冒険2
門の外は深い深い森だった。
「ぎゃぁぁぁぁああああああ!!!!!」
巨体の猪から全力で逃げ回る少女ことルーリアと。
「スヴェリ!」
巨体の狼を抱き締める少女ことリサの対極の絵面は凄かった。
「リサ!リサ!リサ!この化け猪なに!?」
「私のペット」
「ペット!?ペット止めて!?食べられる!!」
「大丈夫大丈夫。スヴェリもバテーラも頭良いから私の友達を食べたりしないから」
「嘘でしょ!?現場見てよ!!食べられかけてる!!」
ボタボタと唾液を溢したら追いかけてくる巨体の猪ことバテーラを指差して懸命に主張する。
「それはじゃれてるだけ」
「じゃれてる!?これじゃれてるの!?嘘でしょ!?この勢いで飛びつかれたら骨折確実な上に圧迫死するよ!?」
ルーリアより縦にも横にもでかいバテーラを確認し、一度主張する。
「バテーラが本気出してたらもうすでに噛み砕かれてるよ」
にこやかに微笑みながらそう言ってのけたリサにルーリアは首を勢いよく横に振る。
「笑えない!笑えないよ!ってうぎゃぁぁぁあああああ、あ、あ、あ…?」
首を横に振りすぎてスピードダウンしたルーリアに飛びついたバテーラだったが、着地点はルーリアにギリギリ触れる程度で、自分よりも小さなルーリアを押し潰す事はなかった。
「ほらね」
「ほらね、じゃないよ!?めっちゃ怖かった、ってイタッ!イタイ!イタイって!リサ!リサ!ヘルプ!!」
少し誇らしげに胸を張るリサにツッコミを入れれば、ルーリアの隣に立ったバテーラにグイグイと脇腹を押される。
「撫でて欲しいって」
「これってそういう意味なの!?凶悪面なくせに意外と人懐っこい!!」
「ルーリアは私の香りがついてるから襲われるわけないよ」
「まって!逆についてなかったら?」
「…知りたい?」
含みをもたせて暗く微笑みながらそういう。
「うん!」
まさか、即肯定されるとは思っていなかったリサは口を積むんだ。
「どうかした?」
そんなリサに、コテンと首を傾げてルーリアは聞いた。
「…普通さ、含みをもたせて言えばさ、嫌な予感して聞くの止めない?」
「聞いちゃダメなの?」
「いや、全く問題ない」
「なら、気になるじゃん!」
「知らぬが仏って知らない?」
「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥って言うじゃん!」
「なんか違う気がする」
そんな会話をポンポンとしながらリサはスヴェリを、ルーリアはバテーラを撫で回している。
「まぁ、ただ食い殺されるだけだよ」
「マジでか!?さっきから全然笑えないこと笑顔で言うよね!!超こわい!」
そう言いながらルーリアのバテーラを撫でる手は休まるどころか、うりゃうりゃといわんばかりに強くなる。
「さて、撫でたし、行こうか」
「だね!てか、本当にルデ草ってそこら辺に生えてるね!」
一面に生えるルデ草の草原を見渡しながらルーリアがそう言えば、リサも頷く。
「とりあえず、散歩がてらライトダケを探して、ルデ草は帰りに採取しようか。荷物になるし」
「分かった!」
「ライトダケってどこにあるんだっけ?」
「洞窟に生えてるよ!」
「洞窟かぁ」
「洞窟ってどこにあるんだろうね?」
「ガゥ」
頭を傾げる二人にスヴェリが注目を集めるように鳴く。
「スヴェリ。知ってるの?」
「ガウガウ」
「スヴェリが知ってるって」
「ホント!よーし、案内よろしくね!スヴェリくん!」
「ブヒィ」
「おお?バテーラくんよ、どうかしたのかね?」
グイグイと服を引っ張るバテーラに首をかしげるルーリア。
「ちょっと遠いから乗っけてくれるって」
「えっ!?乗るための道具は!?」
「乗るための道具??
ああ、馬につけられてたやつ。
ないよ。首に捕まって乗るの」
「嘘!?乗れるのそれ!?」
「大丈夫、大丈夫。打ち所悪かったら死ぬだけだから」
「ねぇ、さっきからホントに全然笑えないよ!?」
にこやかにそう言ったリサにツッコミ入れるルーリアだがすぐに乗るように急かされる。
「いいから、いいから、早くのって!」
「ええい!ままよ!女は度胸!」
「そんな怯えなくても」
やけくそのルーリアをリサはケラケラと笑う。