15-3話 呟き
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携帯の契約を終えてから町の宿に泊まることにした4人はそれぞれの個室で一日の疲れを取っていた。
そんな中、文は自分の部屋のベッドに座り込んで今日買ってもらった携帯で先ほど話題に上がったフェイッターのアプリを起動しており、何やら画面を見つめている。
「こんな感じでいいのかな?」
『今日からフェイッターはじめました
よろしくおねがいします』
携帯の画面には呟きの文字を入力する 簡単な二行だけの文字。
とりあえず何か呟いてみようかと思っててきとーに書いてみたものの、何か違うような気がするなー……と文は思い悩んでいるみたい。
そのまま携帯の画面とにらめっこをしたまま呟きを投稿せずに『うーん……違うなぁ……』と実際に口で呟いているだけだった。
「うーん……なんか堅い気もするなぁ……どんな感じで呟いたらいいんだろう? 私、前の世界でもSNSはやっていなかったしなぁ……」
あまりSNS慣れしていない文にとってどのようなつぶやきをしたらいいのかよくわからずに、自分で書いた短い文字の並びをしばらくじーっと見つめるだけでなかなか呟きの投稿をしようとせずに時間だけが過ぎていく。
「あ! そうだ、みんなもフェイッターで呟いてるじゃん。投稿する前にみんなのを参考に見てみよーっと」
部屋で携帯を眺めながらぼーっとしていると、ふと『自分が呟きを投稿する前に他の3人の呟きを参考にしてみよう!』と考えが思いついた文。
自分の呟きの文を考えるより先に他の3人のものを見ることにしようと考え、まずは一番参考になりそうなクロエルの呟きを見てみることに。
フォローしているアカウントの呟きが流れてくるタイムラインへと移動してクロエルの呟きを探そうと思っていたが、探すまでもなくタイムラインの一番最初に彼の呟きが出てきた。
『今日はお昼にカフェでチョコケーキ頂いちゃった(≧∇≦*)
すごく可愛くておいしー(*´ч`*)
あ……でもこんな甘いもの食べちゃったらダイエットもしないとぉ(>_<)』
「うわっ……くーちゃんってネットだとこんな口調なんだ……すっごい顔文字使ってるなぁ」
普段よりキャピキャピしている彼の呟きにちょっと引き気味の反応。
しかし、そんな彼の呟きを見つつも『みんなこんな感じなのかな?』と少しフェイッターの呟きを学んだ気がした。
「あ、写真張ってる。どんな感じに撮っていたのかな?」
さっきのキャピキャピした文の下に写真が貼られていることに気づいた文は『そういえばカフェでくーちゃんが写真をパシャパシャ取っていたなー』と思い出すと同時に、どういった写真の撮り方をしているのか気になった。
そして今後フェイッターに投稿する際に参考になるかと思いクロエルの上げた写真を見ようと考え、昼食で食べたケーキの味を思い出しながら画像を読み込んでみることに。
だが……そこに貼ってあったのはケーキの写真ではなく自分自身の写真……つまりクロエルの自撮り写真(キメ顔)が貼ってあったのだ。
「馬鹿なの!? なんでケーキじゃなくて自分の写真あげてんの!? 呟きの内容と全く関係ないじゃん!」
ネットの中でもナルシストぶり全開なクロエルに対して文は部屋の中一人でツッコミ。
まさか一番ネット慣れしていそうな彼がまともな呟きをしていなかったことに文はいきなり疲弊してしまう。
しかし、そんな彼女が心落ち着かせる暇もなく携帯から『ピコン』と音が鳴って何かのメッセージが届いたと通知が届く。
通知の内容を見るとそれはフェイッターでシスティアからDMが届いたというものだった。
「シスからDM? なんだろう?」
ツイートとは別の機能で直接自分にメッセージを送ってくることに違和感を感じつつも文はシスティアのDMを開いてみる。
するとそこには初期アイコンの横に青い吹き出しに白色の文字でシスティアからのメッセージが書かれてあった。
『すみません、今お時間大丈夫ですか?
ちょっと手伝って欲しいことがあるのですが……』
「え……なんだろう……? というか同じ宿にいるんだから部屋に来ればいいのに……なんでフェイッター経由?」
それは何やら普通ではないようなメッセージに少しドキドキする文。
直接ではなく何故かSNS経由で来たことに何かあることから、『シスに何かよからぬことが起きたのでは?』と心配になり、とりあえず『どうしたの?』とだけメッセージを返信してみることに。
そしてメッセージを送信してから数十秒待っていると再び新たなメッセージが文の目に映った。
『近くのコンビニでAmezonカードを20000G分買ってきて欲しいのです。
買ったらカードの裏にあるNoを見せてください』
「乗っ取られてる! 今日買ってもらったばかりだよ? いくらなんでも早すぎない!?」
普段のシスティアと同じ敬語口調だったので気づかなかったが、明らかに中身がシスティアではなく、アカウントが乗っ取られていることが判明。
ネットの知識が全くないことは分かっていたが、貰ってまだ数時間しか経っていないのにこのザマ。
いったいどんなセキュリティ管理をしていたらこんなことになるのだろうか?
そんなシスティアのことがさっきとは別の意味で心配になっていると、部屋の扉がノックも無しでいきなりガチャリと開き、今度はシスティア本人がかなり焦った表情で文の元へやってきた。
「ふ、フミさん助けてください! ユウさんから頂いた携帯で動画を見ようとしたら『サイトに登録完了しました。会員費として10万G払ってください』っていきなり出てきて……! 私、お金なんて持っていませんのに……」
「なんの動画を見ようとしてんの……というか本人も騙されてるのかい!」
お昼頃にクロエルに『多少は疑う気持ちを持った方がいいよ』と言われたものの、やはり彼女はすぐ人を信じてしまう癖があるみたい。
アカウントの乗っ取りに続き架空請求も信じてしまう彼女のネットリテラシーが不安を感じる文であったが、とりあえず『お金払わないでも大丈夫だから』とだけ教えて部屋にお帰りしてもらうことに。
「はぁ……なんか部屋でフェイッターしてただけなのに疲れた……」
クロエルとシスティアの呟きやDMにツッコミを入れて声を張った文は疲労が溜まって宿のベッドに寝転がって楽な態勢を取る。
もうこのまま今日は寝ようかなー……と思った。
が、とあることを思い出してしまう文。
まだ1人……いや、一番めんどくさい人物の呟きがまだ残っていることを……
「あぁ……ユウちゃんの呟きみてなかったなぁ……でもこの流れならどうせユウちゃんもろくでもないこと呟いてるんだろうなぁ……」
そう、一番厄介なユウキの呟きをまだ見ていないのだ。
思い出したくなかったものの、思い出してしまったのならしょうがない、と文はタイムラインへと移動してユウキの呟きを探してみる。
適当にスワイプしているとユウキのアイコン(文とユウキのツーショット)が目に入り、彼女の呟きを見つけた文はそれを読んでみることにした。
『今日も可愛かった』
「ん? これだけ?」
たった7文字しかない呟きに文は頭に?マーク。
そもそも何がかわいいのかもわからなくて、何のことを指しているのか理解できなかった。
だが、文は気づいてしまった……その呟きがクロエルのものと同じで文字だけではなく画像が貼られてあることが……
何も考えないまま文はユウキがフェイッターにあげた画像を読み込んで何の画像か確認することに。
そしてその画像は……
「これ私の写真じゃない! 何勝手にネットにあげてるの!? というかこれ盗撮!!」
画像を開くとそこにはカフェで昼食を頬張る自分の姿が映った写真。
写真を撮る許可もネットに上げる許可も出した覚えがないのにユウキの勝手な行動に怒りを感じていた。
しかし、彼女がネットにあげた写真を見てとあることが気になり文はハッとした。
「ちょ……ちょっと待ってよ!? もしかして今日だけじゃなくて今までずっと盗撮されてフェイッターに投稿してる……?」
もし今日だけじゃなくて毎日のように盗撮されていたのでは……
そんな予感が頭によぎり、不安になっていく文。
そして文はユウキの過去のツイートを遡るためにユウキのタイムラインからユウキのアカウントのホーム画面へと移動し彼女の余罪を探すことに。
すると想像通りというか……数々の呟きに文に関する呟きや画像が大量に出てきた……
「うわぁ……ユウちゃんの今までの呟き見たら私のことしか呟いてないじゃん……ちょっと怖いんだけど……」
ユウキの今までの投稿を見てみるとここ最近は文に関することばかり呟いている。
いや、一部は明確に文の名前が使われているわけではないが、写真やら呟きの内容から文のことであるのが容易に想像できるような呟きばかり。
彼女のツイートを一部抜粋すると
『最近はバレずにふーちゃんの匂いをクンクンするのがマイブーム』
『うーん、ふーちゃんの笑顔見るだけで三回分のオカズになるわね! 食事的な意味でも性的な意味でも』
『あー……好き……犯したい……』
等がある。
様々なつぶやき……いや、気持ち悪い怪文書をネットに垂れ流す彼女にドン引きする気持ちと自分の貞操の危機を感じ、怒りの感情よりも恐怖の方が強くなり、先ほどまで怒りで熱くなった気持ちが背筋からサーッと冷めていく文。
だんだん怖くなってきた文は『今日は……いや、もう一生ユウちゃんのツイート見るのはやめよう……』とアプリを閉じようとした時、一つの呟きが目に入り、踏みとどまった。
「ん……? 何これ? 『家に帰る途中に女の子が魔物に襲われてたんだけど思いのほかエロくてガン見してた』……? これだけ動画だけれど……」
その目に入った呟きには先ほど見た画像とは違って、真ん中に▶マークがついており画像ではなく動画であったのだ。
過去のユウキの呟きを漁っていたが、今までに動画を添付しているものはなかったので不思議とその呟きが気になった文は、添付された動画の▶マークをタッチしてみることに。
すると……
『いひゃぁぁぁぁ! 嫌嫌嫌嫌ぁ!』
「はわっ! な、なにこの動画!?」
スピーカーからいきなり流れ出したのは女の子の嬌声、映し出された映像にはスライムに絡まれている小柄な女の子。
その過激な映像に顔を赤くして、動画を見ないように指で目を隠す。
『エッチな動画開いちゃった!』と焦った文は動画を止めようと画面に指を伸ばす。
しかし、動画を止める直前にあることに気が付いてしまった……
それは映っている女の子がこの世界に来た初日の自分であるということが。
『うわー、えっろ。
魔物に二重の意味でやられている女の子なんて初めて見た。
しかも、クソザコのスライムにやられてるっていうのもポイント高いわね。
今夜のオカズ決定かしら?』
しかも動画から聞こえてくる声は文だけのものではなかった。
そして自分の嬌声と混じって聞こえてきたのはユウキの声。
泣き叫んでいる文とは違って呑気な声だ。
「…………」
そのお気楽な声に怒りを感じた文は、声を荒げてツッコムどころか、無言で最後まで動画を眺めたまま。
動画が最後まで終わると、文はゆっくりとベッドから立ち上がり自分の部屋から出て行ってしまった。
そしてこの日の夜はユウキの部屋で怒声と悲鳴が鳴り響く長い夜となり、翌日にはフェイッターのユウキのアカウントがネットの海から削除されていたのは言うまでもないことであった。
15話終わりでーす
そろそろ魔物とか出してフミちゃんをヌルヌルさせたいところですけど16話も今回同様ゆるいおしゃべりの予定になっております。
あ、ちなみに魔族のお二人も登場させる予定です





