最終話 帰還、そして伝えたい事
城から離れる前私たちは、タイタンの遺体を城の前に埋めた。
流石に……敵とはいえ、遺体をそのままにするのはどうかと思ったし……。
私は熊に変身して、土を掘った後、その中にタイタンを埋めた。
……できることなら、生まれ変わってほしくないけど。
遺体を埋めた後、私は馬に変身し、ロープを乗せて、下山した。
辺りは真っ暗……城から灯り「借りて」、私たちは降りて行った。
途中でムーンさんの教会に寄ろうと思ったが……どういうわけか、教会が見当たらなかった。
仕方がないので、そのまま下山したけど……道を間違えたのかな? 今度改めて向かおう。
休憩を挟みつつ、私たちは少しずつ少しずつ、ふもとへと向かっていた。
……そして。
「アニマさん! 見えてきましたよ!」
「だね!」
私たちの目の前に、街並みが見えてきた。
遠くから見ても、工事用の足場が様々な建物に付いているのが分かった。
どうやら、街は復旧に向けて舵を切ったようだ。
「さ、早く行こう! しっかり掴まってね!」
「はい!」
私はスピードを上げ、ふもとへと全力疾走した。
◇
「ようやっと……着いたね」
「……はい」
気が付けばあっという間だった。
既に太陽が、私たちを迎えるように上っていた。
街の検問を通ると……衛兵が驚愕の表情を浮かべていた。
「おお! あなた方は勇者様!」
「……え?」
勇者様……あなた方?
「よくぞご無事で、さぁ、どうぞ行ってください」
「……?」
まさかの顔パス……私とロープは顔を合わせ、お互いの困惑の表情を浮かべた。
……街の中に入ると、人々は復旧作業を進めていた。
やはりみんな、困ったときはお互い様、助け合いながら作業を行っている。
……タイタンが言っていたような、欲望だけで動く人たちだけじゃない。
そんなことを考えていると、街中の人々が私たちを見るや否や、サイほどの衛兵のような表情を浮かべた。
……え? なになに!?
「うおおおおおおおお!! 勇者様だ!!」
「喋るモンスターを倒した我らが英雄!」
「みんなで胴上げだ!!」
……まずい。
「ロープ! 行こう!」
「はい!」
私は咄嗟に馬に変身し、ロープを乗せて走り去った。
「はぁ……はぁ……まさか街に戻った途端総出で英雄扱いとはね……」
「でも……嫌な気分ではないですね」
「……だね」
私たちは路地裏に入り……2人きりになった。
2人きり……そういえば。
「ねぇロープ」
「……はい」
「そういえば……何か伝えたい事があるんじゃなかった?」
「……そういえばそうでしたね」
ロープは笑顔を私に向け……同時に、私の手を掴んだ。
「驚かないでくださいね……結構刺激が強いかもしれません」
「……私はなにも驚かないよ、だって……勇者様だよ?」
「……でしたね」
ロープの伝えたい事……なんとなくわかった気がしたけど、彼女の口から言わせよう。
私も答えは決まっている……正直、伝えるのはちょっと怖いけど。
でもきっと大丈夫だ、私は……いや、私たちは勇者様だから。
ここまで読んでいただいた皆様、本当にありがとうございました。
「この小説読んで良かった」と少しでも思っていただけたら幸いでございます。
活動報告にこの作品を書いた自己評価も載せましたので是非ご覧ください。
それでは、またどこかで。