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抗争学園  作者: 三太華雄
一章
32/40

鉄砲玉

学校の門が開く午前六時、藤澤はB組のトイレの一室に篭っていた。

右手にはリボルバー式の拳銃が一つ、威力は決して高くはないが、ゼロ距離で撃てば容易く骨折させる程の力はある。


昨日藤澤が沖原に半ば強制的に下された命令、それはどんな手段を使ってでも四辻誠の首を取ること。

そのために藤澤は四辻が油断し、なおかつ一人でいる可能性の高い縄張り内のトイレで仕掛けることにした。

 もちろん縄張りの中での奇襲など許されることではない、校則には書かれていないのはの書かなくても分かるほど最悪な行為であるからだ。これは、裏切り以上のタブーであり、すれば確実に全クラスから的にされるだろう。


しかし、藤澤にそんな事は関係がなかった、藤澤は自分の役割を自覚しているからだ。

ヤクザの世界で言われる『鉄砲玉』それこそが藤沢の今回与えられた役目である。


鉄砲玉は命を落とす前提で標的を殺害する役目で、たとえ生きて帰ってきたところで元いた場所にも戻る事もできない、文字通り銃弾の玉である。


藤澤は別に脅しに屈して引き受けた訳ではない、少し気が弱いところがあるが藤沢も極道の子供として育てられてきた、例え圧力をかけられようが断ることもできただろう……しかしそれでもやる事に踏み切ったのは藤澤に流れる血によるものだった。


藤澤隆平……旧姓九鬼隆平はかつて藤澤の鬼と呼ばれ今の藤澤の様に鉄砲玉にされてから幹部組織の組長にまで上り詰めた有名な極道だ。


 しかし藤澤はそんな父をよく思っていなかった。例え鉄砲玉でも元いた組から別の組みに寝返った事に軽蔑の念を抱いていた。

 そして今父親と同じ状況に置かれた今、自分は父とは違うことを証明するためにも藤澤は組の鉄砲玉として切り捨てられることを受け入れていた。

例えどんなに愚かな組で、酷い扱いを受けようがそれが自分の組なら絶対的忠義を貫く、自分は自分の極道を貫く。その思いを胸にジッと個室の中息を潜めていた。


――どれくらいが立っただろう。


時計を見るとちょうど朝の登校の時刻になり始める、そして少しずつ周りから声が聞こえ始めると、藤澤は銃の引き金に手をかけ準備する。


――狙うは四辻の首


 それだけを考えひたすら好機を伺う。

 そしてそこから更に時間が経つと、一人男子がトイレへと入ってくる。

 藤澤はドアの僅かな隙間から相手を観察する。


 討てるチャンスは一度きり、相手は四辻か?周りに仲間はいないか、じっくり様子を見て確実に仕留める。

そして見える隙間からは小柄な男子の後ろ姿が見える。


――あれは間違いなく四辻だ、他に人はいないか?


 僅かな視界、そして周囲の音から一人だと判断すると藤澤は一度深呼吸をした後、勢いよく扉をあけて飛び出した。


「四辻誠!覚悟ぉ!」

「え⁉︎」


 四辻が振り向くと同時に藤澤は状況を見る間もなく銃を胸元に突きつける。


――胸じゃダメだ、狙うなら足を……


 そう思い、銃口を下に向ける

 そしてそれと同じように目線も下に落とすと、ある部分が藤澤の視界に入った。


――……


 そこには用を足す前に邪魔された事によりチャックからはみ出た、藤澤が初めて見る男(・・・・・)のイチモツがはみ出ていた。


「きゃああああああああ!]


――


 男子トイレから放たれた黄色い悲鳴は教室の中まで聞こえ、その声を聞いたトイレに男子が総動員で駆けつける。


「なんだ‼︎どうした⁉︎」

「奇襲か⁉︎」


 クラスの男子が警戒しながら僕の周りへ集まってくる。


「いや、その……奇襲だとは思うんだけど……今のは僕の悲鳴じゃなくて……」


 僕がそっとトイレの床の方に指を指す。全員がそこに目を向けると、そこにはパニックになり足を滑らせた藤澤渚が、床に頭を打ち目を回して気絶していた。

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