は妙子に対しインベントリの有用性をアピールしまくった。

「じゃあ、今度は私が願ってみましょうか。大地君のイメージと本来のインベントリは別物だから取得できないのかもしれないわ。その点私は先行するイメージを持たないからあるがままのスキルが手に入るかもしれない」

 固定観念がこの世界のインベントリとズレている等想像もしなかった杉浦は妙子の話を聞いて目から鱗だった。なるほど。確かに自分の視覚拡張も駒原のテイマーも固定観念を抱かずに取得したものだ。試す価値はあると思い杉浦は妙子を見守る事にした。

 何よりあって困るスキルではないのだ。今日で別れるにしろ関係が続くにしろ有用なスキルを知り合いが確保してくれるのは嬉しく思う。


 直立不動ではあるが先ほどの杉浦同様に妙子は両手を握って祈る体勢に入って瞳を閉じる。

「あっ!取得出来たわ……」

 な ん だ っ て !?

 一瞬で取得しただとっ!?もしかして最初に取得するスキルって取得条件がめちゃくちゃ緩いのではないだろうか?そうなるとほとんどの人が無意識に何かしらのスキルを取得している可能性はある。


「ど、どんなスキルですか?」

「自在倉って名前のスキルみたい。こう、かな?」

 妙子は両手で何もない空間を両手で掴むとポテチの袋を開ける様に両手を離していくと空間に穴が開いた。入口は丸でも四角でもなく裂かれたような入口でそこまで広くは無い。つまり家電などは入れる事は出来そうに無かった。

「容量とかわかります?」

 三枝家の物資を入れても余裕があるのであればぜひ我らのキャンプ場に招待したい。しかし、入口が狭い事や自身のスキルにレベルの概念がある事から取得したばかりの容量は少ない可能性が非常に高かった。


「なんとなく感覚でわかるんだけど、今は余裕があるって感じ。たぶん詰めていけばこの感覚が苦しくなる……のかな?」

「なるほど。とりあえず俺の衣服入れさせてもらっても良いですか?三枝家に着いて必要な物資が入らない場合は出してもらって構わないので」

「いいわよ。適当に詰めて良いの?」

「あ、春用からお願いします」

 図々しい杉浦の春用指示に文句も言わずにせっせと自在倉に入れてくれる妙子。春用を入れきったところで再度質問をする。


「どうですか?」

「まだ入るわ。3分の1くらいは埋まった感じね」

「じゃあ次はこっちです」

「はいはい、夏用ね」

 続く夏用の衣服は薄着なのでそこまで嵩むことは無かったらしい。秋用はキャリーケースに詰めて冬用はひとまず瓦礫の中に隠して後日掘り起こす事にした。


「お妙さん。じゃあ三枝家に帰りましょうか」

「なんで大地君がその台詞を言うのよ。家はこっちだから付いて来て」

 杉浦の陽気な空気感に再会するまで抱いていた絶望感は妙子の中から綺麗に無くなっていた。妙な知識を持っていてこれからの事も相談が出来そうな頼り甲斐のある年下の男の子。少し小生意気な所もあるけれどこれからの生活に少しだけ光が差した様に妙子には思えたのだった。


 * * * * *

 Neme:三枝妙子 種族:人間 年齢:20歳 状態:健康


【スキル】

 ◆自在倉Lev.1 ……熟練度0/1000 SP:2

 ◇内包マスタリー≪袋口Lev.1/容量Lev.1/下級魔法袋作製≫

 * * * * *

読み終わり『続きが気になる』『面白かった』など思われましたらぜひ、

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よろしくお願いします。

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