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初任務の完了

10時間の休息が明け、4人が操縦室に揃った。


「改めて、お疲れさま。今回の判断が正しかったか未だ納得が言ってはいないけれど、みんなには余計な苦労を強いてしまって申し訳なかったと思っている。苦情は全て受け付けるので、なんでも言って欲しい」

「えっと。宇宙服の補充は受けられますか?予備を使ってしまっているので……」

「それは全員分申請しておくので大丈夫だと思う。在庫があれば直ぐにでも補給を受けられるだろうし、ハードスーツも積んであるから問題ないだろう」

「後続はまだ来ていないようですけど、連絡は?」

「ステーションの管制に問い合わせたけど、入港予定は無かった。東17回廊の管制局にも問い合わせたが、こちらは回答できないとの事だった」

「勝己さんもお疲れ様でした。一番大変なポジションで、できうる最善の行動がとれたと思っています。良い経験にもなりましたし、自信も付きました。だから、気にしなくていいんですよ?」

「そうは言っても、辛い思いをさせてしまったから。一歩間違えれば全員の命が無かったかもしれないのだし」

「それでもです。『この人になら全てを任せても良い』と改めて思えました。この先もずっと、貴方の傍で支えたいと思っています」

「私も勝巳さんになら、全てを任せられます。だから、この先も私たちに支えさせてください」

「私も、です。至らない私ですが、捨てないでください」

「いや、捨てるとかないから。えっと、今後もよろしくお願いします?」


こっちが愛想尽かされたと思っていたのだけれど、どうやらこの先も付き合ってくれるようで安心した。慕ってもらえている事が、殊の外嬉しかった。


休養も取れ十分に取れ、艦の補充も完了している。後続の僚艦は影も形も見えないが、指示の変更が来ていない以上は先に進むしかない。


「では2時間後に発進することとする。美咲は管制局へ連絡を入れてくれ。その後で月面基地にも同様の連絡をしておいて欲しい」

「了解です」

「システム再チェックに入ります。航行・動力・火器管制・生命維持全て問題無し」

「残量は、エネルギー100%。酸素48%。水63%。食料71%。全て基準値以上です」

「ジャンプポイントの確認は?」

「問題ありません。ルート出します」


2時間後にステーションを出て順調に加速すると、原速航行3時間でジャンプポイントに着ける。そこから長めのショートジャンプを行って、誤差が許容範囲内であれば最長でも7日あればスチプール基地へ辿り着ける計算だ。


出航からジャンプアウトまでは戦闘配備として、全員が操縦室で各々の席に着いて仕事をした。その後はサポートロボを交えてシフト制に移行し順調に6日半でスチプール基地をレーダーで捉えられる位置まで来る事ができた。


「ゴールが見えてきましたね」

「だな。では、基地への入港許可を取ってくれ」

「了解。こちら帝国軍辺境73区所属の軽巡航艦、LC23001【夕張】。スチプール基地応答願います」

「こちらスチプール基地管制局。LC23001へ、所属及び事前の入港申請を確認しました。初航行お疲れ様でした」

「LC23001よりスチプール基地管制局へ。ありがとうございます。乗員、船体共に異常ありません。10時間ほどで到着の予定ですので、接岸場所の指示を願います」

「スチプール基地管制局よりLC23001へ。重整備を要しますので、20番ドックへ入ってください。乗員は健康診断がありますので、システムをアイドル状態にした後、手荷物をすべて持って下船してください」

「LC23001よりスチプール基地管制局へ。了解しました。通信終わります」


『健康診断か。念入りにやってもらうべきなのだろうな。艦は……、回廊が進めるようにシステムは全面的にデバックしてもらうとして、艦首の回転衝角と副砲のレンズは要チェックだろう。後は……』


「勝巳さん! そろそろ減速ポイントですよ。集中して!」

「すまない、真琴。3、2、1、減速開始」

「浮きドックの信号捉えました。進路の微調整を」

「了解。進路、俯角2度、取舵3度へ」

「進路良し」


軍艦のドック入りは後退進入だと、何かの本で読んだことがあった。


「後ろ向きに入れた方が良いのかな?」

「浮きドックは中央にさえ入れば良いみたいですから、頭からで大丈夫じゃないでしょうか?」

「なら、横着させてもらおう」


進路をそのままに、指定された20番のドックへと最微速まで減速して接近していき、中央付近で逆噴射を掛けて相対速度を0にする。


「少し行き過ぎたかな?」

「はみ出していないから大丈夫でしょう」


各自でシステムを完全にシャットダウンしていく。この後、大掛かりなメンテナンスが入るので、主機関さえも火を落としておく必要があった。荷造りは既に終わっているので、後は基地の者に任せてしまって良いだろう。予備電源時の補助灯が点く中をハッチに向かう。

ハッチから艦の外に出ると、既に数か所で艦の固定が完了していた。空気は充填されているが、重力は無いので指揮所の扉へと漂っていく。


流石に建物内は軽めの重力があって歩くのに支障がない。タブレットに送られてきていた館内図を見つつ、検査室へと纏まって移動する。

検査室には検査機器(タンクベッドと言う筒)が10台あって、明らかに異星人な風貌の看護師(?)が数名タブレット片手に作業していた。


「地球から来た方々ですね」

「そうです」

「では、着ている物を全て脱いでタンクベッドに入ってください」

「仕切りとかは?」

「? 無いですが、なにか?」


異星人は裸になる事に抵抗が無いのか? 彼らも服を着ているのに? それとも僕らはモルモットか何かだとの認識があって、その辺の配慮に欠けているのだろう。

文句を言っても聞き入れてはもらえなさそうなので、女性陣に背を向けて裸になってタンクベッドに入り目を瞑った。


検査は無水シャワーで始まり、血液を採取された後はセンサーでのチェックがあり、けっこうな時間がかかった。検査終了の音声に合わせて蓋が開いたので起き上がると、ニヤニヤした亜紀良と目が合った。亜紀良だけではない、真琴も美咲も既に服を着てこちらを見ている。

咄嗟に股間を隠そうとも思ったが、既に見られているのだからとそのまま立ち上がって、ベッド脇に用意されていた服を着る。

用意されていたのは宇宙服ではなく軍服のようだった。多少デザインは違うが、真琴たちも同じような服を着ている事から間違いないだろう。


「この後は基地司令と会っていただきます。着いて来てください」

「了解。みんな、行くぞ」

「はい」「はーい」「うふふ」


裸を見られていた事にはあえて触れないようにした。次に同じような事があったら堂々と見てやろうと決めて。


案内された部屋には禿頭の灰色の肌をした大柄な男性と、銀髪に水色の肌をした女性が居た。二人ともに僕らと同じデザインの服を着ている。


「ゴトウ・カツミ艦長とLC23001のクルーだね。私は当基地の司令をしているハミュリュェィド・ダッド・ミュレッジーノだ。先ずは掛けたまえ」

「「「「失礼します」」」」

「先に辞令を言い渡そう。ゴトウ艦長、君を帝国軍の中尉に任命する。これに伴い、君には帝国民としての市民権が与えられる。次にクルーの3名に対しては帝国軍の兵長に任命する。残念だが、君らには市民権はまだ与えられない。准尉以上に昇進できれば得られるので、君たちの今後の活躍に期待している」

「「「「拝命します」」」」

「さて、ゴトウ艦長。君には選択肢が複数ある。ひとつは我々が使っているコルベットの艦長として艦を移ること。ひとつは君らの船をこの基地でカスタマイズして、その艦の艦長を続けることだ」

「カスタマイズとは?」

「文字通りだよ。火力や推力の強化でも良いし、居住区の充実でも良い。増員や入替えが必要ならば、基地内で募集を掛けさせてもらおう。それだけ君には期待しているのだよ、我々は」


地球は彼らの実験フラスコのような物で、僕らの人類が3世代目なのだと言う。前回は3500年前にリセットしているが、その世代も適合者の割合が地域によって偏りがあったそうだ。そして適合者の少ない地域からだけ、突出した能力を有する者が現れたのだと言う。彼らは、僕もその突出した能力保持者だと認識しており、他よりも待遇面で考慮されるそうだ。


「ゆっくり考える時間を上げよう。なにしろ、君らの僚艦は未だ回廊にも入っていないのだから。詳細は技術士官である彼女として欲しい」

「技術士官のアーミュポエ・レズボ・メシャヴァイ大尉です。カスタマイズを希望なさるのであれば、艦の不満点や要望を送ってください。こちらから改修の提案をさせていただきます。基本的には当基地に在るパーツを使ってのユニット交換ですので、暫定となる場合も有りますが」

「分かりました。先ずは皆と話し合って提案させていただきますので、よろしくお願いします」


司令官の部屋を出ると、滞在する部屋の案内が各自のタブレットに届いた。僕は士官用の個室が与えられ、彼女たちは4人用の合部屋だそうだ。フロアも違うので、行き来がし難い。食堂か会議室を借りるかするべきだろう。


「勝巳さん。相談が有るのですが、勝巳さんの部屋に行っても良いですか」

「あぁ、構わないよ。君らの要望や希望も聞きたいし」


僕の部屋の方が遠いのだが、なぜか荷物を持ったまま4人で移動する。

与えられた部屋は僕が日本で借りていた部屋の3倍以上の広さがあった。そこに小部屋が1部屋付いていた。従者用の部屋だろうか。


「広いですねぇ。見てください。みんなで寝られるくらいのベッドですよ」

「流石に4人は無理だろう」

「詰めれば何とか」

「なら、3人で使えばいいよ。僕はこっちの部屋で寝る」

「真面目な話をしましょう」


美咲の冗談に付き合っていたら、真琴に睨まれてしまった。


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