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その夜、私は祐二君の呼び出しで久しぶりにドロシーズに足を運んだ。
シャッターが降りた店の前まで行くと、祐二君がダウンコート姿で寒そうに私のことを待っていてくれた。
「どうしたの、急に」
「いや。ちょっと一緒に見てもらいたくて」
そう言って彼は裏口に案内する。
鍵を開けて中に入ると、店舗奥の個室だった。いつもキャンドル教室を開いていた場所だ。見上げると出口の上の非常灯がひび割れていた。
「これなんですけど」
そのテーブルの上に乱暴に置かれた金庫が開いている。中には何も入っていない。
「どうしたの?」
「うん」
彼は返事だけして、店舗の方の明かりを点ける。特に店の方は何も変わっていないように、私には見えた。
「何?」
「泥棒じゃないと思うんですよ」
「え?」
それはお金が盗まれたと言いたいのだろうか。
「ここの合鍵持ってるのって、俺と、その……」
――金森烈。
その名前がすぐに浮かんだ。
「どういうこと?」
「分かりません。ただ、ここにはお金だけじゃなく、権利証とか保証書とか、そういう大事な書類も全部入ってたはずなんです。俺、金森さんが店を閉めてからも時々様子を見に来てて……けど、こんなこと今までなかった。ねえ、海月さん。俺、どうするべきですか?」
いつになく祐二君の顔に焦りが見えた。
けれど、
「どうしたらいいんだ……」
何度もそう呟く彼に掛ける言葉を、私は持ち合わせていなかった。




