優しい微笑み
クレアは一旦フィンセントと別れ、庭に来ていた。庭の噴水の水に手を付けた。そのまま、水を掬い上げクレアがそっと息を吹きかけると水はたちまち鳩の形になった。これがリーフたちの言っていたクレアの水で作る水鳩だ。水鳩は「チュンチュン」と鳴いていた。水鳩を噴水の縁に離しクレアもそこに腰を下ろした。アンソニーはクレアにペンとレターセットを渡した。クレアはそれを受け取りレターセットにペンを走らせる。
無事に着きました。コーラルシア帝王夫妻も心良く受け入れてくれました。
コーラルシアはかなり暑いです、これからフィンセント様とそのご友人のネロ様たちと海に行きます。
お土産の要望があれば教えてください。
クレア
手紙を書き終えると、ペンをアンソニーに渡す。クレアは便箋を半分に折り、封筒に入れて水鳩に咥えさせる。
「今日中にリーフ兄様に届けてね」
「チュン!」
水鳩は元気に鳴き、クレアの手の甲に乗る。水鳩をそっと撫でると、バタバタ羽を羽ばたかせて飛んでいった。水鳩を送り出し、海に行こうと振り返るとそこには驚いた表情をしたコーラルシア帝王がいた。
「グレイシア嬢、貴女の出身はエルセノアなのか?」
「、、、はい。生まれも育ちもエルセノアです」
コーラルシア帝王は驚きを隠せない状況だった。婚約者の事は言っていたが、出身地の事は知らなかったらしい。
「噂には聞いていた、これは国が厳重にするわけだ。護衛を貸そう、サーチェ」
コーラルシア帝王の後ろに控えていたピュアイエローの瞳に長いローズマダー色の髪を綺麗に束ねているサーチェという青年が出ていた。
「サーチェ・ヴァニーリュ。コーラルシアで最も強い騎士の息子だ。きっと守ってくれる。コーラルシアのことも聞けばいい」
「お気遣い、ありがとうございます」
コーラルシア帝王は優しく微笑みその場を後にした。
「はじめまして、グレイシア嬢。護衛を務めさせていただきますサーチェと申します」
サーチェは丁寧に挨拶をする。立ち振る舞いにクレアは騎士の息子というのは本当の事だと思った。
「グレイシア・サファイア、クレアでいいわよ。騎士同士仲良くしましょう。よろしくね」
クレアは騎士らしくサーチェに手を出す。
「はい、クレア様」
サーチェはクレアと握手を交わし、海に向かって歩き出した。城を抜けると、大きな街に出た。たくさんのお店や人で溢れかえっていた。人の波に飲まれながらも海にたどり着いた。
「うわ〜。綺麗」
クレアはあまりも綺麗で心の声が漏れる。
「海がお好きなのですね、クレア様は」
「お嬢様は水を操ります。水の性質を調べる時によく海に行きたいと言っていましたからね」
海に夢中だったクレアはサーチェとアンソニーのまるで子を見る親のような会話は耳に入って来なかった。




