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22話 期末試験で大逆転ミルフィちゃん【sideミルフィ】

 今は中間試験から一ヶ月と少し経過した所。もっと具体的にいうと期末テストの後。

 私は 《ダンジョン攻略専攻チーム》の新人のミルフィ・クリミア、今期末試験の張り出された結果を見ているところよ。

 ええ、結論から言いましょう、ジミーは天才的に勉強を教えるのが上手かった。


 ゆえに期末テストでの私の成績が、メチャクチャ成績が上がったのだっっ!!

 具体的にいうと一桁ではないが、上位だと言える成績、約300人中ジャスト50位である。

 ありがとう神様、ジミー様。これでもう先生に怒られる心配をしなくて済むわ……。

 え、前回の順位? んー、覚えてないかな、だから二度と聞かないで。


「で、ミルフィさんの成績はどうだったかな?」


 私が自分の成績に感動していたところ。遅れて登場して声を掛けてきたのは他でもない、私の成績を押し上げてくれた大恩人ジミーだった。


「ありがとうございます、ジミー大先生!! お陰で成績が凄く上がりましたー!!」

「そっかそっか、でもその大先生って呼び方は止めてくれる。気持ち悪いからさ」


 私が感謝の気持ちを目一杯込めたのに、気持ち悪いって言われた!?

 まぁ、嫌なら当然止めますけども……。


「本当にありがとうジミー!! 凄く助かったわ!!」

「どういたしまして、僕もちゃんと結果が出たようで嬉しいよ」


 そう言ってニコニコしているジミーの成績は、相変わらず学年三位だった。

 んーハイスペック、目立たない茶髪で眼鏡とこんなに地味めな外見なのに摩訶不思議。


 ……待って。

 テストなどの好成績、ハイスペック、他国からの留学生。その割に地味すぎる容姿、そしてその容姿に反して立ちすぎているキャラ、もとい性格。

 もしかして、コイツ隠し攻略キャラでは?


 その刹那、色々あって忘れかけていた乙女ゲームの設定諸々が、瞬間的に脳内へ溢れ出す。その結果。


 いや……でも、あのゲームを相当やり込んだ私の記憶の中にも、こんなキャラは居ないのよね。という結論に至ったのだった。

 だって隠しキャラで後から登場するのって、この国の王太子だったはずだし。彼って全然ジミーと性格も違うのよね。

 イールド王太子だったけ……彼はこんなに捻くれた面倒な男じゃなかった。むしろ素直で、人をからかうのではなく、からかわれる側の人間だ。プレイ時の会話選択肢にもそういうお遊び的な要素が多かったから間違いない。


 とはいえ、そもそも人の記憶っていい加減だし、一回死んだうえで引き継いでいるのだから、多少の欠落があったとしても不思議ではないわね。

 なんだったら細かな取りこぼしや、ゲーム本編に登場してない裏設定があって、私がそちらに足を突っ込んでる可能性もある。


 例えば私が今まで関係してきた、ゲームには登場しない謎の特別クラスや、個性的すぎるダンジョン攻略チームみたいな? なんか謎要素である可能性も十分残されているし……むむむっ。


 そんな感じで、私は色々考えつつジミーのことを見つめる。そしたら彼は私の順位などを確認しているみたいで、ちょうど掛けている眼鏡を指で少し位置を上げ直した。


 あ、そうやって色々と考えて見てみると、あの眼鏡なんてメチャクチャ怪しい気がしてきたわね。

 ほら、なんかそれ自体に立ちすぎる容姿を隠す機能があるとか、そういうの設定でよくあるじゃない?


 今とか少し横を向いてるから、ガバっと眼鏡を取れたりしないかな……こう、そーっと近付いて。そーっと……。


「ねぇ、これは何かな?」


 私が出しかけた手は、眼鏡なんかに届く前に見事に掴まれていた。

 いやいやいや、視界を外して動いていたのに反応速度と瞬発力がえぐいって!!


「あの、ちょっと眼鏡を取ってイタズラしちゃおっかなって……」

「へぇ?」


 うわ、笑顔が黒い。怒ってる、明らかに怒ってる。腹黒怖い。


「だ、だ、だってジミーってば一回も眼鏡を取ったところを見たことがないし、だから見てみたいなって思ってぇ」


 しどろもどろになりながら私は必死に言い訳をする。そんな私の思いが伝わったのか、ジミーはすっと私の手を離してくれた。


「……君がそんな風に僕に興味を持ってくれるなんて思わなかったな。イタズラはともかく、そこは嬉しいかも」


 ん、なんか知らないけど喜んでいる……?

 いや、ジミー自身に興味というか、ジミーの背負ってそうな裏設定にちょこっと興味があるんだけども……これは秘密だからなぁ。


「よし、それじゃあ学年末にあるパーティーまでに、僕をその気にさせたら眼鏡を取ってあげるよ」

「え」


 眼鏡を外すことに対して、よく分からない謎の条件が付いてきた!?


「その気って?」

「もちろん、僕が眼鏡を外してもいいかなっていう気持ちだよ」


 それって完全に本人の匙加減じゃん。嫌だから嫌って気分だけで言えるやつじゃん。


「どう、受ける?」


 んー、どうしよう、何もないのに眼鏡一つで、そこまでもったいぶることってあるかな。

 逆に本当に隠しキャラだとしたら、条件や絶妙な難易度設定といい、メチャクチャ納得できる気もするし……でも。


「アンタの眼鏡一つに、そこまで価値があると思えないんだけど?」


 そう、このジミーが隠しキャラだったとしても、ただそのまま話を受けるのは少しムカつく。だって私たちにはもう、私たちの関係性があるのだから。馬鹿正直になんて引き受けてやんないわ。


「そんな条件をつけるつもりなら、もっと価値のあるものくらい頂戴よ」


 それに眼鏡を外した時に、本当にそれだけで何もなかった場合はつまらないからね!!


「いいよ。それじゃあ、その時にはとっておきの景品もつけてあげようか」

「とっておきね……つまらないものだったら承知しないわよ?」

「もちろん、絶対に凄いものだ約束しよう」

「なら、仕方ないから乗ってあげる」

「やる気を出してくれて嬉しいよ」


 条件諸々も整い、ジミー自身もずいぶんと上機嫌だ。

 私も凄い景品を貰えるということで、俄然やる気が湧いてきた。


「ふふ、言っておくけど私って結構負けず嫌いだから、今から負けを覚悟しておくことね」

「僕もそうそう、勝たせる気はないよ」

「言ったわね、見てなさい!!」


 まぁ、とは言いつつ本当のところは、どちらでも構わないんだけどね。景品のことも隠しキャラの件もどちらも。

 前世ではずっと入院していて居なかったけど、こういうの友達って言うのかな?


 彼との今のこの関係性が、思った以上に悪くないと思えている自分がいて、色々と騒ぎつつも楽しく過ごせるのなら、それだけで十分すぎるほど幸せなのよね。


 きっと私が前世から欲しかった日常は、こういうものだったんだろうな。多少奇妙でズレてしまっているところもあるけど、それも含めて面白いし。


 だから本心ではジミーにも感謝しているのよ……でも絶対馬鹿にされるだろうし、ムカつくから口には出さないけれどね! ふんっ。


 ああ、先輩たちがいて、友達がいて、こんな楽しい毎日がずっと続いていけば嬉しいな。

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