後半戦
4月から畑違いの部署へ急な移動となったことで、投稿の間隔が空いてしまいました。
この先も投稿間隔が開くと思いますが、ご了承ください。
【雪風】に最短距離で接近した後は速度を合わせ、後半戦に向けて方針を定める。
「無人プローブからの画像解析結果、新手は軽巡航艦と駆逐艦の構成だと断定されました。カタログ照会から、三世代前のポータセンチャー共和国正規軍で使われていたモデルと一致」
「火器類は現行世代までアップグレードできているだろうか?」
「海賊船ですからねぇ、大きくは弄ってはいないと思いますが。カタログスペックでも、この艦の主砲同等が12門です。変換炉の交換なしだと連射は出来ないですが、それでもコチラよりも格上の戦闘艦が2隻。お供の駆逐艦はミサイル発射管が6門とレーザー砲塔付きで4隻も居ます。どうしますか?」
三世代前、250年くらいは前の設計らしい軽巡と駆逐艦は、宇宙の一般的な艦艇のサイズである。技術的にも劣る部分はあるだろうが、火器やコンピュータはアップデートできる部分も有るので判断のしようが無い。
「質量は向こうの方がデカい。艦種で比較しても向こうの軽巡は【夕張】の6倍、駆逐艦は【雪風】の5倍。速度は【雪風】よりも遅いだろう。逃げようと思えば逃げられるのだが、炙り出しておいて尻尾を撒いて逃げると言うのも格好悪いと思うが……」
「一当てくらいは実績を作っておくのも有りですよね」
「電子戦がどこまで通じるかだが……。よし、電子戦用意。とりあえずパターンA」
「「パターンAで電子戦開始します」」
宇宙での戦闘は目視での照準では間に合わない速度と距離で行われる。
レーダーやソナー等の目や耳の良し悪しが勝敗を分け、それ以上に相手の船を如何に早く乗っ取れるかが重要らしい。何故なら、すべての宇宙船は情報ネットワークに接続していて、外部の入力を受け付ける様にできているからだ。
例えば軍艦であったとしても、回廊に入るには火器と航法のシステム入力を管制局に明け渡す必要がある。
例外は僕らの船なのだ。
誰の意思決定だか知らないが、火器管制と航行のシステムはスタンドアローンでネットワークから切り離されている。ネットワークやレーダー等で収集した情報をモニターに表示し、ソレを独立したシステム側のカメラが読み取って状況判断とアシストを行い、乗員が操作することで運用が成立している。
例外は電子戦用のシステムだ。コチラはネットワークに接続していて常に情報収集と外からの接続を監視し遮断している。無駄な拘りで、OSから全て日本語の漢字カナ混じり文字で書かれていて、一部には多種多様な方言も用いられているのだ。帝国軍のハッキングシステムでさえ、1ヶ月かけても乗っ取れなかったという秀逸さだ。
それもあって、艦内各所の明治に使用されている文字は漢字が多い。一昔前のアニメ、『トッ○をねらえ!』や『不思議の○のナディア』の様だ。
この仕様、難点は入力も日本語で行う必要があり、文化も言語も違う帝国人にはその習得は難しいと匙を投げられたと聞かされているが、表示に関しては一部のオタクが用いているらしい。
【夕張】【雪風】共に帝国の最新鋭な戦術AIをベースにした電子戦装備の他、使われなくなった装備も積んでいる。それに通信はランダムに周波数を変えているし日本語で話もしているので、海賊にはこちらの糸も戦術も漏れることはないだろう。
パターンAはデコイを用いる。
デコイとは本館と同じ識別信号を発する中型プローブで、相手には分身した様に見える。すでに廃れた物だが、それはネットワークを介してアタックされれば即バレてしまうからだ。しかしコチラは、ネットワークには一部のシステムしか接続しておらず、プローブも同等のアクセスを維持している。インターネットでIPアドレスが重複している様な物だが、一方的な情報発信だけなら混線してもコチラへの影響は少ない。
両艦主砲の拡散砲撃と合わせて、【雪風】からは純粋水爆弾がレールガンで射出された。原理は難しくて理解できていないが、破裂した弾丸からは中性子線等が放出荒れることでレーダーの目眩しになるのだという。
レーダーがホワイトアウトしたタイミングで両艦共に加速を開始する。盲撃ちされたとしても、既に海賊が把握している場所から高速で離れていく事で回避を行うためだ。
「敵の発砲を確認。当方への着弾確率はゼロです」
「420秒後に主砲の射程圏です」
「各員、射程圏内に入り次第砲撃を開始」
「想定では後34秒ほどでレーダーが回復します」
「回避パターンはランダムδ。進路を敵後方を横切る様に再設定。機動力を削げ」
主機のダメージが50%を切ればジャンプに必要な加速を得ることが難しくなる。まずは逃がさないことに注力し、その後は時間を稼ぎながらダメージを与えていく作戦を選択した。




