10.リナ・ドールマン、聖女について考える
10.リナ・ドールマン、聖女について考える
「これは禁書だ__持っていると一族すべてが処刑にされかねない」
お父様の言葉に私は目を見開く。
「近年では処刑された話は聞かないが__おそらく裏で手が回されて、消された者もいるはずだ。もう、残っていないと思っていた書物が・・・・・・まさか、ドールマン家にあるとは・・・・・・まさか、先祖に聖女研究を行っていた者がいたのか?」
私の存在を忘れたようにお父様がブツブツと呟き続ける。
「お、お父様」
「・・・・・・あぁ」
「つまり、私たちは処刑・・・・・・」
「いや、この本は存在しなかったことにして、私が処分する」
「存在しなかったことに・・・・・・」
「ディーンは内容について何か?」
「いいえ、まだ難しい文字は読めないし、これはかなり古い筆記体だったから無理よ。一文字も読み聞かせてない」
「そうか、お前もこの本については忘れろ。聖女は神殿の象徴、聖なる存在、ただそれだけを信じていればいい」
明朝、オーメンに叩き起こされて目をショボショボさせながらお父様の馬車を見送る羽目になった。
「何しに来たんだろ・・・・・・」
思わず、遠くに消える馬車に呟く。
「ふふ」
オーメンが小さく微笑んだ。
「オーメン?」
「実はですな・・・・・・」
オーメンがもったいぶって胸を張り、片目を瞑って私を見下ろす。
「何?」
「私が旦那様とダークお坊ちゃまに警告したのですよ!」
オーメンが満面の笑みを浮かべた。
「かわいいお嬢様がついに旦那様もダークお坊ちゃまも見放して、お誕生日に帰ってくると期待することもなくなってしまいましたよ、と!」
「・・・・・・」
いや、元凶あんたかい。
そうか、それで、お父様とお兄さまが続けて屋敷に帰宅したのか。
それにしても見放す、か。
私に見放されるくらい、あの二人は何ともないだろう。
「・・・・・・じゃあ、オーメンの説教が嫌で戻ってきたの、あの二人?」
「いえいえ、お嬢様に嫌われたくなくてですよ! まぁ、お嬢様を泣かせるようでしたら相手が誰であろうと、このオーメンが説教してさしあげますからね!」
「ははは」
私はもう半ば夢の世界に戻りかけているディーン・ドールマンを支えるように抱きしめた。
「姉ちゃん、一緒の馬車に乗っていきたい!」
「え、こっちに?」
「うん」
ディーン・ドールマンが私の馬車に乗り込んできた。
「じゃあ、向こうに荷物移そうか」
「あ、私がお持ちしますので!」
「お願いね、ニワ」
私の隣に座っていたニワが飛び上がるようにして、外に出た。
そして、遠慮なくディーン・ドールマンが私の隣に腰掛けてくる。
「姉ちゃん、帝都の学校ってどんなところなの?」
「大きいところだよ」
「うちの屋敷よりも?」
「あー、いい勝負かも」
「へー、じゃあミドルスクールの二倍くらいあるかも。兄さんが元生徒会長だったから、規範となれって比べられるかな・・・・・・」
「ふふ、お兄さまとお父様・・・・・・あと先生はいうだろうね」
「というか、兄さんや父さんだって、今日一緒に出れば良かったのに。折角家族で過ごす休暇だったのに先に行っちゃうんだもんな・・・・・・」
「まぁ、また次の休暇も一緒に過ごすんだから、いいじゃない」
「はー・・・・・・」
ついに、ディーン・ドールマンが帝都の学校に入学した。
つまり、もうそろそろゲームが始まるのかもしれないと私は思っている。
【聖女は今日もヤンデレたちに殺されそうなほどに愛されている】
始まるなら、始まれってかんじだ。
多分、ディーン・ドールマンともダーク・ドールマンとも結構良好な家族関係を築いているし、きっと大丈夫だ。
そう、多分。
ある程度の敵とか障害とかヤンデレには何とか・・・・・・大丈夫だよね?
【END?】
続くのであればここまでで幼少期編ですかね
とにかく一区切り
お付き合いありがとうございました!
今作も前作も読んでいただき、またブックマーク、反応やリアクション、そして、ポイントも全てありがとうございます!
とても、嬉しいです