魔王軍からのヘッドハンティング!?地獄のホワイト企業
新居の玄関先にて
新居のチャイムが上品に鳴った。ドアを開けると、そこには黒いスーツをビシッと着こなし、名刺を差し出す魔族の男が立っていた。
魔族:失礼します。私、魔王軍人事部・部長のザギと申します。……カイト様、お噂はかねがね。
カイト:えっ、魔王軍!? 襲撃か!? アイリス、剣を――!
ザギ:いえいえ、本日は「スカウト」に参りました。カイト様……貴方の労働環境、客観的に見て「真っ黒」を超えて「死後」ですよ。
ザギ:我が軍なら、週休二日制、有給休暇100%、そして何より……「一度死んだらその日は業務終了」という特別ルールを設けております。
カイト:えっ、死んだら終わり!? そんな天国みたいな話……。
ノアール:ちょっと!! うちの盾(在庫)を勝手に引き抜こうとしないでもちょうだい!! このバカは、24時間365日、死んでても働くのが仕様なのよ!!
ノアールが怒りのあまり振り回した杖が、カイトの喉仏をクリティカルヒット。
カイト:……あ、条件交渉中に……物理的にクビが……
三途の川(出張所)
カロン:はい、ピッ! 92回目。死因、不当な解雇(物理)。……あ、カイト様。窓の外でザギ様が「あわわ、目の前で社員候補が壊された!」って履歴書をバラ撒いてますよ。
カイト:カロンさん……。魔王軍の方が、ノアールよりよっぽど人間らしいよ……。
カロン:はい、ピッ! 3枚目カード2個目。……おっと、ノアール様が今、『有給なんて三途の川で取ってきなさい!』って言いながら、受話器を握りしめてます。
ノアール:――転職活動してる暇があったら、溜まってる洗濯物を回しなさい!! 魔王軍なんて、福利厚生に「魂の捧げ物」があるに決まってるわ!! ……いい加減にしろよこの就職難バカイトォォォ・終身雇用・レザレクション!!!
ドゴォォォォン!!!
蘇生の爆風が、玄関にいたザギを王都の果てまで吹き飛ばした。同時にカイトは、前回の特典「幽体操作」が勝手に発動し、死体のまま洗濯機の中へダイブした。
カイト:ガバッ! ただいま! ……って、俺、洗濯機の中で回ってるんだけど!?
ルナ:……カイト様。……洗剤は、レモン系の香りが……お似合いです。
アイリス:はっはっは! カイト殿、君は魔王軍すら欲しがる「逸材」なのだな! よし、私も負けじと、君をさらに鍛えて「王宮直属」の盾にしてやろう!!
カイト:……結局、どっちに転んでも休みはないのかよ。
カロン(小窓から):はい、ピッ! 93回目。……今のは、洗濯機の脱水中に目が回って嘔吐死ですね。
ノアール:――洗濯機を汚すんじゃないわよ!! 自分で自分を洗い流しなさい!!
カイト:いい加減にしろよぉぉぉ!!(脱水されながら)




