3-1話 ドMシスターのシスティア
元勇者の家から出発してしばらく経ち、文とユウキの二人は手始めに一番近くの町に向かうために森を歩いていた。
「ふーちゃん、私からあまり離れないでね、私のそばにいる限り守ってあげるから」
「う、うん」
「ここらへんは触手植物が生息しているから足元に気を付けてね」
「触手植物?」
「うねうねと動く植物なの、植物だけど意思を持って人を襲ったりもするから気を付けてね」
忠告通りユウキの後ろにピタリとつく。
その背中は大きく見え、セクハラさえしなければすごく頼もしくてカッコいいんだけどなぁ……とふと思う文であったが
「でも、触手で絡まれるふーちゃんも見てみたいわね……」
(カッコいいと思ったらすぐこれだ。
こういうところが本当に残念なんだよね……)
そう思いながら後ろでため息を吐いた。
「ん? あそこになんか触手が群がってるわね」
文はユウキの後ろから顔を出してユウキの指さす方向を見る。
そこにはうねうねしたミミズのようなものが何本も群がっていた。
どうやらあれが先ほど言っていた触手植物らしい。
そんな群がっている触手植物をよく見ると、人の足がちらりと見えた。
「うわああああああああ!! ちょっと! 人が食べられてる!!」
「あーほんとだ」
「ほんとだ……じゃないよ! 早く助けないと死んじゃう!!」
目の前のショッキングな光景を目にした文は触手に食べられている人の身を心配する。
しかし、そんな文と違ってユウキは呑気な表情を浮かべていた。
「まぁ安心してよ、この触手は人の身体の中にある魔力だけを吸い取るの、だから死ぬことはないよ」
「そ……そうなの?」
魔力というものが何なのかはわからないが、命に別状がないことがわかり文は胸を撫でおらす。
しかし、見た目の割には危険はないことを説明されたが、触手に絡まれている人は口も鼻も塞がれているためかすごく苦しそうに見えた。
「いや! 凄く苦しそうなんだけど! やっぱ助けてあげて!」
必死に助けを求めた文を見てユウキは『はいはーい』と言い剣を振って触手を切り裂く。
すると切り裂いた触手から一人の女性が出てきた。
「ぷはぁ! はぁ……はぁ……ごほごほっ……!」
触手から出てきた女性は不足していた酸素を取り入れていようとしたが触手の粘液が口に入っているのか呼吸しづらそうだった。
その恰好は文が居た元の世界でも見覚えがあるものである。
それは教会などにいるシスターのような恰好をしていた。
♢♢♢♢♢♢♢♢
「助けていただきありがとうございます。私はシスティアと申します。教会の仲間からはシスと呼ばれていました」
触手から出てきた女性は呼吸を整えて自己紹介。
身体や服は触手の粘液でぬるぬるになっているが彼女は不思議なことに平然としている。
「は、はじめまして文です」
「私はユウキ、勇者で今旅しているの」
粘液まみれでニコニコしている彼女に動揺しながらも二人は挨拶を返す。
「まぁ! 勇者様だったのですか! こんな場所で会えて感激です!」
するとシスティアと名乗る女性は目を光らせてユウキに詰め寄る。
そばにまで寄ったシスティアは目を輝かせユウキの手をギュッと握る。
「うわぁっ! ヌルっとしたぁ!」
先ほどまで触手に絡まれていたその手は触手の粘液にまみれており、ベトベトした粘液が手を伝った。
ユウキは彼女から掴まれた手を放し、粘液を払うために思いっきり手をぶんぶん振っている。
粘液を払っている間に文は一つ気になったことがあり尋ねてみた。
「シスのその服装って修道服? ってことはシスターさんなの?」
彼女は黒くゆったりした丈の長いローブを着ており、頭には黒いベールとその下から白いベールが覗いている。
見覚えのある恰好を見た文は彼女の素性について聞いてみた。
「えぇっと……元シスターというのが正しいですかね」
「……? それってどういうこと?」
「確かに私は少し前までシスターをやっていました。ですが教会から追い出されてしまいまして……」
「えぇ……何やらかしたの?」
普通に仕事をしていればクビなんてされることはない。
いや、普通でなくても相当の失態を犯さなければされることはないはずである。
よほどのことをやったのだろうなと文とユウキは察した。
そんな察した二人に対してシスティアはもじもじしながら『実は……』と追放された理由を打ち明けるた。
「教会にある女神様の像の前で……その……アレをしていたのですけど、それがバレてしまいまして……」
「アレ? アレってなに?」
「その……自慰行為です」
「………………は?」
「オ〇ニーです」
「いやわかってるから! わざわざ言い方変えなくていいから!!」
よほどのことをしていたのだろうな、と察していた文は多少の事では驚くつもりはなかったがあまりにも罰当たりなことをやっていた彼女の行為に思わず声を張り上げてしまった。
「とてもじゃないけど聖職者がやることじゃないわね……」
文に対してセクハラを働くユウキも彼女の発言には驚愕していた。
そしてそんな二人を気にせず彼女は気にせずに自分の話を続けた。
「一回なら見逃してもらったらしいのですけど何回もやってることがバレてしまいまして……それで神父様から追い出されてしまいました……」
どうやらこの元シスターは特殊な自慰法の常習犯のようだ。
あまりにも罰当たりな彼女の話を聞いた文は『またヤバイ奴と出会ってしまった』と思っていた。
その一方でシスティアは震えた声でこれからどうやって過ごしていこうかと嘆きを漏らす。
「あぁ……私はこれからどうしたらよいのでしょうか神様……」
「うん……まぁ……この人が悪いとはいえちょっと可哀想かも」
ドン引きしていた文であったが、彼女の心細い気持ちは理解できた。
ちょっと前まで知らない世界に迷い込んだ文も行く当てがなかった。
そして、そんな状況になった時にとても不安になることは知っている。
自分と少しだけ似た境遇の彼女に対して文は少し同情していた。
「それはそうと、追い出されたあの日の私を蔑むかの様な目をした神父様を思い出すと、今でも興奮してしまいますねぇ」
「前言撤回、あなた全く反省してないでしょ?」
いまだに興奮を覚えているシスティアに対して文は呆れ、にらみつけていた。
「いえ、私もイケナイ事と分かってはいたのですけど……あ、今のイケナイっていうのは絶頂できないっていう意味じゃなくてですね、むしろ絶好頂というか――」
「うるさい! シスターさんからそんな言葉聞きたくなかった!」
くだらないダジャレを言い全く反省していない様子のシスティアに文はガチギレ。
真面目に心配していた自分が馬鹿みたいになっている。
「大体何でそんな追い出されるかもしれないリスクを負ってまでそんなことしてたのよ?」
今度はユウキが『何故そんなことをしたのか』という質問をシスティアに投げかけた。
「うっ……気になるけど聞きたいような聞きたくないような……」
文もそのことについては少し気になっていた。
だが、聞く限りこのシスティアという女性は変態だ。
変態的な理由に決まっている。
そう思ってあえて聞いていなかったのであったが、ユウキが聞いてしまった。
「それは普段の自慰に飽きが来て新たな刺激を求めた結果、女神様の像の前で致すという自慰法を思いついたのです。女神様に自分の痴態を見せていると『あぁ……私、今神様の前で自慰している……!』とイケないことをしている罪悪感と誰かに見られてしまうのではないかという緊張感による興奮にハマってしまって抜け出せなくなってしまったのです」
自慰のやり方について堂々と語り出した彼女に2人は完全にドン引きしていた。
どうやら彼女は背徳感を味わうことでさらに快感を得ているらしい。
「いわゆるドMってやつだね」
「うわぁ……世の中にはとんでもない変態がいるんだなぁ……」
「ね? そう思うと私って変態でも何でもなくない?」
「それはそれ! これはこれ!」
どさくさに紛れて自分は正常と言うユウキを文は見逃さない。
ツッコミをいれた文が再びシスティアの方を目線を向けると彼女何故か地面に手をついて頭を下げていた。
「え? なにやってるの?」
「お二人にお願いがあるのです。聞いていだけないでしょうか」
システィアは地面に顔を向けたまま二人にお願いを言う。
「お願いします! あなた達の旅の仲間に入れてください! なんでもやりますから!」
「え……えぇ!? ど、どうして……?」
「私、行くところが無くて困っていまして……それに勇者様との旅なんてとても刺激的そうですし、旅の途中で色んな凶悪な魔物に会えると思うと……」
システィアは地面に手を着いたままポッと頬を赤くしてブルッと震えている。
どうやら旅の途中で様々な魔物に襲われる自分を妄想して興奮しているようだ。
「うーん、私はゆーちゃんに連れていってもらっている身だからゆーちゃんの判断にまかせるけど……」
「でしたらフミさんからもユウさんにお願いしていただけないでしょうか!? お願いします!」
システィアは立ち上がって今度は文の手を取り、ユウキに自分の同行を許してもらえるよう一緒にお願いしてもらえるよう言った。
「ぴゃぁ! ぬるぬるが気持ち悪いから離して!」
まだついていた触手の粘液がシスティアの手から自分の手に伝わってきた文はすっとんきょうな声をあげる。
その不快な感触を拭うように文はシスティアの手を払った。
すると次の瞬間、文とユウキは肝が冷えるような光景を目にした。
なんと手を払われたシスティアは木の幹に叩きつけられたのだ。
この現象に見覚えがある文とユウキはすぐに何が起きたのかを察する。
そう、再び文の謎の力が発揮したことに
「な……なんで……? ゆーちゃんのおじいさんの時は何事もなかったのに……」





