17 オリヴィエの秘密?
(オリヴィエ嬢、可愛かったな)
顔を引き締めていないとにやけてしまいそうなヴィクトーと、普段通りのアルノーはオリヴィエを送り届けた後、王宮へすぐに戻ってきた。
皇太子執務室へと入っていく。
二人掛けのソファーにはヴィクトーがどかりと座り、一人掛けのソファーにアルノーが座る。
「さっき言っていた話ってなんだ?」
実は、アルノーの言う話がかなり気になっていたため、王宮へは急いで戻ってきたのだ。
ヴィクトーが早く話せとばかりに聞くと、アルノーは答えた。
「竜の番は基本相手が弱く、番の匂いは感じ取れないだろ? ただ、唯一、竜人族と対等に分かる種族がいるらしい」
「どの種族の獣人より強いと言われる竜人族と、対等な存在がいると?」
思いもかけないアルノーの報告。
冗談……にも思えない真剣な表情のアルノーを見て、どういうことかと頭の中はフル回転だ。
ヴィクトーは皇太子として、国史や自分たち竜人族のこと、帝国に住む人々のことは学んできた。
なのにそんな話は一度も聞いたことがなかったのだ。
「アルノーも俺と一緒に学んでいたけど、そんな話聞いたことあったか?」
自分の記憶を確認するようにアルノーに問う。
「いや、聞いたことはなかった。けど、ヴィクトーが番を見つけた、って言っていたあの頃から、竜と番に関する記述は少しずつ調べていたんだ。ヴィクトーの番に対する渇望は分かるし、番を見つけたなら、過去の王族の番はどうしていたのか、とかきちんと知っておいた方がいいと思ってね。で、調べていたら、歴史書1巻に、さらっと書いてあったんだ。
『始祖鳥の流れを汲む種族であれば、竜人族と対等に番の匂いを感じられる』と。また『力の程度も同等』だとも」
ヴィクトーの瞳はゆれつつも、強い視線をアルノーに向けた。
信じられない気持ちと、オリヴィエがそうであったら……という思いが交錯する。
「始祖鳥の流れを汲む? いつの話だ? っていうくらい昔の話だぞ? 今の時代にもそんな種族はいるのか?」
「今もいるのかははっきりとは分からない。けれど、始祖鳥、鳥なんだよ。だから最も可能性が高いのは、鳥獣人だと思う」
「イーサン君とオリヴィエ嬢は鳥の流れをくむ、とは言っていたけれど、自身にはその特徴もなく“人”だと言っていたぞ? あ、オリヴィエ嬢は足首がうろこ状の肌だとは言っていたが。しかしどう見ても、力の程度は同程度じゃないだろう……」
何を言っているんだ、とでも言いたそうな怪訝な目をするヴィクトー。
「そうだな。オリヴィエ嬢のあの細さで、ヴィクトーと同じ強力な力を持ち合わせているとは思えないな」
アルノーが持ってきた話は初めて聞くものだったが、それが人であるオリヴィエに関係するとは思えなかった。
ふわっと抱き上げられるほど、か弱い女の子。どう考えても同等の力を持つ者、ではなく守りたい、庇護欲をそそられる存在だ。
オリヴィエには自分と同等の力はなく、番と分かってもらえなくても、ヴィクトーの番はオリヴィエなのだ。
そしてそれは恋焦がれる唯一無二の存在。
ヴィクトーはとにかくオリヴィエに一刻も早く自分を好きになってもらい、共に生きていきたいのだ。
ヴィクトーは、この後オリヴィエに異変が起こるとは思っていなかった。
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